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55danyl
第404話 僕を見つめて、手を握り…、「わたしを見て…」と、ゆかりちゃんが言った(書き直し集-その6)
その日、僕は、朝から麻雀だった。
1日中、麻雀を楽しんで、帰宅したのは19時頃だ。
「ただいま~」と、声をかけてリビングに入ると、ゆかりちゃんが、
ダッ!
と、僕に近づいて、僕の瞳を見つめて言った。
「わたしを見て…」
と。
な、なんだ? 脱ぐのか?
ゆかりちゃんは、僕の正面に回った。
正対し、僕の手をとって、また僕の瞳を見て、
「わたしを見て!」
と言った。
・・・この流れは? ・・・目を、閉じるのかな?
・・・。
一瞬、間があって、ゆかりちゃんは、
「今日は、スッピンなの!」
「エステに行ったら、す、凄いの!!」
「今日は、ものすごくお顔がキレイなの!!」
「肌がキレイになったの!!」
と、一気にまくし立てた。
僕は、「お、おお!」と言った。
勢いに気圧されてだ。
この圧に、否定の言葉なんて、たとえラオウでも出せやしない。
僕はもう一度、「お、お~!」と、言った。
今度はちゃんと、肯定の意味を込めた。
というのは、ゆかりちゃんは、普段から肌がきれいなのだ。
肌は、いつもツルッツルでスベスベだ。
今日が特別キレイかというと、実は、僕には違いがわからない。
いつも、キレイなのだから。
でも、「わからない」とか、「変わらないよ」とか、
そんなことは言わない。
そんなヤボは、言っちゃいけない。
すごく満足気な、ゆかりちゃんは、何度も何度も鏡を見ている。
そして今度は、独り言をはじめた。
「このきれいな顔…、写真に撮っとこぉ~」
そして、スマホで自撮りする。
撮った写真を、すかさずチェックする。
「・・・」
「写真じゃ、わからないなぁ・・・」
と、ゆかりちゃんはボヤいた。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。
◆ラッキーの挿絵
僕の妹が描いてくれた、この記事へのイラストだ。
◆元の記事
この記事は、
第4話 わたしを見て! を、書き直した。
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