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第140話 もぐら

もぐら駅、というのをご存じだろうか?

日本に何駅か、あるらしい。

地中にある駅、ということみたいだ。

有名なのは、土合駅。群馬県にあるらしい。

群馬県内の普通鉄道の駅としては最北端に位置する。当駅までが高崎支社管轄であり、上り線の清水トンネルの出口付近に新潟支社との境界が設置されている。ただし定期の普通列車は全て新潟支社の車両が乗り入れており、高崎支社の担当は、隣の湯檜曽駅とともに施設管理のみとなっている。   <中略>   下りホームが新清水トンネル内にあり、駅舎(地上)から10分ほど階段を下りないと到達できないことから、「日本一のモグラ駅」として親しまれている。「関東の駅百選」認定駅の1つ。  引用:Wikipedia


僕は、この駅も、通称が「もぐら駅」ということも、なんにも知らなかった。

知った、今現在も、それほどの興味もない。

では、なぜ今日はこのような記事を書いているのか。


それは、8月9日の朝のことだ。日曜日の朝だ。

目覚めたゆかりちゃんの第一声が、

「う~~~ん、もぐら、もぐら、もぐら~~~~~!!!!!」

という絶叫だったのだ。


となりの僕が、すでに目覚めている、そういう気配を感じたのだろう。目覚めているならば、大声を出してもイイではないか。そういうことでの絶叫だろう。

確かに、僕は目覚めていて、スマホで何かを見ていた。

だから、大声はイイ。

でも、一応は聞いておくかと思った。


「なんなん?」

「ん。朝の雄たけびやん」


ま、大声はイイ。大声が、雄たけびでもイイ。


「もぐらって、なんなん?」

「もぐら、知らんの?」


いや、知ってる。知識はある。穴も、実物を見たことある。


「知ってるけど、なんで、もぐら?」

「もぐら駅って、あるんやよ?」


「え? 駅?」

「そ、もぐら駅」


「そんなん、あるの?」

「あるんやで~。調べてみや~」


すぐにスマホで検索して、先の引用のWikipediaをかるく読んだ。


「へ~。で。・・・なんで、もぐら駅?」

「は?」


「朝から、もぐら、もぐらって絶叫したやん。隣から苦情がくるぐらいの、ボリュームだったけど~」

「朝の雄たけびやん」


(カクン)

ベッドの上ゆえに、ズッコケることができなかった。でも、僕の中では(カクン)とコケた。


結局、なぜ、もぐらと叫んだのかは、教えてもらえなかった。

僕の予想では、もぐらか、もぐら駅のどちらかを、夢で見たんだと思う。


このように、会話がかみ合わないことは、ちょくちょくある。

30回中、29回は、おもしろい。楽しい。

たまに、イラっとするけど。

この日は、楽しかった。


僕は、そんな目覚め方をするゆかりちゃんも大好きなのだ。




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奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家
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