親友が逝って12年が経ち、父が逝ってからは20年以上も経っている…
「本当に聞こえるんだよ。
空耳とかじゃないんだ」
13年前、親友のミッチくんが、僕に、【幻聴】の体験を語ったときのセリフです。
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僕には、小・中・高と、ずっと一緒だった親友がいました。
過去形なのは、ミッチくんは12年前に他界したからです。
高校を卒業して、田舎から上京して、僕は八王子市の独身寮暮らしでした。
ミッチくんは日野市に住んでいました。
「なんだ、メッチャ近いじゃないか」となって、社会人になってからも交友は続きました。
その後、互いに引っ越したりして距離は少し遠くなっても、電話は定期的にありました。
酔うと電話してくるクセが、ミッチくんにはあったのです。
その電話が、ず~っと来なくなりました。
ミッチくんの携帯電話にかけても、どうやら番号が変わったようなのです。
誰かに聞けばすぐに分かるし、田舎に帰る時にでも調べようと思っていた頃に、東日本大震災がありました。
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震災キッカケで、田舎の同級生と電話で話すことになり、そこからミッチくんが携帯電話を失くして番号が変わったことを知ったのでした。
そのことを教えてくれた同級生は、「じょーじだから、あえて言うけど」と前置きして、追加情報をプラスしてくれました。
「ミッチくんはアルコール依存症で、今、精神病院に入院中なんだ」と。
僕は、ミッチくんの新しい携帯に電話しました。
電話はあっさり繋がりました。
僕が同級生からの情報を切り出す前に、ミッチくんは言いました。
「オレ、アル中なんだ。今入院しててさ」と。
「見舞いに行ってイイのか?」と聞くと、
「おお! 来てくれるのか! 嬉しい」と喜んでくれました。
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僕の父も、晩年、アルコール依存症でした。
「晩年」といっても、父は60代で他界したのです。もう20年以上も昔のことになっちゃいました。
医者から、酒もタバコも止めるように言われても、馬の耳に念仏&馬耳東風でした。
嘘偽りなく、そのころの父は、『長生き』には興味なかったと思います。
隔離設備のある病院に入院したと、田舎の母や姉弟から、恥ずかしそうに告げられたことがありました。
何でも、すぐに知れ渡ってしまう田舎ですからね。家族にとって、他人の視線が痛かったことでしょう。
父の幻聴のことも、通夜の時に、母から聞きました。
でも、このときの僕は、まるで他人事でした。
入院の知らせは、電話で、遠く離れた神奈川県で聞いたワケですし、幻聴が聞こえる父に苦しめられた母や弟のことは、父の死後に知ったのです。
つくづく、やはり無知って罪だと思います。
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大好きなミッチくんがアルコール依存症と知って、僕は、かなり調べました。
インターネットはもちろん、本も読みました。
漫画家の西原理恵子さんの夫がアルコール依存症だったと知り、それが描かれた映画『毎日かあさん』も、レンタルを借りて観ました。
セキュリティーの厳重な病院に、確か、2度お見舞いに行きました。
ミッチくんはそこを退院して、通院に変わりました。
僕が調べた限り、アルコール依存症は治らない(ほぼ完治はしない)、という結論が動かなかったのです。
ミッチくんに、「僕も医者と話がしたい。医者に許可を取ってくれ」と頼みました。
OKが出て、僕はその翌月のミッチくんの問診に同席しました。
医師に「友人の僕は、何ができるのか? 何をしたらベストなのか?」という質問をしたのです。
主治医は「友人として、今まで通り精神的な支えになって上げてください」と言いました。
僕は、(やはり、出来ることは何も無いのだ)と、心の中で思いました。
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その時僕は、横浜市に住んでいました。
ミッチくんは東京都昭島市でした。
僕は、「月に1度、遊びに来る。泊めてくれ」と提案しました。
何ができるワケではないのですが、そう決めたのです。
実際は、月に1度以上、昭島市に行きました。
何度電話しても電話に出ないことがあったのです。
断酒しているのに、お酒を飲んでしまったとしか考えられません。
アルコール依存症患者が、ホンの僅かでもアルコールを摂取すると、それがスイッチとなって、飲酒は止まらなくなるそうです。
スイッチが入ったなら酔いつぶれるまで飲み続けるらしく、意思などいったジャンルではないのです。
30年も断酒し続けた人が、もうさすがに大丈夫だろうと、ホンの少しお酒を飲んだなら再発した。それがアルコール依存症だと、僕が調べた何かの中に記載されていました。
料理のミリンで再発した例も多いとか。
毎月の訪問に加えて、2度、緊急訪問を行なったので、月1度より多くミッチくんの家に行ったことになります。
緊急訪問時の家の中はグチャグチャです。
僕の仕事は、部屋の掃除です。
僕は、ミッチくんを一切責めたり叱ったりしませんでした。
不思議なのです。
僕は、ミッチくんには一切、腹が立たないのです。
何故なのかは、いまだに謎です。
腹が立たないどころか、無事を確認して安堵するのです。
ケガなどをしていなくて(ありがとう)という気持ちになるのです。
この優しさを、僕は、妻のゆかりちゃんに注ぐべきです。
それができないのは、僕は「ゆかりちゃんには少し甘えたい」と思っているからなのかな?
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春から、ミッチくんの姪っ子さん(23歳くらい)が同居することになりました。
ミッチくんのお兄さんの娘さんです。
ミッチくんは、布団を新調したり、「自転車を買ってあげるんだ」と言ったりして、それはそれは楽しみにしていました。
今日から姪っ子と同居という、その日。
僕の携帯電話に、ミッチくんのお兄さんから電話が入りました。
「娘がミッチの所に着いたんだけども、インターフォンを鳴らしても誰もいないらしくて…」
僕は、仕事を早退させてもらってミッチくんの家に駆けつけました。
姪っ子さんとは初対面です。
不安そうな顔をしていました。
カギ屋さんを呼びました。
カギ屋さんは、マンションの所有者の許可がないので警察を呼んでくださいと言いました。そりゃあそうです。
お巡りさんが来てくれました。
ドアが開いて、お巡りさんが2人、先に入りました。
出てきて、「お風呂の中で亡くなっています」と言いました。
姪っ子さんが崩れ落ちそうになりました。
僕が支えました。
姪っ子さんが部屋に入ろうとすると、お巡りさんに止められました。
捜査が必要なのと、あと、「見ない方が賢明です」とも付け加えられました。
姪っ子さんを、エントランスのイスに腰掛けさせました。
姪っ子さんの表情が変でした。
発狂直前の顔に、僕には見えました。
この子を狂わせるワケにはいかない。
僕は、姪っ子さんをギューッとハグしました。
そして、一緒に声を殺して泣きました。
姪っ子さんの心が、ミッチくんの死を信じたくない、まだ信じられない、そういう想いが伝わりました。
警察の捜査は長かった気がします。
捜査が終わったあと、「見ても良いですか?」と僕は、言い出しそうな姪っ子さんに変わって聞きました。
「どうしてもなら。ただ、あまりにも変わり果てていて、若い娘さんが直視するのはオススメはできません」
お巡りさんがそう言うので、姪っ子さんはあきらめました。
部屋の中の状況を聞くと、
「焼酎やウイスキーの空瓶が数本転がっていた」
「お風呂の中に文庫本があり、入浴中に亡くなったと思われる」
「お酒を飲んでからお風呂に入ったという状況に見えました」
と、丁寧に教えてくれました。
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後の、死亡診断書は「虚血性心不全」でした。
ほぼ原因不明のようなものだという解説を、誰かが言っていました。
僕の父は、眠ったまま逝ってしまいました。
朝、目覚めなくなったのです。どう診断されたのかは分かりません。
父もミッチくんも、アルコールが直接命を絶ったのではありません。
しかし、アルコールが命を絶ったのだと解釈して間違いはありません。
未来から来た人がいるらしく、その人は、「未来では飲酒は禁止だ」と言っているとか。
アルコールは、脳にダメージを与えます。
これは覚醒剤などの薬物も同じです。
薬物は禁止されているのに、お酒が禁止されていないのは、理屈では変ですね。
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アルコール依存症患者は、誤解されます。
「意思が弱い」とか「自業自得」などが代表例です。
ミッチくんは、離婚して、2人の息子と会ってはならないという状況になったのだそうです。
きっと、淋しくて、辛くて、お酒の量が増えたのでしょう。
でも、ミッチくんは、分かれた元奥さんの悪口などは一切言いませんでした。普通はヒトのせいにします。悪口を言ってガス抜きします。
でも、ミッチくんは、それをしませんでした。
お酒の量が増える理由やキッカケは、きっと色々あることでしょう。
人の数だけあるかな。
ミッチくんの場合は、ミッチくんが
優しくて、
淋しがり屋で、
人のことを悪く思えなくて、
自分を責めて、
でも、暗い雰囲気がキライで、
社交的で友達が多くて、
ひょうきんで、みんなの人気者で、
だからお酒の量が多くなったと、僕は思っています。
この仮説には、自信があります。
ミッチくんは、イイ奴だからアルコール依存症になった、と言えるのです。
酒量の臨界点を越えて、脳にダメージが与えられたなら、そうなったなら、もう、意思ではどうにもならないのがアルコール依存症だと言われています。
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僕が、誰かに、「アルコール依存症って、病気なんだよ」と説明すると、
「そう! あれは病気だ!」と返されることがあります。
このとき往々にして、会話がズレていたりします。
僕が言う『病気』は、医学的な意味です。
対して、返って来た「そうだ! あれは病気だ!」の『病気』は、比喩の病気です。
とんでもなく仕事に努力や集中力を注ぐと、
「ヤツは病気だ」とか「あの拘りは、もはや病気だな」などと言われたりします。
その「もはや病気だな」などという、【比喩の病気】があります。
このとき、その人を医者の前に連れて行く人がいるでしょうか?
答えはノーです。
比喩として「病気」と言っているだけですから。
「病気みたいなモノだから諦める(放っておく)しかない」という意味ですから。
本気でインフルエンザに罹っていると思う場合や、本気で盲腸じゃないかと思われるときに、諦めたり放っておく人はいません。
病院に行くことを強く勧めるか、何なら連れて行ってしまうでしょう。救急車を呼ぶかもしれません。
「アルコール依存症は病気なんだよ」と言ったときの真意は、医学的な意味での『病気』ですし、しかも、現在の医療では治せない難病で、周囲の理解と協力が必要なんだ、という意味で語っています。
「そう、あれは病気だね。病気だと思って諦めるしかないね」という話ではないのです。真逆なのです。
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キングコング西野亮廣さん原作、脚本、製作総指揮の、短編アニメーション映画『ボトルジョージ』が完成しました。
サンフランシスコ国際映画祭にノミネートされたそうです。
ノミネートされた作品の中からグランプリが決まります。
発表は4月28日かな。
サンフランシスコ国際映画祭のリンクを貼ります。
コマ撮り短編アニメーション映画『ボトルジョージ』は、アルコール依存症に関係するストーリーなのです。
ノンバーバル(非言語)映画です。
音がないのではありません。音はあります。
でも、言葉はありません。
1分とチョットの、紹介動画が公開されました。
西野さんのXを貼ります。
西野さんも、依存症について触れられています。
このX ↑ でティザー映像(紹介動画)が観れます。
1分36秒の短い動画です。
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しっかり考える時期なのかもしれません。
キチンと議論すべきテーマです。
せめて、誤解は即、正しましょう。
おしまい
PS. 僕のKindle本 ↓『いいかい、タケルくん』【考え方編】です。
読むと、恋人ができてしまう自分に変わります。
恋愛とは、若者だけのものではありません。
人生100年時代。
40代、50代、60代、70代でも、恋愛って必要です。(僕の主観です)
そばにいるパートナーは、誰にだって必要ですよ。(僕の感想です)
「考え方」ですから、若者だけでなく中年にも参考になります。
もちろん若い男性には、モロ、参考になります。
女性にも参考になります。
【男の思考】が詳しく書かれていますから。
「男性って、そんな考え方をするんだぁ」と、きっと参考になります。
ご一読いただけたら幸いです。