恋愛下手な沖縄娘が、東京で仕事に夢中になり、沖縄に新たな夢と恋人を連れて帰る話(仮)【小説の下書き その1】
小説の下書きです。
ちょっと前の記事はボツとしました。長すぎて。
恋愛下手な沖縄娘が、東京で仕事に夢中になり、沖縄に新たな夢と恋人を連れて帰る話(仮)
◆雑なあらずじ
◆平成15年(2003年)
1.小宮山ひまり 23歳
・4月
「は? 宮古島⁉」
ひまりは、予想以上の大声に、思わず携帯電話を耳から離した。
10センチ以上も耳から離れているのに、親友の声はビンビンと響き聞こえてくる。満開の桜が、衝撃波で散りかねないほどだ。
「どういうこと~⁉ 沖縄に帰ってくるのに、嘉手納に寄らず、私にも会わずに東京に戻るってわけ~! そんなの帰省って言わないさー!」
ひまりは、恵の怒りを鎮火すべく、懸命に言い訳をする。
「だからさー。メーグーにはデージ会いたいさ~。旅行会社にも問い合わせたんだけどね、私だけ那覇空港で別行動するのって、できないって言うのさ~」
「あんた、実家にも寄らないワケ⁉」
恵が「あんた」と呼ぶときは、かなり怒っているサインだった。
「私、沖縄の海が恋しくて恋しくて、もう我慢ならなくなったさ~。そしたら、たまたまチラシで格安ツアーを見つけたの!」
「そりゃあ、6月は梅雨だから、安いに決まってるでしょうが」
「それがね、6月24日からの2泊だから、たぶん梅雨明けしてるさ。あと私、今まで離島って1度も行ったことがなかったから、沖縄の海が見れて、格安で、初めての離島で、一石三鳥なんだよね! わかる~?」
「まったく~、ぜんぜん分からんさ~。ひまり、引越ししたばっかりなんでしょ?」
「そうなの、素敵なアパートなの! メーグー、いつでも泊まりに来てイイからね~。東京も、どこでも案内するから」
「引越しして、さらに宮古島に旅行だなんて、そんなにお金使って大丈夫なの?」
いつものことだが、恵は、だんだんとお姉さん口調になってくる。ひまりの方が誕生日は数ヶ月早いのだが、シッカリ者の恵みは、ごく自然にお姉さん口調を使うのだった。実際、恵には妹がいるので、ネーネーぶりは堂に入っていて、逆に、一人っ子のひまりは、つい無意識に甘えてしまう。
「2年間バイトで貯めた貯金がスッカラカンなの~。だから今回は嘉手納には寄れないのさ~。メーグー、あんまり怒らないで~。今日は私の誕生日なんだしね」と、このときも甘えた声を出し、なだめた。
「ふ~。東京に『ちょっと勉強してくる』が、もう丸2年だよ。…ひまり、私と一緒に仕事をするって約束、まさか、忘れてないよね?」
「大丈夫! 忘れてないよ。ただいま猛勉強中やさ~」
「どうだか」
「忘れないって言ったら、メーグーは豆だよね。毎年、私の誕生日に、必ず電話してくれてさ」
「そりゃそうよ、ひまりは私のことを『幼なじみ』って思っているかもしれないけど、私にとってひまりは『親友』なの。ああっ、ヤバイッ! 私、これからリクとデートなの。もう出なきゃ。電話切るね。そういえば、ひまりは彼氏、まだできないの?」と、恵は最後に余計なことを付け加えた。
ひまりは、やはり聞かれたかと思った。そして、毎度おなじみの強がりを言う。
「毎回言っているでしょ! 『できない』じゃなくって、今は『作らない』って!」
毎度毎度、自分が虚しくなる。
「ハイハイ、もう時間がないから。またね」
プツンと電話が切られた。
ひまりは、思わず携帯電話を見つめ「ハイは1回でイイさ!」とボヤいた。
携帯電話を2つに畳んでジャージのポケットに入れる。
缶コーヒーを軽く振ってからプルトップを引いた。ひまりは、ごく少量の缶コーヒーを、ちゃんと味わいながら飲んだ。
「まーさん!」
と、声に出した。普段は標準語を話すように気をつけているが、恵と話した直後は、どうしても沖縄言葉になった。「まーさん」は美味しいという意味だ。
ブラックコーヒーが好きなのだが、缶コーヒーに限っては微糖の方が美味しいと、ひまりは思う。
ひまりは、新居のアパートから、徒歩2~3分のところにある小さな公園のベンチに腰かけていた。昨日も座ったベンチだった。
満開のソメイヨシノを見上げる。
ベンチの真上にも、花びらを大量にまとった枝が伸びていた。背景は青い空で、相性バッリリの組み合わせだ。
まるで美男美女の、リクとメーグーみたいやさ、とひまりは思った。
恵の容姿を、羨ましいと、ひまりは子供の頃からず~っと思っている。
パッチリ&クッキリの二重瞼。黒髪は、天使の輪がクッキリと現れるストレート。女優になってもおかしくない美人で、事実、恵は、何度もスカウトされていた。しかも、成績までトップグループの常連。
メーグーと私は対照的だ、とひまりは思う。
ひまりは、自分の天然パーマを情けなく思いながら前髪を引っ張ってみる。染めてもいないのに、少し茶色っぽい髪を見てタメ息をもらした。
天然パーマのくせ毛だけではない。身長が155センチと低いのも、目が大きくないことも、ひまりにタメ息をつかせる要因だった。
まだ少し冷たい風が、ひまりの頬をなでた。
桜の花びらが、にぎやかに舞った。
2.佐々木龍彦 35歳
・6月
約30分前に羽田を飛び立った、那覇行きの機内。
佐々木の据わっているのはエコノミー席。佐々木の隣は空席で誰も座っていなかった。
佐々木がウトウトしかけると、後ろの席に座っている若い娘の話声で目覚めてしまう。それを何度か繰り返していた。
20歳前後と思われるの若い娘が、となりの席の老女と会話をしているのだ。その声が、とにかく大きい。そして良く響いた。
「あきさみよ〜! オバアは読谷村の人なの~⁈ 私は嘉手納さ~!」
当人には、大声という自覚がないようだ。
いつもなら、機内は君の家ではなく公共の場ですよと、優しく説教の1つでもするところなのだが、今、佐々木にその気力はなかった。
本当なら佐々木の隣には、美しい女性が据わっているハズだったのだ。
俳優のダレダレさんに似ていますねと何度も言われてきたハンサムな佐々木は、これまで彼女がいないという経験がない。
独立起業に失敗して、収入が激減しても、それでも恋人は常にいたのだ。
この宮古島ツアーに誘った杏奈は、佐々木が通うスナックのチーママだ。佐々木に分かりやすいモーションをかけてきて、交際することになった。今ではママ公認の仲だ。
佐々木は最近、初めて本気の恋をしたのかもと、そう思っていた。
その杏奈が今朝、「母が倒れたの」「宮古島に行けない」という電話してきたのだった。
本当なのか、それとも心変わりされたのか、どちらにしても心配なのだ。
そこに、うたた寝を妨げる大声。
泣きっ面に蜂ってやつだな、と佐々木は思った。罰が当たったのかもなと、ふと思った。
いや、神様が「気をつけろ」という警笛を鳴らしてくれたのかもしれない。
佐々木は、心を改めようと思った。
ちょっと事業が良くなったくらいで、宮古島に恋人を連れてくるというのは、散財しすぎなのかもしれない。このままでは交際費が多くなり、税務署に睨まれてしまうかもしれない。
油断だと、神様が叱ってくれているような気持になった。
2年間『地獄』を味わったのだ。
あの、地獄の体験を忘れてはイケない。絶対に繰り返してはイケない。
これはむしろ、ドタキャンした杏奈にも、うたた寝を何度も妨害する後ろの席の若い娘にも、自分は感謝すべきかもしれない。などと、佐々木は得意のムリヤリポジティブシンキングを行なった。
後ろの席の若い娘は、隣の老女に、身の上話を語り出した。
「ホテルじゃないのよ~、民宿なのさ~。
あえての民宿って、そこがイイのさ~。
農業体験や漁業体験があるんだよ~。
うん。東京に行ってもう丸2年さ~。うん、1度も帰ってないの~。
はじめての帰省なんだよ~。
実家じゃなく、宮古島に行くのだから『帰省』って言わないかー!
アハハハ~!」
この若い娘は、自分と同じツアーに参加しているのかもと、佐々木は思った。
* * *
宮古空港に着いた。
佐々木は、那覇宮古間ではシッカリと熟睡できたのだった。深い眠りゆえに、若い娘の声が気にならなかったのか、もしくは、若い娘は読谷村の老女と別れて静かになったのか。事の真相は分からないが、ともかく身体はスッキリしていた。
宮古空港の到着ゲートでは、スケッチブックを頭上に掲げている青年の姿が目に飛び込んできた。
スケッチブックには『民宿島袋』と、太いマジックで書かれている。
その青年の身長は異様に高かった。おそらく190センチくらいはあるだろう。細身で手足の長いその青年が、懸命に腕を伸ばしてスケッチブックを掲げていたのだ。
キョロキョロと、せわしなく周りを見ている。
その横には、身長170センチ弱といった痩せたオジイサンがいた。顔がシワシワで、目は、そのシワの中に埋もれている。1番濃く深いシワが目だと分かった。
老人はニコニコと笑顔で、口元にもスマイルを浮かべていた。
佐々木の横を、若い娘がスキップして抜いて行った。少しぎこちないスキップだったが、当人はノリノリという感じだ。
ボブパーマの上に、白い麦わら帽子が乗っていた。クルクルしている髪が、さも楽しそうに跳ねている。
身長は155センチくらいで、スレンダーなのに胸は小さくなかった。Tシャツに薄いブルーのシャツを羽織り、ボタンは全て外し裾の端を結んでいる。
デニムのホットパンツからは健康的な長い脚が伸びていた。モデルのように腰の位置が高く、白いサンダルは、この南国にピッタリだと佐々木は思った。
「私~、小宮山で~~~す! 下の名前はひまりで~す!」
「小宮山ひまりさん、いらっしゃいませ~」と、島袋民宿の青年が応じた。
佐々木は、やはりなと思った。
ひまりという若い娘は、那覇までの機内で、大声で老女と話していた娘だ。
おや、もしや、と佐々木は思った。
ひまりは、あの青年に、一目惚れしたのではないか。
佐々木にはそう感じられた。キレイな奥二重の目が、大きく開かれる瞬間を見逃さなかったし、スキップも青年と目が合ったタイミングで、10センチ以上も高く飛んでいた。今は、仕草に、ちょっとした恥じらいが出ている。
この娘は、思ったことが態度にも行動にも出るタイプだな、と佐々木は推理した。
仮に、この推理が当たっていたならば、この手の人間は、口に出る言葉にもウソは無い。佐々木は、コンサルタントという職業柄、無意識に心理分析をしていた。
すると、「ササキさ~ん、いませんか~!」と、青年が大きな声を出した。
佐々木はあわてて名乗り出た。
「佐々木です」
「ササキサン、いらっしゃいませ~。長旅、お疲れ様で~す」
青年は、とても明るい。さっきから見ているが、実に愛想良くニコニコと話しかけてくれる。
しかしと言うか、だからと言うか、そのとなりの老人はずっと無口だ。
ニコニコはしている。しかし、まだひと言も発していなかった。
「ササキさ~ん、もう1人の方は?」
「あれ? 羽田から旅行会社に電話しましたよ。連れはキャンセルになっちゃったんですよ~」
老人がニコニコ肯いている。
旅行会社からの連絡を、老人は知っていたのだ。
「あと、田辺さ~ん!」
「はい。田辺です」
「わっ! びっくりしたー! 田辺さん、いつの間に?
全然気づきませんでしたよ~」
「少し前から、ここにいましたよ」
青年は、不思議そうな顔をしたままだ。
青年は、田辺に気づかなかったワケだが、無理もないと佐々木は思った。
田辺という初老は、何と言うか、気配が薄いのだ。動きが極端に少ないからかもしれないが、周囲に同化して、見えているのに気にならなくなる。
身長は、島袋民宿の老人より少し低い。そして、かなり痩せている。四角いシルバーフレームの品の良い眼鏡をしている。レンズの奥の目は、穏やかに落ち着いていた。
「オジイ、皆さんそろったよ」と青年が言った。
「んん」とオジイは唸った。
「みなさ~ん! 僕について来てくださ~い!
海が良く見えるルートを通って、まずは民宿に向かいま~す!
レッツゴーで~す!」
「レッツゴーで~す!」と、ひまりが応じた。
一行は、外に出た。空気が、東京とは違う。6月下旬の宮古島はすでに梅雨明けしていて、カラッと晴れ渡っている。太陽の日差しが、ほぼ真上から注いだ。
佐々木はサングラスをかけた。
暑くてシャツを脱ぎ、Tシャツ1枚になった。35歳だが、昔、水泳で鍛えた身体には自信がある。デニムを短パンに履き替えたかったが、それは面倒なので我慢することにした。
サングラス越しでも、空の青は美しかった。青が、青のままの濃い青だった。
青年が若い娘に話しかける。
「小宮山さんは可愛いだけじゃなく、元気なんですねー」
「そんな、可愛いだなんて、お世辞を言っちゃダメさ~。
元気ってのは、本当に元気だからイイけどね! 私には、それくらいしか取り柄がないのさ~。
あと、名字じゃなくて『ひまり』って呼んで欲しい。
私、自分の名前スキなの。ちゃんでも、さんでも、どっちでもイイからね」
佐々木にとっても、ひまりという若い娘は眩しかった。人見知りなどしない。明るく、素直だ。屈託もなく、飾りもない。良い性格だなぁと思う。
ただ、佐々木にとって年下の女性は、恋愛対象ではなかった。友人からは不思議だと言われるのだが、こればかりは好みだから致し方ないのだ。
逆に、世代ギャップで話が合わない若い女性を、どうすれば好きになるのか、佐々木に言わせればそっちが謎なのだ。
田辺は、花を見かけては立ち止まり、鳥を見かけては立ち止まった。
時々、深呼吸も行なった。
佐々木には、芝居がかった動きに見えた。舞台役者かもしれないなと、また佐々木は想像を巡らせた。
青年が案内した車は、ワーゲンバスだった。白とスカイブルーのツートンカラーで、南国にピッタリだった。
ひまりが、そのワーゲンバスを見て飛び跳ね叫んだ。
「な~に~い! めっちゃカワイイ~んだけど~~~!」
青年は、満更ではないという笑顔を見せた。
その2へ つづく
PS. 僕のKindle本 ↓『いいかい、タケルくん』【考え方編】です。
読むと、恋人ができてしまう自分に変わります。
恋愛とは、若者だけのものではありません。
人生100年時代。
40代、50代、60代、70代でも、恋愛って必要です。(僕の主観です)
そばにいるパートナーは、誰にだって必要ですよ。(僕の感想です)
「考え方」ですから、若者だけでなく中年にも参考になります。
もちろん若い男性には、モロ、参考になります。
女性にも参考になります。
【男の思考】が詳しく書かれていますから。
「男性って、そんな考え方をするんだぁ」と、きっと参考になります。
ご一読いただけたら幸いです。
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