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それでも、凶器を投げちゃイケないっ! マネする人が出るから!

チラリとTVに視線を向けると、月が2つあった。
まるで村上春樹さんの小説『1Q84』みたいだな、と僕は思った。

「月が2つなんだね」と話しかけたのだが、そのドラマを観ている妻のゆかりちゃんは、僕の言葉を無視した。

いわゆるドスルーってやつだ。

(黙っとけ)
(私は今、ドラマを観ているの)


という、ゆかりちゃんの心の声が聞こえた気がした。


ドラマの中では、妻の広瀬アリスさんが、夫の大倉忠義さんに、

蟹の爪を投げた。


カニの爪は、大倉忠義さんの頬をかすめて、ダーツの的に突き刺さった。
大倉忠義さんの頬から血が流れた

これは、100%DVだと思う。↑ 証拠動画
よけてなかったなら顔に刺さっていた。たぶん目に刺さった。

なのに、だ。



「にゃはははは~!」

と、ゆかりちゃんは笑った。

「ウチもダーツの的、買ってこないとね~」

と、ゆかりちゃんは言った。


どういうことだろうか?
同じことがしたいって、そういう意味なのか?


ゆかりちゃんは、ドヤ顔を僕に向けていた。

今後、私を怒らせたら凶器を投げる!、という警告か?
あるいは、どう?、このジョーク、面白いでしょ、というドヤ顔か?

いずれにせよ、このドラマは、夫婦アルアル問題を描いていた。

夫には夫の言い分があり、夫は、妻に対する不満が限界まで溜まっている。
妻には妻の言い分があり、妻は、夫に対する不満が限界まで溜まっている。

そして、互いに自分が正しい、と思っていた。


ドラマの途中で、ゆかりちゃんが突然叫んだ。

「ティッシュ!」


僕は、少しスルーしてみた。
ゆかりちゃんは、ティッシュに話しかけただけかもしれないのだ。

名詞を叫んだだけだと、ゆかりちゃんは気づいたみたいだった。
そして、思い直したように、今度は動詞を叫んだ

「とって!」


僕に対する命令だった。
ここで逆らうと、何かしらの凶器が、僕の顔に向かって投げつけらるのだろう。

僕がティッシュに手を伸ばすと、

「違ったね、
 ティッシュを1枚とってください」

と、ゆかりちゃんは普通の口調になって、笑顔までも添えて言った。

僕は、面倒臭いなぁと思ったが、抵抗するのは怖ろしいので、2枚くっついているティッシュを、1枚に剝がし始めた。


ゆかりちゃんは、

「そのままでイイでぇ~す」

と言った。

ゆかりちゃんの顔が、ニヤニヤしていた。
このニヤニヤは、逆に怖い。


と、こんなことが3年前にあったのだ。

全て実話。
僕は、ゆかりちゃんが大好きです。






おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1577話です

PS

私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。

こちら ↓ です。

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奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家
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