片言ドラキュラ
僕の会社の同僚に帰国子女の女の子がいるんです。両親は日本人なんですが、15歳まで海外で暮らしていて、それから日本の高校に入ったんですが、大学は海外の大学に進学し、海外で少し働いてから、僕が務めている会社に就職したそうなんです。
幼少の頃が海外育ちなので、童話とかの話は「桃太郎」や「金太郎」とかは知ってはいるそうなんですが、彼女は「オズの魔法使い」とかの方が馴染みがあるそうなんです。
僕自身、海外のこともちょっとは興味があったので、そんなことを話しているうちに、最近、仲良くなり飲みに行くんです。
ですが、僕は日本の居酒屋か寿司屋かそんなんがいいんですが、彼女はエスニック系のご飯を食べてからバーとかでゆっくり飲みたいそうなんです。食文化なのか、飲み文化なのか、が違うので店を決めるまでに結構な時間がかかってしまうんです。
そこで、誘った方がお店をどこにするかをお互いが食べられる範囲で決めて良いというルールにしました。僕が誘った時は行きたいところも加味しつつ彼女が食べられるお店、彼女が誘ってくれた時は僕が食べられるお店という感じのルールにしました。
そのルールを決めた後の出勤で、仕事終わりに彼女から飲みに行く誘いがきました。どこのどんな店かな?と思い、「どんな店?」と聞くと、彼女は「そこまでethnicではないよ!お客さんもNippon人ばかりだから、大丈夫だと思うよ!」と言われました。
「そこまでethnicではない?」てことは、「ちょっとはethnicなのかな?」と一抹の不安を抱えつつ、彼女について行くと、紫の電球と真っ黒の垂れ幕というのか、のれんと言うのか、が掛かった店構えでした。
心の中で「ハズレ」とつぶやきながら、お店に入ると、思ったよりは日本風で静かな佇まいのお店でした。彼女が予約をしてくれていたので、スムーズに案内してもらい、席に着きました。
そして、メニューを見ると、エスニックなものもあるのですが、僕も食べられるメニューと豊富で安心しました。彼女が「決まった?」と聞いてきたので、僕は「ビール」と答ると、彼女は指をパチンと鳴らしながら店員さんを呼び、「beerとbourbonを下さい」といいしました。
注文が終わり、お店を見回していると、一冊の「Dracula」と書かれた本を見つけました。「こんな本あるんだね」と笑いながら言うと、「あっ!それ!No!開けちゃ!Close!」と言われた時には、僕はその本を開けてしまっていました。
すると、店の電球が一気に暗くなり、雷が落ちたような音がしました。驚きすぎて、固まっていると、彼女が「来るから、首は守ってね!」と言われ、言われるがままに両手で首を守っていると、「お待たせしました。」と注文を受けてくれた店員さんがビールとバーボンを持ってきました。
そして、彼女が両手でビールとバーボンを受け取ろうとした瞬間に、その店員さんがいきなり、彼女の首に噛み付きました。さっきまではなかったのに、店員さんの噛み付く口元をみると、牙がキラッと見えました。
噛みつくのに満足したのか、その店員さんは彼女の首から離れ、今度は僕の方に来たんです。怖すぎで、首から手を離さない一心で固まっていると、店員さんは僕の耳元で、「ダ イ ジ ョ ブ デ ス ヨ」といいました。見た目は日本人だし、なんの違和感もなく注文を受けてくれた店員さんはそこにはいませんでした。
店員さんが僕の耳元から離れ、厨房に入って行行ったんですが、何やから鋭い視線を感じて、視線の方に行くと、同僚の彼女が僕の方を見て、牙を光らせていました。
そして、僕の首元に襲いかかってきたんです。怖すぎて、店の出口の方まで走り、レジに1万円を置いて、何とか店の外に出れたのですが、「ドタドタドタ」とすごい足音が聞こえてきました。怖さを通り越して、何も考えずに一心不乱に路地を走って逃げました。
まだ、 「ドタドタドタ」と足音がします。恐る恐る振り返ると彼女は、もう僕の顔の横まで来ていました。「もうダメだ、首を噛まれる」と思い、目を閉じると、彼女は耳元で
「ご馳走様でした。次は私が奢りますね。次の出勤の際もよろしくお願いします。」
お昼にペペロンチーノを食べていたのが、功を奏しました。
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