渋いジャズ喫茶で、あえて注文するクリームソーダ
8月は高松で本屋巡りをしていた。
本屋と本屋の予定の間はカフェで休憩する。
そんなときにふらりと立ち寄ったのが、mocco kagawaさん。
ダークブラウンの落ち着いた内装が素敵なジャズ喫茶だ。
こんなに渋いのに、若い女性のマスターが一人で切り盛りしているところも好ましい。
手前の席が空いていたから座ろうとしたところ、ソファー席の方がくつろげますから、と前のお客さんがいたソファー席をサッと片付けて案内してくださった。
このスマートさとおもてなしに痺れた。
ここはコーヒーを…と思ったけれど、さっきブックカフェでコーヒーをがぶ飲みしていた。
これ以上飲むと、胃腸に問題をきたす。
ここは、クリームソーダを頼むことにした。
渋いジャズ喫茶で、コーヒーじゃなくてクリームソーダかよ、と思ってちょっと恥ずかしかったけど、そんな気持ちを吹き飛ばすほど立派なクリームソーダが来た。
綺麗…美しい緑に見惚れる。
思えば、小さい頃一番好きな飲み物はクリームソーダだった。
学期のあいだ休まず学校に通うと、母にクリームソーダを飲ませてもらう約束をしていた。
たった一杯のクリームソーダのために、毎日頑張れたのだ。
大人になってからは、カフェではコーヒーを頼むのが当たり前と無意識に決めていたのかもしれない。
普段生活しているとそこまで感じないけれど、旅先でクリームソーダを頼む自由さを楽しむと、カフェではコーヒーをという無意識の縛りが突然窮屈に思えた。
たまには、カフェで違うものを頼んでみよう。そんな気づきを得た、素敵なカフェの思い出でした。
《おわり》