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私が「学歴コンプレックス」を抱くまで
私は高校を卒業してすぐ地元の中小企業に就職し、今年で6年目になった24歳社会人である。
入社当初の私は、まさか自分がいわゆる「高卒コンプレックス」を抱くようになるなんて思ってもみなかった。
学歴コンプの権化、父による教育
就職を選んだ大きな理由は、自分が興味のない分野を学び続けるのがとにかく苦痛で一刻も早く解放されたかったからだ。
私の父親は家庭の事情で大学に行かせてもらえなかったことで、かなりの学歴コンプレックスを拗らせている人間だ。昭和時代を生きた男というのもあり「学歴を理由に実力が正当に評価されない」経験でかなり悔しい思いをしたり、苦労したようである。
そのためか我が子には同じ思いをさせまいという気持ちが強く、私と姉には幼少期から、「とにかく勉強をして良い大学に入れ」と口癖のように言っていた。
私が小学4年生くらいの頃から、参考書を大量に買っては押しつけてきたり、父の部屋で毎週開催される「テストの日」では問題に答えられないと激怒。(これは当時いちばんのストレスだった)
高学歴が集うクイズ番組があれば部屋に呼ばれTVを観させられ、家でもゲームなどで遊んでいる様子が見つかると状況によっては叩いたり蹴ったりもしてくる始末。
「お前には何の才能もないのに、勉強をしないでこれからどうやって生きていくつもりなんだ?」と問われ、学歴が人生の全てなんだと言い張る父に、私も徐々に洗脳されていった。
私たちの意思は父に支配される
少なくとも、私たちが高卒や専門卒を選ぶことは許されない状況であった。
年の離れた私の姉は秀才で、その分期待はとても大きなものであったが「音楽の専門学校に行きたい」と言った途端に父は豹変。
家族史に残る暴力沙汰の事件となった。
姉はあれからというもの未だ父には心を閉ざしている。
それを見た当時の私は幼いながらに強い絶望を感じた。
姉ほどではないが私も小学生の頃から勉強はできるほうで、クラスでの「頭が良いキャラ」ポジションは高校生まで続いた。
でも私は人生に直接役立つとは思えない学校での勉
強にストレスを感じ嫌気がさしていく日々だ。
私が自ら高卒を選んだ奇跡
そんな私が一体なぜ、高卒を許されたのか?
正確には許されたわけではない。
まともに父と会話をしなくなったから、私の決断に文句を言わせない状況になれたわけだ。
話すと長くなるのでここでは割愛するが、父が重度の鬱病になり、数年間まともに動けない、働けない状態になったため私に対して口を出すということがまるでできなくなったのである。
私は今がチャンスだと思った。
数年間にわたり父が働けなかったおかげで私を大学に進学させられるようなお金は残っていないし、それを口実にもう私は勉強という呪いからついに解放される!逃げられるんだ!!
そして私は高校2年の秋に進路変更をし、就職の道を歩むことを決めた。
それから約1年後、今の会社への内定が決まった。
結局は学歴、社会への絶望
覚悟していたが、初任給は当たり前に低い。
でも新卒でスキルもなく、おまけに高卒であるから仕方がないと府に落ちていた。
そこから数年が経ち、持ち前の向上心と努力でスキルや経験を身につけ、通常業務のほかに新規プロジェクトメンバーに抜擢されるなど、若手ながら私の活躍は社内でも少しずつ認められてきていた。
と、思っていた。
これならきっと昇進だって間もないはずだ、そして社内で挙げた功績に比例して給料だって上がるだろうと期待に胸を膨らませていた。
そんな期待が、呆気なく打ち砕かれた。
同期2人が先に昇進したのだ。
そこに私の名前はない。
理由をあれこれ考えたが、どう考えても学歴・年齢の差でしかなかった。
なにか目立った功績を残しているとか、能力が私より優れていたとかそういうことではなくて、その2人は同期の中で唯一の大卒、専門卒の年上であったからだ。
チクショウ、結局学歴かよ。
今はもう、そんな時代終わったと思ってたのに。
よみがえる父の言葉
私の中に暗雲が立ち込めたとき、
「この世は学歴が全てだ」
かつての父の言葉が頭をよぎった。
就職を決めたときの私は、「たかが学歴なんて関係ない、実力であっという間に追い越してやる」って本気で思っていたし、それがあったからここまで努力を続けてこられた。
でも、やっぱり、そうだったのか?
少なくとも私が入社したこの会社では。
私は決してそんな風にはならない、惨めになんかならないと信じて、父と同じこの道を選んだのに。
こんな思いを私にさせたくなかったから、父はあんなに厳しく勉強をさせて、あれだけ良い学歴を残させることに取り憑かれていて、当時の私は心情を理解できなかったけれど、今となってはあれも父なりの愛だったんだと思う。
高卒の運命と憂鬱
結果を出したところで大卒と同じ目線で見てもらうことはできなくて不利で、同じ土俵に立つには5倍くらいの努力が必要で、出世も遅くて、給料だっていつまでも低いままなのは高卒だから?
それに気づいてからの私は次第に自分を保てなくなっていき、全てがどうでもよくなった。
やる気とか情熱とか、そんなのバカじゃね?と思ってきた。
そこからドタバタと音を立てるように崩れていき、もう今の仕事続ける意味って何なの?ていうか、そもそも自分ってなに?
プライド?わかんない。まったくもって、すべてが。
それでも諦めないのが私だったりして
すっかり闇落ちした私は数ヶ月間の休職を経て、現在は時短勤務で復職して今に至るけれど、まだ心の奥底に潜んでいる闇は一向に消えそうにない。
だけど一人暮らしで生計を立てるためには、ずっと休んでるわけにもいかなくて。
だから今はそんな状況で、自分は何がやりたいんだろうとか、そんなの巷で聞き飽きた言葉だけど、いろいろ血迷っている最中ってワケなんです。
こうしてnoteを更新してみてるのだって、自分の中の大きな一歩。
それでも私は、自分の人生を諦めたくないから、自分で自分を何度見失っても、いつまでも全力で生きていくよ。
心に眠っているのは闇だけじゃなくて、きっと一筋の光だってあるはずだと信じてるから。
今日も私は、とびきりの笑顔で仕事に取り組む。
心の靄を覆い隠すように、決してこの気持ちを誰かに知られてしまわないように。
(追記)父へ
私は今、あなたが最も恐れていた道を辿っているのかもしれないけれど、不思議と後悔はしていない。
だって自分で決めた道だもの。
だからもしもあの頃に時間を巻き戻せたとしても、それでもやっぱり進学は御免だよ。
受け継いだハングリー精神は、何度消えそうになってもまた絶対によみがえるから!
可愛い娘より