【ミニ小説】 緑色の建物には
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1,
私が暮らしている町の
いつも通り過ぎるあの場所に
あの日、
大きな建物が建てられたそうだ。
誰が建てたのか
何のためなのか
誰も知らなかったそう。
はじめは誰も興味を示さず
ただ通り過ぎていただけ。
あるとき、
誰かが建物に入ったそうだ。
建物には
扉も仕切りも
何も無く、
簡単に中に入れたそうで、
その中には
大量のゲンキンが
ギッシリと入っていた ────
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2,
建物の周りには
ゲンキンを求めた
沢山の者が集まった。
「ここに来れば大量に手に入る。」
噂はすぐに広まり、
建物にギッシリあったそれは
2日、3日で無くなった。
「勝手にとってはいけないのではないか。」
なんて、
誰も思わない。
何故なら
『ご自由にお取りください』
という、
1枚の看板が
あったからだ。
誰もが何にも考えずに、
ゲンキンを運び出し続けた。
ゲンキンが発見された日から、
4日後。
最初に建物に入った者が、
意識不明の重体で発見された。
それからは次々と、
体調不良を訴える者が続出した。
判明したのは、
緑色の建物に入った全員が
食中毒を起こした
ということだ。
原因を突き止めようとしても、
できる者は誰もいなかった。
ー原因不明の食中毒ー
治療法がわかる者も当然いなかった。
ゲンキンが発見されたあの日から6日が経った。
建物に入っていない者までもが
食中毒になった。
「あの建物に近づいていないのに…」
たった3日間で
町全体に広がっていった。
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3,
── その建物は、
町中の者と共に、
いつの間にか なくなったそうだ。
今日、
私が暮らしている町の、
いつも通り過ぎるあの場所に、
大きな緑色の建物が建った。
おわり。
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4,
ある日の家での出来事
A: うわぁ!なんでこんなところにいるの!?
B: 本当だ、次々と入ってきてるなあ。
『コトッ』
B: これを置いておけばもう大丈夫だよ。
A: その緑色の、なに?
B: ん? あぁ、これのこと?
おわり。
ʕ•ᴥ•ʔ