『女優』と名乗ることの難しさ
ご無沙汰しております。
最近ロックダウンとは言えバタバタしており…理由の一つには気温が暑くなった途端部屋に害虫が出始めてそいつらとの戦いが大変だったというのもあるのですが…
実は今朝、知り合いのディレクターが担当しているZoom生配信番組に出演しました。毎回色んなテーマを色んな人を招いて話し合うような番組で、結構名前の知れた方々もゲストでいらっしゃるのですが、何故か「夜の街」というテーマの回に私は招かれました。ニューヨークに現在いる人が欲しかったらしく、単純に「あ!あいつ、今ニューヨークじゃん」という発想で声がかかったのだと思うのですが…
一応、下記note記事に貼ってあるリンクからご覧頂けます。(私は1時間くらい経った頃出て来ます)
このリンク、一番下の方に下がっていくと(Yours truly)ワタクシ登場いたしますが…
この簡単なプロフィールを書くのに私、思いの外悩みました!
私正直、自分の肩書きが分かりませんでした 笑
どことなく「収入を得ているキャリアが本業」みたいなプレッシャーを感じるのは私だけでしょうか?
たまに夜寝る前に時間があると癒されたくて80年代とか90年代の映画を見るのですが、この前久しぶりに"Tootsie"を見たときにも思ったことです。
ご存知ない方是非ご覧頂きたいですが、簡単に説明すると、Dustin Hoffman演じるMichael Dorseyは気難しくて売れない役者で、ニューヨークの演劇学校で授業を担当しながらレストランでウェイターとしても働いています。ルームメイトで友人のJeff (Bill Murray)が書いた作品を舞台化するためにお金が必要だから、とエージェントにオーディションへ送ってもらうように頼みますが、「お前は気難しすぎて誰も雇わない」と言われ、思い切って女装をしてオーディションを受けたら受かってしまい、男性であることを隠して女優として働き始める、というプロットです。
この映画の中で、もちろんMichaelの収入源はほとんどレストランと演技の講師ですが、自分はウェイターだとか講師だとは名乗らないと思います。Michaelの女友達のSandyは30代半ばでもなかなか芽が出ずくじけそうになっていますが、女優として名乗ると思います。そして見ている側としてはそれに対しては全く違和感を感じません。
言ってみれば、私はこのSandyと似た境遇にいるわけです。
だったら「女優」と名乗って何が悪いのか。
俳優業って、続けたから成功する保証があるものでもないですし、極端な話、出来る事全てをして物凄く才能があっても確実に成功すると言えるものではありません。でも、演技に情熱を持っている人たちは他のことを我慢したり工夫したりしながら、なんとか続けていける環境を作るしかないわけです。
つまり、「自分は俳優だ!」と心の底から思っていても、必ずしもそれを裏付けられるものが沢山あるわけではないキャリアです。
一番時間や労力を費やしているものがその人の肩書きになるのだとしたら、私は間違いなく「女優」です。
特にこの1年は学校に通っていたこともあり、毎日演技をしてますし、しょっちゅう演技のことを考えたり勉強もしています。バンクーバーに行った時も演技のために全てを投げ出して行きました。映像制作の仕事も、元々は演技の仕事に繋げるネットワークづくりに、と思って始めたことでした。
この「女優」と名乗ることに対する変なプレッシャーは一体どこから来るのか。ほとんどの人が全然気にすら留めてないことかもしれないのに、何で私にとってはこんなに難しいのか。
結局は自分のマインドセットから
俳優業と同じように「裏付け」が難しい職業は他にも沢山あると思います。アートを創り出す人たちには少なくとも言えることではないでしょうか。
俳優も含めアーティストたちは、ただでさえ繊細な人たちなのに、自分の持っているものを人目にさらけ出すことで表現をしなければならず、それは相当恐ろしいことでもあります。自分が表現したものを評価されるということは、自分自身が評価されているのと全く同じだからです。だからこそ、アーティストとして名乗ることにも勇気はいります。受け入れられないと、自分のアイデンティティすら否定されたような感じがしますから。
ただ、アートを愛する人たちは収益に関係なく、何かを創り出すことに生き甲斐を感じているものですし、それを誇らしく思いながら堂々と「肩書き」として書けるようになったら、もっと自由な表現ができる環境も出てくるのかなと思います。
もちろん評価や評判などを気にせず、とにかく自分の創り出すものを信じて励む人も沢山います。そう言う人たちは、きっと「肩書き」とかになんか囚われずに自分を強く持っているんでしょう。
自分が一番自分のことをよく分かってますからね。
多分「女優」と名乗るに相応しくないと思っているのは世間より先に自分だな、と気付きました。
私自身が裏付けがないことに説得力を感じていないんです、きっと。
だから、まずは自分で自分を認めるところから始めないとな、と思いました。
同じような悩めるアーティストたちに、一緒に頑張りましょう、という気持ちを込めて。