30代半ばでNYの演劇学校へ通った理由と感想
昨年の4月頃だったかと思いますが、イギリスの事務所に興味を持ってもらって早ければ1ヶ月後にはビザを発行してもらってイギリスで女優活動ができるかも!となっていた矢先、散々期待させておいて「やはり演劇専攻で学歴がないとビザ取得が難しいと判断した」と断られたんです。
正直打撃が大きかったです。
私は元々はずっと絵画を習っていて、大学では映画製作を専攻していました。小さい頃から「あなたはアーティストになる!」という親の期待が大きく「演技をしたい」という私の言葉は両親にはなかなか響かなかったようで…(演技をアートと結び付けない考え方にもまず問題があると思いますけど)
なので、私にとって演劇というものは「習いたいけど習ってこれなかったもの」という、どこか劣等感にも似た存在だったんです。
それでもやっぱり演技への興味を捨てられなくて、フリーランスで映像制作やキャスティングの仕事をしながらオーディションを受け始めて、ちょっとずつ演技の仕事もできるようになっていき、ますます「演技をしていきたい」という気持ちが高まりました。
30代入る直前にワーホリでバンクーバーへ行き、そこでは事務所にも所属してオーディションも受けまくったし、ひっきりなしに演技のコースやワークショップを受けまくりました。個人的には凄く成長した経験だったし、少しずつ劣等感も払拭できていった気がしてたんです。
「でも、やっぱり足りないのか。」
学歴がない事でビザが下りないと言われた時、「そんな事言われても今更どうしようもないじゃないか。」と、軽く絶望感すら感じました。
それからちょっと体調を崩した時期があって、ほんと心の底から「元気さえあれば何でもできるなあ」と思う日が続いてたんです 笑 それで、だんだん「とにかく大きな変化が欲しい。海外でまた挑戦したい。」という思いが強まって、一番手っ取り早いのは学校に入りなおす事だな、って思ったんですよね。
国によっては学費が凄く安いので、最初はそういうところを調べてたんですけど、私は日本語以外だと英語しか話せないので、また言語を学んでからってなると演技はしばらく出来ないなぁ、とも思い…「絶対ばか高い!」というイメージがあったので調べすらしていなかったニューヨークの学校について調べ始めました。
そしたら、まあ!良い意味で期待を裏切ってくれて。
私は幼少期と大学時代をアメリカで過ごしてますが、全部カリフォルニアだったので、東海岸に住んだ経験はなかったんです。ニューヨークは何度か行ったことはありましたけど、観光とか仕事だけだったので生活するイメージはあんまりつかなったですし。でも小さい頃から一度は住んでみたいと思ってたんですよね〜。映画好きな人はそういう人多いと思います。
ニューヨークのアクティングスクールには色んな種類があって長い歴史がある学校も多いんです。私が通ったT. Schreiber Studioも設立50年目でしたし。それと舞台に重点を置く学校が多い気がします。ブロードウェイを始め舞台がいたるところでやってますからね。
でも何より驚いたのは1年コースを設けてる学校が多いこと!
大抵は長いと2〜3年のコースとかで、それより短いとSummer Intensiveみたいに数週間フルタイムで通う、みたいなものばかりなんですが、1年間フルタイムのコースがちらほらあったんです。
な、なんと!
と驚きました。学費も…うーん…貯金全部使えば1年間暮らせる!笑
もちろん、躊躇しましたけど。貯金全部なくなっちゃうの大丈夫かしら、と。
私元々お金にはかなり慎重なんです。いつも計画的にしか使わないし、無駄遣いも一切しません。(ケチなくらい、ほんと)
でもちょうどその頃読んでた本に「お金すらあればやりたいのに、と思うことは、お金を何とかしてでもやるべき」と書いてあって、かなり突き動かされました。
「お金すらあればやりたい?絶対やりたい!」
と思いました。
そんなわけで「思い立ったが吉日!」と学校に申請しました。
T. Schreiber Studioとあともう一つUta Hagenが設立した学校があって迷ったんですけど、ちょうどその頃NetflixのOZARKにハマっててJulia Garnerが若いのに素敵だわー!と思ってたところで。彼女のプライベートコーチが教えてる学校だと知ってT. Schreiberだ!と思いました。また運命感じちゃって、うふふ。ちなみにEdward NortonとかもYale出た後にT. Scheriberには世話になったって話してます。多分Terry Schreiber本人には最近までコーチングしてもらってたと思いますし。有り難いことに私は在学中JuliaのコーチであるPamela ScottにもTerry Scheriber本人にもレッスンしてもらうことができました。
ちなみに、こういう専門的な分野についてフルタイムでそればっかり勉強するコースをConservatory Courseというんですけど、一般的にはオーディションを受けて入学するコースです。入ってからも何日以上欠席すると退学処分の対象になる、とかルールも結構厳しいです。本当にやる気のある人しか受け付けない、っていう体裁。まあ、実際は遅刻多いやつも欠席多いやつも色々いますけど 笑 あ、でも一人退学にはなりましたね。
そんなわけで30代半ばで学校に入りなおしたわけです…
色々大変だったか、と考えると、実はそうでもなかったです 笑
最初の頃はほんと色んな人に助けられたり、素敵な出会いも多く、「ニューヨークが私を呼んでる!」と勘違いするくらいスムーズに行きました。現地に着く前から住む家も決まったし、ルームメイトも最高だったし、電車1本で学校まで行けるし、行きも帰りもブルックリンブリッジの絶景を見ながら登下校する日々…
高校卒業後にカリフォルニアの大学へ入った時は最初大変だなあと思いましたよ。どこにいるか関係なくまだヘンチクリンな子供でしたからねえ。親元離れて暮らすのがまず大変でしたから。右も左も分からない状態で。今は右も左も上も下もわかりますから!
だから、正直思ったのは、
30代で学校行くの最高じゃん!
ということ 笑
だって、考えてみてくださいよ!贅沢な話ですよ。誰もが簡単にできることではないのは十分わかってます。私も同級生たちはどんどん結婚してポコポコ子供産んでるし。仕事辞めて学校入るなんて出来ないって人もいると思うし。よっぽど自由なスナフキンみたな人じゃないと現実的ではないと感じて無理はないです。
でも、何が素晴らしいって、この歳になると、学校に通えることの有り難さが半端ないんです!
学生時代、学校に行くのが「普通」だった時は、もはや義務感で行ってたようなものじゃないですか。まあ、もちろん中には若くして既に使命感抱えて学業に励んでた人もいるかもしれませんけど。私はやりたいことを勉強してたものの、それを実践的な形に結びつける想像ができなくて、ただ受け身な感じになってたと思うんですよね。
無理もないと思いますけど。仕事し始めて、色々経験して、ようやく「こういう知識が必要だ」とか「こういう技術を身に付けたい」とか思い始めるじゃないですか。
この歳になると、「何で学校に通いたいのか」という理由も動機も晴れた青空のようにクリアなんですよ!(ちょっとよく分かんない例えしましたけど)
それは、学校へ通ってて、クラスメイトの若造たちを見てても歴然とした違いを感じました。
クラスメイトたちはほとんどが20代前半。一番若い子は18歳だったので。もちろん私は最年長。表面的にはかなり馴染んでたと思いこんでますけど。気持ち的にはもののけ姫のおっことぬし感が否めなかったです。
でも、とにかく若造たち注意力が散漫しすぎ!!
授業中、私はいつも最前列の先生に一番近い席で、身を乗り出して先生の口から出る言葉の一語一句を自分の全細胞に染み込ませたいと言わんばかりに集中してたんですが…(ちょっと気持ち悪いですか?)
とにかく皆なんか話したいことあると私語が止まらん!
私もこんなだったかしら?と思いながら、その注意力のなさに驚いてました。もちろん、みんな演技に関しては真剣なんでやることはやりますけどね。でも、やっぱり今の私の意気込みは自分が20代前半の時には存在しなかったものだな、というのは感じてました。
とにかく全てを吸収したくて。
授業に集中するために毎日9時間くらい寝てましたし 笑
「ニューヨークライフ満喫した?」ってよく聞かれますけど、あんまりしてないと思います、多分 笑
ほぼ全ての時間を演技に注いでたので。
節約するために外食もしてないし、友達ともそんなに会ってなかったし、買い物も学校で使うもの以外ほとんど買ってないし。
若造たちはそんな私を見て"You gotta enjoy your life too gurrrrrrl! (人生楽しまなきゃダメじゃーん!)"と言ってきましたが、私からしてみれば「これが人生を最大に楽しんでいる私の姿です」という感じでした。(おっことぬしの声で想像してみてください。威厳がすごいでしょう)
本当に楽しかった。
もちろん、まさかコロナでこんなことになると思ってなかったので、もっとニューヨーク満喫しておけばよかった、友達とも会っておけばよかった、もっとDrag Queenのショー見たかった、とも思いますけど。
でも、とにかく後悔は一切ないですね。本当に全てを出し切って、得られるもの全てを得た気持ちでいっぱいです。
こんな達成感とか、こんな満足感って、人生でほんとどれだけ得られるだろう?と思います。
心配事は考え出したらきりがないですけど、でも今までの人生で一番大きなリスクをかけたこの自己投資、想像以上のリターンがあったなと思います。
だから、もしもこれを読んでる方が「こんなことに興味がある」「これをもっと勉強できたらいいのに」「もっとステップアップしたい」など色々思われていたら、大人になってからの学生生活、是非視野に入れて頂きたい!
今となってはオンラインクラスも沢山ありますしね!いくつになっても学ぶ機会が身近にある時代だと思います。
あ、そういえば言い忘れた。
前に読んでた人生100年時代っていう本に書いてあったんですけど、(The 100 year lifeっていう本だったかな?)今の学校のシステムって平均寿命がもっと全然短い時から続いてるものだと。
だから例えば50歳60歳くらいで亡くなるのが普通だった時に、小中高大と学校に行って、そこで学んだことを活かして残りの人生を生きていた時代と比べて、今はその倍くらい人生が長くなってるのに、同じ量の学業だけで一生持たせようと考えるのがおかしいって書いてありました。もちろん学校に行かなくても知識を養う方法は沢山あると思いますけど、「学校」という存在を「子供の時だけ」と決めつけなくても良いのかなとは思います。
これから大人たちが学生になって当たり前の時代になっていったら楽しいですね!