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子育てにおけるヒヤリ・ハットを経験して。氷山にぶつかるまえに。

先週、とてもこわい思いをした。

7ヶ月の三男が、あるものを誤って飲み込みそうになったのだ。

こんなことを書いたら、わたしの不注意を責めるひともいるかもしれない。でも、責められてもしかたない。私のせいだから。

ここで一度、自分と子どもに起きたこと、自分の頭の中を整理しておきたいと思う。

※少し汚い表現があるかもしれません。気になる方は、また別の機会にお会いできたらうれしいです。または、お食事時を避けてお読みいただくとよいかもしれません。


∞∞∞∞∞


その日、私はいつもより少し気が抜けていたと思う。そして、疲れていたと思う。


前日に、二男の3歳児健診があった。

特に二男の成長には問題なさそうだったけど、私は最近3人の子どもたちとの関わり方に悩んでいた。

三男が最近よく動くようになって、長男と二男の兄弟ゲンカが悪化していること。

特に二男が荒れ気味で、こだわりが少し強いことがあり、困っていること。

なかなか休めず、疲れがたまっていること。

…これらについて臨床心理士さんに話を聞いてもらい、言われたのは、

「困った行動は親にみてほしいサインだから、向き合ってあげましょう」

「疲れはためるとよくないよ。旦那さんが休みの日にお子さんたちをみててもらって、半日くらい1人で好きなことをしましょう」

ってことだった。

そりゃそうだよね…という、予想どおりの回答だったけれど、話を聞いてもらっただけでも気持ちはだいぶ軽くなっていた。

次の休みには、夫に子どもたちをお願いして、ひとりの時間を必ず作ろう。そしたらきっと、体も心も回復する。私は大丈夫。

そう思っていた。


その日の朝、保育園に出かける前に二男が

「ほいくえん、いかない」

と言った。

いつもなら、なるべく保育園に行かせようとするけれど、前日の臨床心理士さんの言葉が頭に残っていたので、

「いいよ、今日は、かっかと、さんちゃん(三男)と一緒にお休みしよう」

ということにしてみた。

二男と向き合う日にしよう、そう考えていた。

長男は保育園でイベントがあったし、特にぐずることもなく夫と一緒に出かけていった。


…やれやれ。

みんなが出かけると、ふっと気が抜ける。

ダイニングテーブルの上にはまだ朝食の残骸が転がっているけれど、まぁいいやということにして、少しスマホをのぞいた。

二男がかけよってきて、

「おせんべたべてもいーい?」

と聞いてきた。

それは、三男用に買ってあった赤ちゃんせんべいだった。少し前、出掛けた時にバックに入れたら割れてしまって、そのままキッチンカウンターに置いたままにしてあったもの。

朝ごはんの後だけど、まぁいいか。疲れてると、まぁいいか…が多くなる。

私は軽く次男に

「いいよー」

と言った。

その日は、少しでも二男に「ダメ」って言うのを控えようと思っていたのもある。

食べてる間、二男がおとなしくしててくれるかな、ちょっとゆっくりしたいな、という期待もあった。

二男はソファに座って、ひとりでせんべいの袋をあけ、しゃりしゃりおせんべいを食べ始めた。

私との距離は、約2.5m。


その時、三男はソファから少し離れたところでひとりで座り、おもちゃで遊んでいた。二男がおせんべいを食べる音に反応し、三男がはいはいでソファに近づいていくのが見えた。

最近の三男、めきめき動き回る力が向上している。早く兄たちに追いつきたいのか、6ヶ月にしてソファでつかまり立ちをした。まだおぼつかないはいはいで、どこまでもいく。目につくもの、手に触れるもの、研究熱心な彼はなんでもかんでも口に入れて確かめる。


「あーん!さんちゃんがきちゃうー」

二男が三男にせんべいをとられそうになって、半べそで声をあげた。

「さんちゃんには、危ないからおせんべいあげちゃダメだよ!」

私は注意した。

三男は7ヶ月半。まだ飲み込むのが上手じゃないので、赤ちゃんせんべいとはいえ慎重にあげている。

「でもーさんちゃんがきちゃうんだもん」

「だめだよー」

そんなやりとりが、何回か。

ちらちらと、ソファをみていたから、状況は把握していたつもりだった。

二男が小さなおせんべいのカケラをあげたのもみえたけど、あれくらいなら口の中で溶けるから大丈夫かな、とタカをくくった。


ひと段落してスマホを置き、2人のもとに向かう。

すると、えーん!と三男が泣きながら、私の足にからまってきた。ちょっと、いつもより激しい泣き方だった。

そろそろ、朝寝の時間だから眠いのかな?なんて、のんきに思い、三男を抱っこしようとした。

次の瞬間、三男が吐いた。

うぇっうぇっと、まだえづいている。

え?え?どうした?

どくん!と心臓が鳴って、とっさに

赤ちゃんせんべいがのどにつまった!?

と思った。

その後、2回ほど吐いて、さらに只事ではないと感じた。

すぐに、口の中に指をいれて、のどの方に何かないか探る。何も感じない。

喉の嘔吐ポイントをさわられたからか、またうぇーっとえづいた。

頭を下に向け、ドンドンと強めに背中をたたいたけれど、何も出てこない。

二男に聞いても、要領を得ない。

「おせんべすこしたべちゃったかも…」

と小さい声で言った。


…どうしよう…!!!

息が止まるかもしれない。

そんな恐怖から、全身にどっと汗がにじむ。

少しの時間、三男を抱っこしておろおろと部屋の中をぐるぐるした。


これは、だめだ。

まだえづき続ける三男を抱っこし、病院に行こうと決心した。

徒歩5分のところに、かかりつけの小児科がある。

「さんちゃん大変だから、いこう!」

そう言うと、いつもなら予測外の出来事で「いやー!」を連発する二男が素直にうなずき、サンダルをはいた。

私はみんなの保険証の入ったポーチをひっつかみ、抱っこ紐もせずに二男と三男を連れて家をでた。


走ってる間にも、三男は泣きながらうぇうぇ言っている。かわいそうで涙がでる。

…そして、なんとかたどりついた小児科は、休診日だった…。

そうだ、今日は定休日だった…。

通い慣れた小児科、定休日は頭に叩き込んであるはずなのに、そんなことにさえ頭が回らない。

少し離れたところに、もうひとつ小児科がある。そこに、車で行くしかない。

家まで戻る途中、少し様子が落ち着いたので、もしかして大丈夫かも?と思った。赤ちゃんせんべいが、やっと溶けたのかもしれない。

だけど、家に戻るとまた泣き、うぇうぇし出したので、やはり心配で少し離れた小児科へ行くことに。


二男を車に乗せると、神妙な面持ちでいつもよりスムーズにチャイルドシートにも乗ってくれた。二男が不安にならないように声をかけたいけれど、思いつかない。

車が動き出すと、三男が泣きやんで静かになった。この状況で静かなのも不安をかきたてる。

後部座席の次男に、

「さんちゃん、大丈夫?」

と聞きながら、車を走らせる。

焦っちゃいけない、と思えば思うほど、ドキドキしていく。とにかく車の運転に集中することにした。


車なら5分くらいの距離なのに、ものすごく遠い気がした。駐車場に車を停め、いったん降りて後部座席のスライドドアをあけ、三男の顔をのぞきこむ。

…三男は静かに寝ていた。

ほんとに…寝てる?

不安になって、胸が上下するのも確かめた。


すると、二男がひとこと、

「さんちゃんのくちからなんかでてる!」

…それは、赤ちゃんせんべいの袋の切れ端だった。

その先っちょが、三男の口から少しだけ顔を出し、呼吸と一緒にわずかにピラピラしている。

これだ…。

原因は、この切れ端だったんだ。

この切れ端が、三男のノドのどのあたりまでいっていたからはわからない。けど、今は切れ端がノドの、吐きそうになるあの部分からは離れていることは確かだった。赤ちゃんせんべい自体の影響も、今となっては知りようもない。

三男は落ち着いてスヤスヤ眠っているので、とりあえず大丈夫だろうと思い、様子をみることにした。


… 一気に、脱力。

まだ、鼓動が速い。緊張しすぎて頭と喉が痛い。涙がでそうだった。

「じろちゃん(二男のこと)、かっかごめんね、ちゃんとみてあげられなくて」

「じろちゃんのせいだ…」

「ちがうよ、かっかが1番悪かった」

「…じゃあ、ふたりのせいだね」

「う、うん…これから気をつけようね」

そんな会話を、したと思う。

最近いつも、都合が悪いことがあれば「かっかのせいだ!」と怒る二男なのに、めずらしくしゅんとして「自分のせいだ」とうつむいていた。

そのことが、さらに私の気持ちを落ち込ませた。

ひとまず、そこからは三男の体調が悪くなることはなく、大事には至らずすんだ。

その日は疲れてしまったので、3人でゆっくり過ごした。


∞∞∞∞∞


実は上2人が赤ちゃんの時、こんなに激しく嘔吐したことはなく、3人目にして初めて。

上2人の小さいおもちゃ、折り紙、広告など、気をつけていても床に落ちているときがあり、ダメなものほど三男は大好きで、ぐいぐいと近づいていく。

危ないなぁと、注意しているつもりだった。


今回の体験はまさに、子育てにおけるヒヤリ・ハットだったと思う。

私は薬学系の大学でこの言葉を学んだ。現在は直接患者さんに接する仕事ではないが、医療現場におけるヒヤリ・ハットについてはよく認識している。

ヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)
患者に健康被害が発生することはなかったが、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事。患者への薬剤交付前か交付後か、患者が服用に至る前か後かは問わない。
日本薬剤師会ホームページより

医療現場だけではなく、工事現場や工場、介護、保育の現場などの危険を伴う職場などでも、事故を未然に防ぐために取り入れられている概念である。

そしてこれは、小さな子どもの命を守りつつ過ごす場=家庭における育児においても、もちろん例外なくあてはまる。

ヒヤリハット事例と、実際に起きた重大な事故については、よく「氷山の一角」に例えられる。

あのタイタニックもぶつかった氷山は、海上に出ている部分はほんのごく一部。

水面下にはその何百倍も大きな氷のかたまりが潜んでいる。

それと同じように、実際に起きた事故の裏には、実は一歩間違えば大事にいたるような事例が隠されているという。

ハインリッヒの法則というのがあり、1つの重大な事故の下には、29件の軽微な事故が、さらにその下には300件のヒヤリハットが隠れているそうだ。

ここからいえるのは、氷山のうち海面にでている部分にぶつかるまえに、まだ海面にでていない数多くの事例を把握し、予防に努めるのが重要だということ。


私が今回、勇気をだしてこのnoteを書いた理由もここにある。

もし、おせんべいの袋の切れ端を、そんなに危なくないと思っている方がいたとしたら、この記事を読むことで擬似体験し、その危険性を伝えられるかもしれない。

これを読んで、なんて無責任な母親だろうと怒りを感じる方もいらっしゃるかもしれない。

私の注意が足りなかったのは本当だし、そこにはとても責任を感じて深く反省している。

長男、二男、そして夫にも、せんべいや、その他のビニール袋の切れ端やはいかに危ないかを伝えた。

そして、私ひとりでは防ぎきれないので、みんなで協力してほしいとお願いした。

その後、子どもたちは以前よりも危ないものを床に置かなくなったし、置いてあっても「片付けて!」と言われるとすばやく反応して片付けてくれるようになった。


…だから、あの、できれば、ものすごく強いお叱りは、悲しくなってしまうのでご遠慮いただけますと幸いです…。豆腐メンタルですみません。

「注意してればよかったのに!」という過去ではなく、みんなで危ない事例について情報共有し、みんなで防いでいくという未来の方を向きたい。

そうやって情報共有しやすいおだやかな環境があることで、減らせる事故があるのではないかと強く願う。


あと、疲れていると注意散漫になるので、適度に休むことは本当に大事だと実感した。この一件の後、自分の疲れ具合を嫌でも実感した私は、夫に子どもたちをみていてもらい、3時間ほど好きなことをした。

これだけでも、予想以上に気持ちや体調がよくなったのには驚いた。

いつも子どもとずーっと一緒にいるひと(ママが多いかもだけど、最近は育休とってるパパもいるので…)を休ませることは、不慮の事故から子どもを守ることにもつながる。

今回はビニールなので、窒息の危険があったわけだが、タバコや医薬品類、洗剤や電池など、飲み込むことで全身や消化器に症状がでて、最悪死にいたるものもある。

誤飲だけじゃなく、高いところからの転落や、交通事故…大人にとっては何気ない日常でも、小さな子どもにとっては様々な危険がひそんでいる。


…って、子どもにせんべいの袋を誤飲させてしまい、えらそうに言えないのですが。

最後まで読んでくださった危篤なあなたにとって、この記事がいま一度、お子さんの身の回りに、手の届くところに、危険なものがないか確認していただく機会になれば…と思います。

長々と書いてしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました…!


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