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「コンビニ人間」村田紗耶香・・・文学を読んだという満足感!面白かった♡
芥川賞を受賞したからといってすぐに手に取ることはほとんどない。たまたま病院の売店で文芸春秋が目に入ったから・・・。
しかし、この偶然に今心から感謝している。この満たされた気分は久しぶりだから。
書評などは一切読まないで、取り敢えず読む。すると、最初からどんどん引き込まれていく自分に気付く。時折吹き出しそうになる。続きが待ち遠しくてどんどん読める。時々付箋を貼りたくなる。あっという間に読めて「結構なお味でした。ご馳走様でしたm(__)m」気分で終わった!
何故こんなに満足できたのか?その理由を理路整然と分析できればいいのだが、インプットは得意でもアウトプットには自信がない。思いつくことをメモしてみる。後で審査講評読んで、同じようなことをうまく言っている先生の意見に賛成する・・・(笑)
★主人公の女性が面白い。36歳独身コンビニ・バイト。何を以て普通とするのか分からないが、社会の大方の人々とは異質な感受性をもっているため、それを正直に言動に表すとかなり引かれる。それを治そうと長年家族は悩んできた。この「治す」という思考自体が笑える。
★主人公女性は所謂変人かもしれないが、彼女の行動規範が彼女なりに筋が通っており、読んでいて感心してしまうと同時に「そう来たか!」と笑ってしまう。(地の文は彼女自身、一人称の語り)
「いつもこんなものを食べているんですか?」
「こんなもの?」
「料理じゃないじゃないですか」
「私は食材に火を通して食べます。特に味は必要ないのですが、塩分が欲しくなると醤油をかけます」
丁寧に説明したが、白羽さんには理解ができないようだった。
★文章表現が秀逸・・・だとわたしは感じた。そういう文章に出会うと震えがくる。本を読むときに文章が素敵だと読む気が倍増!(文学を手段として何かを訴えようとか・・そのような大げさなものはなくてもいいくらい。)
何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光が宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸かり、膜が張っている場合もある。
★コンビニには時折お世話になるが、コンビニの仕事でどのような心配りがなされているのかあまり考えたこともなく、いろいろと興味深かった。これは実際にコンビニで働いている著者でなければ分からないことだ。
どんな職種でも心配りや技術は大切であり、その点では主人公は変人どころか立派なプロフェッショナルだ。周囲に振り回されかけたが、やっぱり正しい居場所で生きることができて希望がもてるラストだった。