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Lilian J. Braun「猫はバナナの皮をむく」
古書の安価コーナーで見つけたハヤカワ・ミステリ文庫。パッと手に取ったのは猫だからですよ~、どうせ(笑)。病院の待ち時間用。
「ニャオオン!」ココは返事をした。彼の語彙は限られていたが、抑揚で変化をつけた。ひとつの言葉で賛成、謝罪、要求、憤慨、警告になった。
猫好きならばにんまりしてしまうフレーズが所々に・・・。そしてどうやら「本屋猫」という猫の職業が認知されているらしいのね、その町では。本屋猫ってのは、農家の納屋でネズミの番をする納屋猫のように、古本屋で本をネズミに齧られないように番をしたり、ふさふさした尻尾で埃を払ったりするんだよ。もうそれだけでもたまらない!
なんとこれで猫シリーズ27作めだって!全然知らない作家さんだったけど偶然の出会いもいいものだね。
ミステリーといっても所謂ハラハラどきどき刺激は皆無だから、そういうことを期待していると物足りないかもしれないけれど、翻訳ものならではの雰囲気があって楽しめた。
アメリカの田舎町を舞台に、元新聞記者のおっさんと古書店を開くことになったガールフレンドのおばちゃま、そして個性豊かなにゃんこたちが主要な登場人(?)物なのだ。
事件は起きるし死人も出るけど、陰惨な場面は皆無。
刺激強めのスパイシーな作品に慣れきっている身には、まるでオートミールのような世界だったが、たまにはいいものだなぁと思った。
まあ日本でいえば平成じゃなくて昭和の香りとでも言おうか。横溝正史かな。いや・・・あのおどろおどろしさはないね(笑)
田舎町の歴史あるお屋敷を巡るミステリー。由緒ある一族最後の一人、女当主の死。おっちゃんは探偵ではなくて町の新聞のコラムニストだから、ばりばり事件を解決するという訳でもないんだけど、彼と彼の飼い猫たちを中心に、ユーモアを交えて物語は進む。ラストも謎はまだ残り、余韻を残して終わるから本当に雰囲気を楽しむミステリーなのだろうね。
表題についてだけど、主人公のコラムニストおっさんの愛猫ココは、今回バナナの皮で気に入らない人物を罠にかけたんだよね。皮は剥いていない!
いけないことをする人物を嗅ぎ分ける能力を持ったシャム猫なのだ。探偵はココなのかもしれない。
いきなり27作めから読むというのはどうなんだろうね。
機会があったら、第一作「猫は殺しをかぎつける」を読んでみたいものだ。