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夢野久作「ドグラ・マグラ」

無事に娑婆に帰ってきましたよ。
読み始めたら止まらなくて、久しぶりに一気に読んだ感じがする。

「ドグラ・マグラ」は且て気になる本だったが、長い間手に取ることはなかった。昔、わたしの魂の片割れだった人が「面白いよ」と言っていたから、ぱらぱらと開いてみたけれど文体が気に入らなかったから・・・。
そしてその片割れは、今年自ら命を絶ってしまった。
しばらく情緒不安定だったわたし。

さて、最近思いがけずこの本のことを思い出す機会があり、今読むべきだし、読まずにいられないという強い衝動に突き動かされた。

夢野久作は名前を知っていただけ。「ドグラ・マグラ」については「奇書」とか「読んだら正気でいられない」とかいう評判を聞くくらいで、なんら予備知識をもっていなかった。また今回読むにあたっても真っさらな状態で読みたかったから特にググるということもなく読んでみることにした。

文体が好きでないと言ったのは、古典的で耽美的な文体を期待していたからだ。基本はかなりくだけた口語体。書かれたのは昭和初期だろうか。時代背景を考えると、かなり新しい雰囲気だったろう。しかし挿入されているいくつかの部分は厳めしい文語体(論文や資料の引用だから当然だけど)。ある部分などは真言宗のお経を唄っているかのようだし(いや、実際唄っていたことになっているが)、かなり多彩な印象を受ける。

上巻を読んでいるときに「これは、はたして文学なのだろうか」と疑問をもった。何やら説明文とかエッセイとか読んでいるみたいだから。しかし個人的にはその内容が大変興味深いものだったし、実は同様のことを考えていたことがあったので、ちょっとした驚きだった。ある件なんぞ、思わず吹き出して声を出して笑ってしまったし・・・。
ひょっとしてこれは「推理サスペンス」小説なのかもね・・・と気が付くのは下巻に入ってからかな。謎解きに引き込まれてぐいぐい読めてしまう。
終わり方は余韻があって悪くなかった。

読み終わって謎が解けた。
わたしの魂の片割れだった人がこの本に惹かれた理由が・・・。
全体を貫くテーマと言おうか。それだね。

でも、わたしは生きることを楽しむことにするよ。
いつかそちらへ行く日まで。