眠れない夜には・・・Andrei Tarkovsky "The Sacrifice""NOSTALGHIA"
印象的だったのはIカットが非常に長いこと。そういう撮り方をロングショットと言うらしい。室内だと部屋の一辺の中央にカメラがあって、まるで舞台鑑賞をしているように感じる。そしてあらゆるものが美しく配置され無駄がない。お洒落インテリア雑誌みたいな画面だ。そして女性の容姿も衣装もエレガントだ。映像美で知られているということも後で知った。
ゆったりと美しい画面が流れて、哲学的な言葉が散りばめられていく。
主人公の初老の学者は、自分が大切にしているものたちを捧げることで神に家族を救ってもらおうと祈り続ける。折しも核戦争が勃発したという設定。
最後のシーン、マタイ受難曲が流れる。枯れた一本の松に水をやる少年。話すことができなかった彼は父親の言いつけを守り松の再生を信じて水やりをしてつぶやく。
「はじめにことばありき。」「なぜなの、パパ。」
素敵なラストだ。
ノスタルジアで共通しているのは、祈り続ける主人公だ。キリスト教世界に住んでいないと分からない感覚。それも、ロシアだからギリシャ正教。
しかしこの世の終末から救われたいとか救いたいと祈る気持ちは分かる気がする。
疲れがたまった終末(週末やろっ!)の日中に観たら不覚にも何回も居眠りしてしまい、難解さも相まって、繰り返して鑑賞しないと分からなくなってしまった。
名画であるが、できることなら眠れない夜に鑑賞することをお勧めする。