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2015年8月の記事一覧

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

閉め切られた襖の向こうから聞こえて来るのは、あからさまに手の抜かれた坊主の読経だ。

本谷有希子の作品を初めて読んでみた。この人は自らの劇団を主宰する劇作家でもあるそうだ。
書き出しはこんな感じ。しかし読んでいて引っかかる文章表現が多く、イメージを明確にするのによい意味で手間がかかる文体だと感じた。

もう誰も思い出せないほど昔からこの家で活動する扇風機の生温かい送風を受け、彼女の短い黒髪、制服の

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Game of Thrones

海外ドラマが好きな私の夏休みはこれだった。壮大なファンタジー「Game of Thrones」なんとなく中世ヨーロッパな感じがする。イギリス風かな?架空の王国が舞台だが、歴史ドラマのような重厚さとリアルさで迫ってくる。
ファンタジーなら何でも好きという訳ではないが。これはどっぷりと浸かってしまった。原作は未完だそうだから、続きを気長に待つことにしたい。調べたら装丁のイラストがアニメっぽくてちょっと
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久々に「ご馳走様でした」

1989年公開のフランス映画。ミュウ=ミュウ(ファッションブランドじゃない)主演。観終わって今、上質な映画による満足感で指先まで満たされている。ボードレール、デュラス、トルストイ、サド・・・様々な本を朗読する場面の、お洒落で官能的でユーモラスなこと!依頼主はちょっと個性的な人々ばかり。背景、インテリアと衣装が構成する画面の色彩配分に目を奪われる。また、朗読された作品を読み返したくもなった。こういう もっとみる

Danmark /USA

Danmark /USA

表紙画像は初夏の誰もいない海。正面遠く海に張り出してぼんやりと見えるのは某原発。点滅している明かりが不気味だった。

ところで、人の一面をもって存在を全否定するようなことを私は好まないし、そういうことをする輩は苦手だ。百年の恋も一瞬で冷めるくらい。まあね、苦手と言っても、そういう人は大抵自ら去っていくので捨て台詞さえ聞き流せばいいのだ。
お互いに「あなたとわたし、ここは同じけど、ここは違うね」と冷

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