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無茶ぶりが過ぎる!回し手紙2

1の続き!(私パート)

天馬さん大ピンチ!!


※アメリカのホームコメディーで

ジャッキー(ハイティーン女子)が口走る程度の下ネタを含みます

が、読んで欲しい!!



『天国か地獄か?それは貴方次第。男4人の湯煙グルメ旅』


新幹線を下りて、特急に乗り換えて、1時間チョイ。
目的の「砂風呂」がある別府駅へ、無事に到着した。ついさっきまでグッスリ寝ていたうちの頼人君も、無事に覚醒した。
頼人君は電車を降りた途端に、
「お土産を買って来ます」
と宣言し、セージの手を握って歩き出した。
いきなり巻き込まれたセージは
「はわわ!? お土産って、もう!? 了介さーーーーん!」
と困ったような、ちょっと嬉しいような悲鳴を上げて、一方的で強引な事でおなじみのうちの頼人に連れ去られていった。
2人が向かった先は駅ナカのコンビニだ。
頼人はご当地ポテチと菓子パン目当てかな?いいな。九州限定のポテチには俺も興味がある。
が、もっと興味があるのは、メチャメチャそわそわしているのに、決して2人の後に続かないリョーさんの様子だ。立ち尽くすリョーさんを1人置いて、俺までコンビニには行けない。
俺はリョーさんの隣に立って、頼人にラインをした。「九州限定ポテチがあったら、俺らの分も頼む。旅館で一緒に食いたい」と送ったら、一瞬で既読になった。そして怒涛のごとくハートまみれのラインスタンプが押し寄せて来た。いつも通りの頼人だ。テレビ水戸黄門くらい、いつも通りでほっとする。
ふとスマホから目を上げると、リョーさんが完全にたそがれていた。
俺は心配になって、
「荷物は俺が見てますから、よかったらコンビニ行って下さいよ。ね? セージも待ってるんじゃないですか?」
とリョーさんに声を掛けた。
リョーさんは姿勢よく立ったまま、精悍な顔を曇らせて
「みなちゃんはいいな……。置いてかれたのに、余裕があって……」
と言い出してしまった。
「余裕? イヤ、楽しみですね。きっと頼人はすぐにコンビニから出て来て、いつも通りアレコレ言いながら、俺に駆け寄って来ますから。んで、俺にへばりついて、とにかくご褒美ご褒美って騒ぎますよ。見てて下さい。ホントにそうなりますから」
「ここ、駅だぞ? 人通りもすんごい。みなちゃんは、恥ずかしくないのか?」
「いえ。俺と頼人はイタリア人ですから。イタリア人には、このぐらいフツーですよ」
「日本人だよな!?」
「いつ日本人だって思ったんです?イタリア人ですよ。パスタが好きだし」
「いやいや…外国籍で教頭になるのは、相当ハードル高いぞ。けど、おれも、そう思えばいいのか……?」
リョーさんは真面目だから、真正面から俺の話を受け止めて、真剣に検討してくれている。腕まで組んで、よーく考えている。いかにも探偵だな。
いや、待てよ。コイツはチャンスじゃないか?
この後、頼人は俺に飛びついてベタベタして来るだろ?それにつられてセージまで、リョーさんに引っ付いてベタつくかも知れない。
その時、リョーさんが新幹線の中みたいに「2人になってから」と言い出してしまったら、セージがカワイソウだ。リョーさんも結局、気の毒だ。
だから、リョーさんをイタリア人だと思いこませて、未来を変えてしまえ!
「……。リョーさんは彫りも深いし、目も真っ黒じゃない。むしろ、日本人ってのが思い込みじゃないですかね?」
「え!? まさか、いや…」
「リョーさんは伊達男だし、イタリアの要素の方が多くないですか? パスタが好きでしょ? 前に焼いてくれたクッキーだってホラ、イタリアの2度焼きクッキーでしたっけ?」
「ビスコッティ。うん、確かにおれは……イタリア料理は作れる」
「作れるどころかメチャメチャ美味い!! イタリア料理を作るんだから、逆に俺らより全然イタリア人でしょ。イタリア人でもないのに、家で生パスタやらピザやら作って食べるなんてありえます? あとホラ、パンの上に具がチョイっと乗ってるヤツとか…」
「ブルスケッタ。そうか! 逆に、家で塩じゃけを焼いて白米炊いて食べてるイタリア人って、ほとんど日本人だよな!?」
「その通りです。流石はリョーさんだ。スバラシイ!!!」
「イタリア人なら、あいさつのハグとキスはしないとな。しないなんて、損だ」
「スバラシイ!!! なんて日本語が上手いイタリア人なんだ!」
「よーーし。おれ達4人はイタリア人の旅行グループだ! 別府を選ぶなんて渋いなあ」
「日本通ですね!」
やったぞ!リョーさんがちょっと天然なおかげで、俺の計略は見事に成功だ!
嬉しくなって、リョーさんと2人で
「チャオ! 日本」
と声を上げ、バンザイをした。
その瞬間!
まさにその一瞬のスキをついて、いつの間にかコンビニを出ていたらしい頼人が、横から俺に飛びついて来た。
「湊! コンドームも買った♡」
コンビニ袋3つを振り子の原理で俺に叩きつけながら、とんでもないワードを頼人はブチかまして来た!ここ、駅だぞ!?俺は頼人を抱きとめながら、
「イタリア人の範疇を越えてる!!」
深刻な悲鳴を上げたが、頼人はお構いなしだ。
「ご褒美は♡ 湊の全て♡」
俺にへばりついてゴニョゴニョ動きながら、ゴキゲンで自己主張を続けている。そんな頼人の背中に、セージがセミみたいに留まって、
「おれも! 買いました!!!」
と突然叫んだが、その報告を頼人の背中でする意味は何なんだ!?
団子三兄弟になった俺らを、呆然と見ていたリョーさんが、息を呑んでから
「せ、征治。わかった。まず旅館にチェックインして、荷物を置いてな? 軽く汗を流す……浴衣に着替えて……砂風呂は歩いてすぐ、だから……うん……」
急に添乗員さんのように今後の予定を説明し始めた。
リョーさんがいっぱいいっぱいだ!
「セージ! 早くリョーさんのところへ! 俺達の事はいい! リョーさんを」
頼む!!
 と俺が懇願するのにかぶせて、頼人が低い声で冷静に
「了介。浴衣でエッチをする、フリータイムはある?」
連続でブチかまして来やがった!!
「なんだよ!? そのフリータイムは!? ダメだろ! もう、これ以上リョーさんを追い詰めたらダメだ! セージ! お前も頼人に言ってやってくれ!」
「でも、あの、そのフリータイムは、おれもすごく気になって……いろいろ……」
「ジーザス!!」
 俺はイタリア人らしく神の名を叫んでから、エイっとセージをリョーさんの方へ押した。
 すかさずリョーさんはセージの手を掴んで、引き寄せて
「……イタリア人の範疇を越えてる!!」
俺と全く同じ悲鳴を上げた。


頼人さんにコンビニへ引きずり込まれた、おれ。ため息が止まらない。
それにつられて、頼人さんまでため息をつく。けど、頼人さんはおれと違ってため息まで色っぽい。
頼人さんが持っている緑色のカゴは、もう満杯だ。ポテチや菓子パンやお弁当や飲み物で、今にもあふれそうなぐらい。生活感一杯の買い物をしていても、お色気むんむんの頼人さん。いいな。おれにも分けてほしいな。
「はああ~~。頼人さん…いーなあ~。いーなあー! うらやましいなあ~~」
きっと頼人さんはものすごく色気があるから、いっぱい甘えても、湊さんも嫌な顔1つしないんじゃないかな?だからおれじゃ、了介さんに甘えちゃダメだよな……。頼人さんみたいに色気、ないし。
そう思ってガッカリしたおれは、なんとなく雑貨の棚の前でしゃがみ込んだ。別にいらないけど、店内で何もしていないのは変かなと思って、緑のフタのシェービングフォームを手に取ってみる。
「俺が征治にベタベタしてあげる。ね? それで了介も。征治にベタベタしようと思うから」
頼人さんは優しい声でそう言いながら、おれの隣へしゃがんでくれた。顔が近い…。キレイな顔が近すぎて、シェービングフォームを持つ手が震えた。
「けど……おれ、おれ、頼人さんと違って、色気足りてないから……」
「征治は可愛い」
「え? あの、可愛いなんて、もったいないです!」
「征治も。俺に甘えて? 2人でイチャイチャすれば。了介も慌てて。人前でも愛してくれるかも。……違う?」
震えるおれの手に、頼人さんの白くて細い指が乗る。シェービングフォームを手の中から取って、緑のカゴに入れた。ほんとにおれと同じ男の手かな!?あまりの透明感に、息を呑んだ。
あ、焦っちゃダメだ。ちゃんと返事をしなくちゃ!シェービングフォームは見てただけですって伝えなくちゃ!
「あ、あの!」
「見せつけて。可愛らしい征治の魅力を。それで大丈夫だから。困らないで……征治」
「そ、そう、でしょう、か……? あの、でも」
おれの目を見て話してくれていた頼人さんが、ふいに視線を棚へ向けた。しゃがんだまま、四角い箱にキレイな手を伸ばす。
「コンドーム。自分の」
キレイな手が、思いっきりコンドームの白い箱をつまんでいる。こんなキレイな人でも、自分でコンドームを買うんだ!?レジで絶対二度見されると思うけど、恥ずかしくないのかな?通販しないんだ…!
え?
それより、今、頼人さんは「自分の」って言った?
あれ?あれれ!?おれは今まで勝手に湊さんが頼人さんを抱いていて…と思い込んでたけど、まさか、逆!!?
えーーー!!!!!?
了介さんよりむきむきな湊さんを、こんなに美しくて色気たっぷりの頼人さんが!!?
確認したいけど、コンビニの中でも堂々と返事をするだろう頼人さんが怖くて、聞けない。
了介さんなら湊さんと仲良しだから、詳しい事を知っているかな?後で聞いてみようかな。もしかして、頼人さんが湊さんを抱く側だから、頼人さんはこんなに強気なのかな!?え、まさか、おれも、了介さんにそうすれば……!?
「征治も買う?」
「…………か、買います!!!! 了介さんと、あとおれの分を!! あと、その、あと!」
「ここは。俺の奢り」
頼人さんは、サイズ違いのコンドームを3つカゴに入れて、立ち上がった。つられて立ったおれの手を引いて、レジに向かう。
おれは頼人さんの後ろからそっとカゴに手を入れて、シェービングフォームを取り出し、棚に戻した。  
いつの間にか、おれのため息は止んでいた。



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