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【少女小説】最短1週間でキレイになる方法 最終話?

よかったら
第1話から読んでね✨ヽ(*^ω^*)ノ✨




『最短1週間でキレイになる方法』 ⑥


 ゴミ箱男と出会った日から毎日毎日、夜になると雨が降る。今週はずっと夜だけ雨みたい。
 
 まさかこの雨の中、ゴミ箱男はまたゴミ箱に入って震えていたりしないよね?ヒユーゴーが田淵さんといるから、大丈夫なはずよね?
    なんてまた考えている。
    ……結局あれは何だったんだろう?
    私は何をしていたんだろう?
 私、ヒユーゴーの体に、ヒユーゴーとヴィクトールがいるなんて話を信じて、ヴィクトール専用の体を作ろうなんて話を信じて、ヒユーゴーにはサイズが大きすぎる上に色も形も派手な服なんか買ったりして、本当に何をしてたんだろう……?
 女の子らしくなるために貯めたバイト代も、ほぼ使い果たしちゃった。男の子の服ってあんなに値が張るんだね。知らなかった。
    でも、いくら服を買ったって、着てくれるヴィクトールは存在しない。ヒユーゴーがお芝居をしているだけのはず。
    そうだよね?
    でも…….真剣に必死に愛を込めて願ったら、もしかしたら、願いは本当に叶うかも……?
    なんて、まさか、そんなはず、ある訳ない。19歳にもなって何を考えているんだろう?ディズニープリンセスじゃないんだから。私は……どこにでもいる、普通よりちょい下のランクの、きれいじゃない、ただの女の子なんだから。

「みんな……夢だったのかな……?」

 家の居間で、床に座ってテレビを見ている愛の背中に、なんとなく今の気持ちを投げかけてみた。
 特に返事を期待していた訳じゃないのに、愛はわざわざ振り向いて、可愛くニッコリ笑って、首を横に振ってくれた。
「……ありがとう。ねえ……愛? 日曜にさ……何で私に電話を掛けて来たの? あの時、ちゃんと診察は受けたの? わざわざ日曜に病院へ行ったけど、別に話せるようにもなってないし……?    あそこで私を呼んだのって……何か、意味があったの? 愛は不思議な子じゃない?    なにかあるんじゃないかって気がして……」
 愛はニコニコ、ニコニコ笑って、また首を横に振った。「別に電話したのに意味なんてないし、私は不思議じゃないよ」って言いたそうだけど……ものすごくニコニコしているのが、逆に怪しい。
「ねえ、ヴィクトールとヒユーゴーって知ってる?」
 思い切って尋ねてみたら、愛は、サンタクロースなんて本当はいないんだよって初めて言われた子くらいの真顔で、ゆっくりと、頭を左右に振った。
 この顔は……そもそも最初から知ってる!!?
「え!?    まさか知ってて、私と2人を会わせたの!? どういう事!? 私のために? ヴィクトールのために? ヒユーゴーのために? ま、まさか、田淵さんのためじゃ……?」
 田淵さんと言った瞬間、愛は深刻に訝しむ顔をした。「なんであの顎ヒゲのために私が……?」って顔だよね!!?
「その顔って、田淵さんを知ってる上に、田淵さんのためには何もしたくないと思ってる!? 逆に、ヴィクトールとヒユーゴーのためなら、何かするって顔だよね!? どういう事!? ちょっと不思議すぎないかな!!?」
 愛は、「まあまあ、そんなそんな」、そんな風に言いたそうな気楽な笑顔を浮かべて、サッとテレビに視線を戻した。
    ……もしかして、私たちみんな、愛の思惑通りに動かされてる!?
    な、何の為に……!!?
    あまりにも気になって、テレビを見ている愛の横に駆け寄って、勢いよく隣に座って、薄い肩を思いっきりゆさぶった。
「ねえ、どうしてなの!? ヴィクトールは、ヴィクトールは、本当に、自分の体を作ってもらえるの!? 私のやった事って無駄じゃないの!? 愛!! ねえ、愛!? そもそもヴィクトールが出会ってすぐに、俺より愛ちゃんの方が上とか言って来たんですけど!?    それって愛の方が断然願いを叶えられるって意味だったりしないかな!?     ねえ愛!?     こっちを向きなさい!! 愛!!    愛~~!!!!?」
 
 
 今日は慣れないシフォン生地のワンピースにヒールで授業を受けて、先週以上に落ち着かなかった。もう本当に座っている時の足のやり場が分からなくて、授業中ずっと足をソワソワ動かしていた。
 スカートを履いたからって、またヴィクトールが来てくれる保証はないんだけど……まあ、一応?あのアホ、話の途中で「体が必要すぎる〜!!」って叫んで、一目散に走って行ったからね。何の約束も出来なかったんだ。
   でもほら、私には愛のご加護?があるかも知れないから?あまりにも愛が何も吐かずにニコニコし続けるから、ちょっと激しくゆすりすぎちゃったけど……まだあるはずよね?愛のご加護?は……?いや、愛のご加護って何?そんなのある?
 あれこれ考え事をしてるのに、長くて長くて全く時間が進まない授業がやっと終わって、ほっとしていたら、教室の外から先週以上のどよめき声がした。
 まただ……!
    また、教室を出てすぐの廊下に、フランス人形みたいに綺麗な顔をした金色のロングヘアのお兄さんが来てたりするの……!?
    笑うとゲスくて、しゃべるとアホだからガッカリの、綺麗なゴミ箱男が!!
 そうだよね!?新しい体をもらえなくても、この時間にここへ来れば、私と会えるのは分かってるんだもんね!?
    期待で胸がパンパンになったけど、期待が破れてパーンと弾けるのが怖すぎて、わざとため息をつきながらノロノロノロノロ、トートバッグに荷物を詰めて、なるべくダラダラダラダラ、廊下へ出た。
 廊下には、教室から出た人たちが移動せずに溜まっていて、その輪の中心には跪くギャル男君が……
    ギャル男君が!?
    ギャル男君がいた!!!
    黒髪で、肌が黒くて、細面の三白眼の、いかにもなギャル男君。跪いていても、タカアシガニっぽく体高がある。細身で逃げ足が速そうな体に、緑色のチェックのシャツと、色の薄い細身のジーンズを着て、足元はクロックス。
 思いっきり買った覚えがある服装で一輪の花を差し出して来たけど、この花って大学の生垣からむしり取ったヤツじゃないでしょうね?ものすごく見覚えがあるんですけど……?
「世界一の美女様!!!!!」
 ダミ声で三白眼のギャル男君が、真剣すぎて余計怖い目つきで私を見て、花をグイグイ差し出して来た!
 うん……分かる……分かるよ……?
    ヴィクトールなんでしょ?
    ゴミ箱男を卒業して、自分の体が貰えたんだよね?ヒユーゴーの体には大きすぎた服がピッタリで、すごく似合ってるよ。
 うん、それはすごく良かったと思うし、私も心から、心から!本当に心の底から!!嬉しいんだけど!!!正直、ヴィクトールなんてこの世に存在しないかもって疑ったりもしたけど!!信じてみて良かったなっていう喜びで!!一杯!!なんだけど!!!
 ……周りで、学生も先生も、固唾をのんで見守りすぎじゃない!!?
    気持ちは分かるけど!!
    先週、同じ授業の後にフランス人形みたいなイケメンに同じ事をされた後のこれだから、気持ちは分かるけどね!?視線が刺さって刺さって痛い!!!
 もうとにかく早くこの場から逃れたくて、ひったくるようにギャル男君の茶色くてカニっぽい手から、花を奪った。
 途端に、割れんばかりの拍手が廊下に響き渡った。
 ええっ!?どういう事!?
 先週、金髪のフランス人形君から花を貰った時は、もっとまばらな拍手だったと思うんだけど……!?
 拍手の中、ギャル男君に手を引かれて、つんのめりながら廊下を歩き出した。廊下を曲がっても、まだ大きな拍手が聞こえて来る……!
    ……先週の軽く3万倍は恥ずかしい……
    来週からもうこの授業に出たくないよ。必修だけど、来年に回す方法がないか、学生課で相談してみよう……。
    本当に、もう……!
「……ツラすぎる……」
「だよなあ!? 1週間も俺がいなくて、ほんっとカワイソウ!!     あっ、俺が誰か分かるか?」
「ヴィクトールに決まってるでしょうが! 自分の体、すごく似合ってるよ」
「ウヘヘヘッ♡    だろおっ!?    君みたいな美しい見た目だろお!? すんげえキレイだろっ!!    よっ!!    世界一!!!」
 そう言ってヴィクトールは、いきなり廊下で立ち止まった。そして私の手を握ったまま、社交ダンス風にクルリと回転して見せた。
 背が高くて細長い、タカアシガニ、地黒、黒目が小さいキツネ目、短い黒髪……あれえ!?私だ!?言われて見れば私だ!!確かに私だ!!
 どうりで先週より、オーディエンスの拍手が多いはずだよね!?お似合いって事だよね!?私達!?
「い~だろお!? 究極の美だろおおおよおお!!!    このバディ、 この色!!    最強ボディだっちゅーのでありがとうございま〜〜っす!!!」
「ちょ、ちょっと廊下で声が大きいよ!! 静かな場所に移動して話そうか!?」
「ラブホか!?」
「黙れよ!!!!!」
 これ以上このギャル男に喋らせたら、授業どころか大学そのものに恥ずかしくて通えなくなっちゃう!!!
    アホの襟首をつかんで、モーセが何かやったみたいに割れた人混みの真ん中をズンズン歩いて、大学の校門へとにかく急いで向かった。まだ授業があるけど、今日は諦めます!サボります!ごめんなさい!無理です!!
「ア~~レ~~♡ 美女様~~♡」
「うっさい、黙れ!! アホゴミスロットエロ男!」
「それが俺の名前か!」
「違うわ!! アホ!!!」
 
 
 
 お金もないし、大学からラブホに直行なんて冗談じゃない!そんな事のために、学費を払ってもらって進学した訳じゃありませんから!!
 大学から少し歩いた所に、カップルでボートに乗ると別れるので有名な大きい公園があるから、そこで話だけを、話だけを!する事にしよう。それ以上は絶対に嫌。無理。
 街灯が灯った静かな夜の公園でジョギングする人たちに避けられながら、ゴミ箱男の腕を引いて、公園の奥へ奥へズンズン歩いて行った。
 ここって大きくて結構有名な公園なんだけど、池の奥の方には静かなベンチがあるんだ。
 そこなら落ち着いて話も出来るだろうし、のんびり夜の池を眺めたら私の気持ちも少しは落ち着くはず。もう本当にドキドキしちゃって……すごく悪い意味だけじゃなくて、ちょっと良い意味でも……。一刻も早く、マイナスイオンの力を借りないとね。自然から出るマイナスイオンなら、どれだけ浴びてもタダだから。
 そう思ってやって来たベンチには、今日も誰も座っていなかった。
 良かった。今日も座れて。
 来た事ないけど、もし昼間だったら写生するおじさんが座っているかもね?この辺りはボートも来なくて、亀が時々泳いでいて、すごく居心地がいいから。
 そういうヘルシーな雰囲気と全然合っていない、キョロキョロして喫煙所を探しているようにしか見えないギャル男君を、ベンチへ座らせたんだけど……妙にすんなりベンチに収まったよね。この公園に入ってから、一度も大声を上げずに大人しいのも、すっごく怪しい。
    また会えたのは本当に嬉しいけど、どうも怖くて隣には座れないわ。
    疑いの眼差しで見ていたら、ギャル男君は黒い目で私を見返して、ニヤッと笑った。うわあ……ゲスい笑い方と、ギャル男な外見がピッタリ……。
「……人間のいない暗い場所に、俺を連れ込んだな……♡」
「いやいや待ってよ!? 連れ込んでないから!!」
「大自然の中で、俺の新しいキレイな肉体っとと」
 話しながら絶対にチェックのシャツを脱ごうとしていたギャル男君に、鳩の集団が降りて来て、ギャル男君の全身が鳩で埋まっちゃった!!
    思いっきり、鳩の止まり木にされてるよね!?鳩から本日のキャンプ地に選ばれてる!?やっぱりこのアホは植物なの!?
「大丈夫!!?」
「んなあ!!    ハト好きか!?」
「キャアッ!!    好き!? 好き、うん、可愛い……けど……!?」
「昔はウマいウマいって、泣いて喜ばれてな~!!」
「好きってそっちの好き!?」
「美女様が、ハトはカワイイもんだって決めてくれた。うれしいか? あ、眠いか。そっか」
 ……ウソ……。
    この人、自分に乗った鳩の集団と、普通に会話してる……。
 この間までのフランス人形風の見た目なら「天使なのかも?」と思えたけど、今の目つきの悪い地黒のギャル男の見た目で、夜にそんな事されたら意味不明だよ。この人、商売用のクスリに手を出してこうなっちゃったのかなって、怖くなるよ。
    でも……ちょっと、いや結構、いやかなり怖くても、ヴィクトールには、今のギャル男君の身体が似合ってる、かなあ??
    鳩が多すぎてよく見えないけど、まあ、ヒユーゴーの体よりは似合ってるでしょ!
「……あははっ!    ねえ。鳩まみれギャル男クン。ヒユーゴーは田淵さんといるの?」
「タブチサン?」
「トシミチ。トシミチさん!」
「トシミチ〜イ♡    ギャハハハッ♡    俺までトシミチの親にアイサツするギリッギリで、ヒユーゴーから分離してセーーフッ!!」
「……次にヒユーゴーのモノマネをしたら、必ず殺すと書いて必殺のチョップをおみまいするから。2度と真似しないで。2度とね。……つまり、ヒユーゴーはトシミチさんといるんだね?     ヴィクトールの新しい体の身代わりで消えたりしてないんだよね?」
「会うか?」
「えっ!?    会えるの!?   会いたい!」
「おう!    んで、俺の名前は?」
「今!!?    話が急だよ! 希クン」
「のぞむクン?」
「パンドラの箱に最後まで残ったのは、希望だったんだって。希クンがヒユーゴーの中に最後まで残ったのも、きっと希望だったからなんだよ。だから希望の希で、希クン」
「俺が、希望? 俺が……!」
「気に入った?」
「うん!!」
「よかった〜!    それで、ヒユーゴーは?」
「おいお〜〜い。待てよ〜お?    のぞむクンとヒユーゴーは別々だから、予定合わせねーと会えね〜んだわ!   また明日以降なっ!」
「会うかって聞いたのは、そっちでしょ……。ん?    ひょっとして、ただ、言いたかったの?    俺とヒユーゴーは別々だって」
「ウンっ♡    ずっと言いたかった!」
「そっか。だよね。うん……そっか!    じゃあ、改めて……希クン。自分の体を持てて、本当におめでとう!    それに、また会えて、本当に嬉しいよ。私とソックリの体になって、世界一の美とか連呼して来たのには本当に驚いたし、いっそ殴り倒したかったけど……でも、本気でキレイって思ってくれてたんだって……ちょっと、いや……かなり、ドキドキしちゃったかも?    私もまあ……その……キレイじゃない事はないかもって……自分に思わないと、その、希クンに失礼……だったりするかもね!」
「俺と会って1週間でキレイになったな〜!!」
「自分で言う?     なんて、ごめんね。今のツッコミはなし。うん……だよね。ここまでキレイって思ってくれてたら……流石に……色々、見直したよ。色々ね。ありがとう!    それで、えっと、これからどうするの? アテはあるの?    え〜っと……私といてくれたり……する……?」
「スロットで勝てばいいだろ?」
「…………ハア?」
「要は勝てばいいんだろ? 任せとけ!! 願いは叶えられねーが、スロットで食わせてやっから!!」
「黙って聞いてれば、何で生計を立てようとしてるわけ!? 安定して勝てるようになるまで打ち続ける軍資金はどこから出て来るんですかあ!? 鳩は売らないでよ!?    可哀想だから!!」
「トシミチだ!! トシミチにもらう!!」
「もうヒユーゴーじゃないんだから! 貰えないから! 働きなさい!! 働け!! まずとにかく働け!!!」
「働いたら、何してくれんの?」
「ハア!?!?」
「君の名前教えてくれるとかっ♡」
 ええ~~!!!?
    夜の公園で鳩にまみれて、何を言い出してるの!?本当に働く気があるの!?このアホは!?
 信じていいものなの……!?
    ど、どうしようかな……!?


【どうしますか?】

→    名前を教える(働くと信じる)
  教えない

 ※コメント欄にて、どちらのオチが良いかを教えて下さい!!(その他のオチも歓迎)
よろしくお願いします!!!!!





タカアシガニ🦀こと希クン。





文字は
恥ずかしいから絶対に読まないで下さい!!














考えようによっては真面目な少女小説家なのかも知れない。




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