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【少女小説】最短1週間でキレイになる方法 第1話
※毎日とっても暑いので、少しずつ載せます!
※決して「オチを書けていないから時間を稼ごう」と思っている訳ではありません。
※読んでいてオチを思いついた方は、もし良かったらコメント欄にオチを書いて下さい!
もしかしたら貴方のオチが採用されるかも!?
『最短1週間でキレイになる方法』①
私はどこにでもいる19歳の女子大生。
そう言いたいけど「どこにでも」はいないかも。
だって私は生まれつき地黒で、キツネ目で、背が169.8cmもあるから。
気が付くと私より小さくて可愛い女の子たちを、羨ましいな、ああなれたら全然違う人生なのにと思って見ている。
なのに満員電車で人に埋もれて困っている知らない女の子を見ると、こっそり壁になって守ってあげたりするの。私の背ならそれが出来る。出来るけど、出来るからって……人を助けてばかりいるから、私は女の子らしくなれないんだよ。これじゃ黒くてキツネ目な割に、案外いい人なギャル男だよ。
……私だって女の子らしくなりたい。
せめて見た目だけでも!
と思うのに、そう思っている事が恥ずかしくて、美容院では「とにかく短くサッパリさせて下さい。洗うのが楽で」なんて言っちゃうし、服は「とにかく動きやすくて楽なのがいいですよね」なんて決めちゃうし……。折角カフェでバイトしてお金を貯めて、オシャレな美容院、オシャレな洋服屋さんに決死の思いで行ったのに……。いざとなると思ってもない事をペラペラしゃべって、保身しちゃって……こんな私にウンザリ。
もう残ったお金で、スニーカーとパーカーとリュックサックを新調して、デパ地下の高級お惣菜とジェラートでも買って食べちゃいたい。その方が今までの私らしいのは間違いない。間違いないけど、間違いないからって……それじゃあ、大学に入ってずっと頑張ってバイトして、欲しい物を我慢して貯金して来た意味が全然ないよ。
だから、このお金は未来に賭けて、大事に取っておこう。いつか見た目だけでも女の子らしくなれるチャンスが巡って来て、その時にお金が必要になるかも知れないから。
何そのチャンス?そんなのある?とは思うけど、まだ私が気付いていない、私にも出来る女の子らしいお金の使い方は、きっとある。あるんだ。当てはないけど、そう思おう。
「……あーあ」
デパ地下まで来る前に、決断出来たら良かったのになあ。
散財するのを止めたから、折角来たデパ地下でやる事が何もないよ。
仕方なく、水筒に入れたお水を飲みながらクルクルお菓子のお店を回った。高級チョコレートも、焼き立てマドレーヌも、ドレスに見立てたホールケーキもとっても魅力的。お財布の中には珍しくお金が入っていて買い物出来るのに、何も買わずにまたこれを銀行口座に戻すわけか……。私、休日に1人で何をやってるんだろう?ちょっと、いや結構、泣きたくなった。
せめて、家族にお土産だけは買おうかな?いつもと同じすぎるお金の使い方だけど、そのぐらいなら使ってもいいよね?
そう思ってケーキ屋さんに近づいたら、パーカーのお腹ポケットの中でスマホが振動した。
バイトしてるカフェの店長からかな?
あれ?まさか私、来月の休み希望出してない!?
慌ててポケットから出したスマホには「山崎愛」と表示されていて、スマホを落としかけるぐらい驚いた!「ウソ、絶対切れないで!」と心の中で叫びながら、大急ぎで電話を取った。
「愛なの!? しゃべれないのに電話なんてどうしたの!? しゃべれそうなの!?」
「………………」
「私がこんなにしゃべったら、しゃべりづらいかな!? 今ヒマなんだ! 時間あるから、がんばって! ね、愛!」
ケーキ屋さんの前でワーワーしゃべるのは、店員さんにも他のお客さんにも失礼かなと思って、スマホを耳に当てたままデパ地下の出口へ急いだ。
愛はしゃべれないのに、電話なんてどうしたんだろう?スタンプならしょっちゅう送って来るけど、電話は初めて。
大急ぎでデパ地下の外の連絡通路まで出て、スマホを逆の手で持ち直した。
「ごめん! もしかすると、ずっと無言でも話しづらいかな?」
「…………」
「今ね、デパ地下の食品街の前にいるんだ。欲しいものある? バイト代あるし、遠慮しなくていいよ」
「…………」
「愛が好きそうな、ドレスみたいなホールケーキもあったよ。白とピンクと水色。どの色がいい?」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………黄色があれば、良かったのにね。愛は、黄色が好きだよね?」
「…………………………」
ふいに電話が切れた。
驚いて、スマホを耳から離して画面を見つめた。すると、すぐに愛からスタンプが届いた。
「病院、矢印、お祈り……え!? これから病院に行くから来てくれって事!?」
結局、今の電話は何だったの?それに今日が病院だって、私が家を出る前に教えてくれたら良かったのに!
もう、今日って本当に変な日!
「……もう……ふふ」
なんだかなあ、と心の中でため息をついてから、OKのスタンプを愛に送った。すぐに愛から来た「軽いノリでお礼するゾンビ」のスタンプを見ていたら、心だけじゃなく口でもため息をついていた。
結局私は、デパ地下まで来て買い物もせずに、妹の通院につき合う休日を過ごすのか。全然いいんだけどね。ただ、私って見た目より親切なギャル男どころか、すごくお人好しな地黒のおばあちゃんみたいかもね。
夢見ている女の子は、私から遠すぎるのかな。
ちょっとだけ泣きたくなって、そんな私にちょっと笑った。
スマホをパーカーのお腹ポケットに戻して、せめて若者らしく背筋はしゃんと伸ばして、電車の改札口に向かって歩き出した。
妹の愛が小さな頃からお世話になっている『神崎正義記念病院』。
大きい病院だけど、ずっと愛の通院に付き添って来たから勝手は分かる。
愛がどこに座って診察を待つかも知っているから、病院玄関の自動ドアをくぐって、すぐに向かった。
「いたいた。さっきの電話、何だったの?」
いつもの緑のソファに座っている愛を見つけて、話し掛けながら隣に座った。
不思議なんだけど、今日は日曜なのに愛は高校の制服を着ている。家でも大体制服で過ごしているし、本当に愛って不思議。見た目がものすごく可愛いせいか、みんな愛のミステリーが気にならないみたいだけど。私はとっても気になる。
愛は隣に座った私を見て、寒そうに両手を擦り合わせた。そして、フーフーしながら何かを飲むジェスチャーをした。
「寒いから何か飲みたいの?」
愛はクルクル巻いた可愛いショートヘアをフワフワ揺らして、大きな瞳をキラキラさせて、コクコク何度も頷いた。可愛いけど……今日、全然寒くないよ?自動販売機にまだホットは入ってないし、病院ロビーにあるコーヒーショップに置かれた黒い看板にも、スムージーの絵が描いてあるし。
まあ、いいんだけどね。
愛が熱心に「↑コンビニ」と書かれた看板を指差しているから、言いたい事は大体分かったよ。
「コンビニのホットレモンが飲みたいんだよね?」
愛はクッキリ二重でまつ毛も長くて大きい目を、ニッコリさせた。……いいなあ!本当に私の妹?と思うぐらい、愛は可愛い。肌も白いし、案外胸もあるし、背だけは私と同じで高めだけどね。
「仕方ないな。後であの電話は何だったのか教えてよ?」
そう言って愛をナデナデしてから、立ち上がって、愛に手を振った。愛は嬉しそうに私の手に手をポンポンと合わせて、それからニコニコと手を振った。
愛に笑い返して、クルっと背を向けてから、コッソリ小さくため息をついた。
私、可愛い妹のパシリになっちゃってる。いや、全然嫌ではないんだけど、可愛い妹にホットレモンを買ってあげるお金の使い方って、孫を可愛がるおばあちゃんみたいで冴えないなあと思っちゃって。
せめて姿勢と歩き方だけは冴えておきたいなと思って、シャキシャキ歩いて病院の外に出た。
病院の敷地内にある駐車場を歩いて横切って、これじゃホットドリンクは無いかもと心配になるぐらい、小さいコンビニに向かった。
そういえば、昔から何度もこの病院へは来ているのに、コンビニに来るのは初めてかも。小さ過ぎて、何もないって決めつけてスルーしてた。
勿論、何もない事はないよね。
コンビニを取り囲む生垣の横に、妙に大きな水色のゴミバケツもあるし。
「ん? ゴミバケツ?」
今時ゴミバケツ?
アニメや漫画に出て来そうな立派な蓋つきのバケツだけど、これって売り物?だとしたら、いくらぐらいで売っている物なのかな?人が入れそうなぐらいビッグサイズだし、6.000円ぐらいはするのかな?
ちょっと気になったから、コンビニの入り口を通り越して、ゴミバケツの前に立った。
近くで見ると、ピカピカの新品。本当に売り物みたいね。
しかし病院のコンビニで大きなゴミバケツを売るって……深夜の病院で、このゴミバケツに何を入れているんだろ……壊死した人の手足……なんてね!使用済みの紙オムツとかじゃない?
結局、いくらなんだろう?
外側に値段シールがついていないから、蓋の内側に貼ってあるパターンじゃないかな?
蓋をぱかっと持ち上げてみたら、
「……う~~ん……」
ゴミ箱の中に人が入ってる!!!!?
驚きすぎて、蓋を持ったまま、完全に固まった。
人……人だよね!?人、人、間違いなく人!
金色の長い髪の人が1人、ゴミ箱の中で丸くなってる!!!ウソ!!?白いシャツ、白いシャツだ!血やひどい汚れはついていないみたい。どうしよう、人がゴミ箱に入る時って、喧嘩の時とか殺される時とかだよね?本当に人だよね?見間違いじゃないよね?
焦って上滑りする気持ちとは裏腹に、無意識で手がしずしず動いて、ゴミ箱の蓋を閉めていた。
……いや!
蓋を閉めて、額の汗を拭って、ほっとしてる場合じゃないでしょ!!
気持ちは激しく動転しているのに、手は静かに丁寧に、もう一度ゴミ箱の蓋を開けていた。
蓋を盾にして恐る恐る覗き込むと……
やっぱり人だ!!
白いシャツがかすかに動いてる。生きて息をしているみたい。そういえば、さっき「う~ん」って唸った?どうしよう、どうしたらいいの?声を掛けてみる?
もしこの人が、ゴミ箱の中で暮らすのが趣味だったら……それなら、お邪魔してごめんなさいって謝って蓋を閉めるだけでいい……そうじゃなくて怪我をしているなら、コンビニの人に声をかけて、ゴミ箱ごと病院へ運べばいい……のかな?
分からないけど、見えない部分に刃物でも刺さっていたら大変だし、とにかく声はかけてみよう!
でも怖い……と思って息を吞んだ瞬間、
「どこだ、ここはあ!? 飲みすぎたあ~!!」
ゴミ箱から元気な声が上がった!
中で立ち上がろうとしたのか、中の人とゴミ箱が一緒に地面に転がって、どかーん!とすごい音がした。つい、ゴミ箱の蓋を盾にして身を守っていた。
「いってえええ!!!!!」
「だ、だい、大丈夫ですか!?」
「ダメだあ~!!」
「は、はい!」
蓋を放り捨てて、転がって暴れるゴミ箱をガッチリ腕で抑えた。それから、中で苦悶する金髪のお兄さんの白いシャツを掴んで、外へ引っ張った。
お兄さんよね?
もしかしたらしっかりしたダミ声のお姉さんでジャッキーみたいな名前かも知れないけど、今はそんな事どうでも良くて、とにかくゴミ箱の中から引っ張り出してあげないと!
ゴミ箱から、白いシャツ、長い金髪、黒いズボン、黒い靴が順番に出て来た。なんだかサザエの身を貝殻から引っ張り出した時みたい。
外に全部出たら、やっぱりお兄さんだった。
フランス人形みたいに整った綺麗な顔と、ガラス玉みたいな水色の目と、波打った長い金髪を持った、綺麗すぎる細身のお兄さん。年は私より少し上くらいかな?
どこにも刃物は刺さっていないし、血も出ていないみたい。
お兄さんは、ひなたぼっこするアザラシみたいに腹ばいで地面に横たわってボーッとした平和な状態で、私を見上げて口を開いた。
「…………。あんのお~~、俺ってえ~、どうなってたの?」
「ゴミ箱に入って、蓋も閉まってて……」
「なるほどな!! フタが閉まってたから、夕方までグッスリねむれた訳だ! 二日酔い通りすぎててラッキー!!」
「………………」
「なんで、助けてくれたの?」
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見た目がフランス人形なんて、ズルいよ」
次回!!
~ゴミ箱から出て来たゴミクズに乙女心を許して良いのか!?~
ご期待下さい!!!
↓続き↓
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