魚に「自分」が分かるのか?
※この記事は1か月前に配信したニュースレター独学同好会通信の記事です。
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自分ってなんだろう?
というわけで『魚にも自分がわかる』がおもしろかったので、その話を。
タイトルにひかれて手に取ったわけだが、そもそも「自分」というのが改めて考えてみるとなかなかに奥深い。
「じぶん?じぶんってなに?」と思考の沼に落ちていきそうである。
沼に落ちていく前に、その思考は少し棚上げにしよう。
この本で出てくるのが鏡像自己認知だ。
鏡に映っているものが自分であると認識できることをいう。人間は当たり前のようにやっているが、はたして動物にできるのか?
そもそもまず動物が鏡像自己認知をしているとどうやって証明するのかについてみてみよう。
たとえばチンパンジーに麻酔をかけて、気づかれないように額に赤いダイヤのマークをつけたところを想像してほしい。
そのチンパンジーが鏡に映った自分を見たとき、鏡に映ったのが自分だとわからなければ、たとえばとってあげようと鏡に手を伸ばすかもしれない。
鏡に映っているのが自分と分かっていれば、鏡ではなく自分の額にあるマークに直接手を伸ばすはずだ。
このようなテストを経て、チンパンジーなどの類人猿やアジアゾウ、ハンドウイルカ、カササギなどに鏡像自己認識が可能であるとの研究結果が出ている。
しかし、あくまで哺乳類や鳥類の一部である。
だが著者の研究は進化の過程を一気にさかのぼり、魚にまで鏡像自己認知の範囲が広げたのだ。
脳の重さが1gにも満たない魚類であるホンソメワケベラも鏡像自己認識は可能だったのである。
鏡像自己認知が魚にまで範囲が広がるだけでも驚きだが、さらにさらに鏡像自己認知の過程から魚にもアイディアを思いつくような瞬間、「エウレカ!」な瞬間があるのではないかといった仮説も紹介される。
魚にも高度な知性があり、社会的な生活を送っていることを知ると、『ダーウィン事変』のような話に対する受け止め方も変わってきそうである。
読み進めるほどにおもしろくなる一冊。
関連書籍・記事
▼研究結果の紹介ページ
『ダーウィン事変』
本書がおもろかったので図書館で見かけて借りた二冊
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