【あゝ、荒野】即興で書かれたその瞬間の真実の跡が、そこに確かにあった。
観終わってすぐ、原作を買いに行った。
寺山修司の言葉でこの作品を感じてみたいと思った。
理解できなかった部分が、それこそ殴られるように流れ込んできた。
雨がザーザー降るような、たくさんのパンチを浴びせられるような、そんな気持ちになった。
開いて数ページで、目の奥が震えた。
叫びのようだった。
映画の中では、菅田将暉さんがよく叫んでいる。
その叫びはどこに向かっているのか不安定にみえる。広範囲に、力任せにみえる。
思えば自分にもそんな時期があった。
何に怒っているのか、苛立っているのかも立ち止まるとわからなくなるような
けれど何かを必死に欲していた頃。
あの頃を思うと、ヒリヒリする。
登場人物みんなが、あてのないそこで何かを求めている。
それが何なのかわからなくとも。
ボロボロになっても、それに気づかなくても、そこで生きている。
そこが果てしなく絶望しているようでも、何かを求めて生きている。
原作と映画では違いが勿論ある。
わたしは映画だけではどこか足りない気持ちで本屋に直行した。
それで良かったと思う。
それでわかる部分があって良かったと思う。
原作のあとがきで、この作品は即興で書いたと記載があった。
すごく、心にストンときた。
即興は、殴られたような衝撃を残す力がある。
そこにその瞬間の真実の跡が、確かにあった。