没プロット『ミスティックキラードール』ver.4

○魔術師×殺し屋
ベース設定
世の中で起こる原因不明の死、犯人不明の殺人のほとんどは魔術を使う殺し屋によって引き起こされた事件である。
主人公は魔術師狩りと称される魔術師専門の殺し屋の少年。
家族や友人を魔術師に殺され復讐のために魔術師を殺す。
魔術を秘匿したい善良な魔術師の下に身を寄せている。

作品イメージ『SPEC』『人間シリーズ(西尾維新)』『デュラララ』『呪術廻線』『空の境界』『怪物事変』
能力バトル7:推理もの3くらいのバランスをイメージしています。

【登場人物】
泡(あぶく)
ナイフ使いの殺し屋少年(ナイフ以外も使う)。14歳。6歳の時に魔術師に両親と姉を殺された。
小柄、捻くれたガキ。軽口。魔術師狩り。いつも何かを食べている(成長期)

ロゼ
泡の育て親にして監督役の魔術師。32歳。ヘラヘラおじさん。
大柄猫背。たまに怖い。魔術協会 秘匿隊(オブスキュラス)支部長。

その他秘匿隊面々。魔術師だったりそうじゃなかったり。年齢性別様々。10人くらい?(共同生活?)殺し屋魔術 アイデアメモ


黒幕→
キャライメージ:若モリアーティ(FGO)
無から魔術を生み出したい。
魔術は元来人の思いから生まれた。
人の強い思いから新たな魔術が生まれる。
一家の1番若い子を残して他をその目の前で殺す。
強い憎しみが新たな魔術を生む。
泡の存在が1番それに近い。
泡に興味。(こんなにも私を愛してくれるなんて!!!(自覚なし大煽り))

相棒→
ロゼ(現状)
実は元々黒幕を追っていた。因縁を持たせるのであれば、兄弟子。師を殺された。
有する魔術は【命名(ネームド)】名前を与えた(呼んだ)モノを操る。
泡の名前はロゼがつけたもの?泡はロゼが生み出した復讐のための道具?という部分を関係性の肝に。(結局違います。現状では直前までそのつもりだったが、泡の一文字を与えようとしたところで泡が読みの“あぶく“を選んだため魔術は掛からなかった。)

その他秘匿隊→
剣士(仮名:ヒルト)
キャライメージ:結界師の金剛毅(性格)、氷浦蒼士(能力)
身体から光の剣を出す魔術師。物理戦闘。
金髪ポニテ。暑苦しい。
泡とノリが合わない。すでに派遣済み。別件で動いている。

ロリ(仮名:スモッグ)
ガス使い。非魔術師。基本的な出自は泡に近い。(キャラ被るから普通に別物にする?人間側の魔術師を追う一族の生き残りとか)
ランドセルにガスマスク。顔を何かで隠していたい。普通に可愛い。
気体液体を使う。泡が知らない秘伝のものまで。

被害者(仮名:パピー)
魔術師によって獣化させられた普通の女子。(何話目かでやりたい話。)
自分に魔術をかけた魔術師と家族を食い殺した。
連合に送られて魔術をコントロールできるようになり仲間に。
獣化は気持ち悪く。(デジモンのファングモン)







【設定】
・魔術→特異な力。特殊能力。社会から隠匿されながら脈々と語り継がれてきた技術。なんでもできる訳ではなく、属性魔術と基礎魔術があり、魔術師たちはそれらを組み合わせて新しい魔術を生み出そうとする。例えば「火」の属性と「設置」の基礎で「発火するトラップ」みたいな。属性は魔術師ごとに固定(複数持ちもいる)基礎は基本的には誰でも使えるが得意不得意はある。この辺はあんまり詳しくは説明しない。
・魔術界→元々は一般社会にも接点があり、調和しようする魔術師もいたが、各地ど行われた異端狩りによって社会の外側へと追いやられた。以来、社会から秘匿されている。魔術界のみで暮らす魔術師、両方の世界でそれぞれの顔を持ち、隠れて現代社会で生きる魔術師がいる。魔術界には学校や魔術を利用した職業もある。魔術と一般の人間を関わらせないという常識がある反面、無能力者から隠れて暮らさなければならない不満、虐げられてきた恨みを持つものも多い。また、魔術によって命を奪うと強化される。特に特定の手段で生物の命を魔術で奪うとその性質が強化される。例えば、火の魔術で人を焼き殺せば火力がアップみたいな。
・写本→魔術界から持ち出された簡単な魔術の術式が記されている本、画像など。比較的簡単に使うことができて、簡単なモノであれば、一般人でも使える。悪意がある写本は見たものの攻撃性を高める術式も組み込まれており、犯罪を誘発させる。
・秘匿隊→オブスキュラス。現代社会で犯罪を犯す魔術師を取り締まる(殺す)組織。魔術界からはゴミ掃除的な見られ方をされており、一部の貴族に蔑まれている。


#1
学校帰りの少年。
ただいま。と声を出すが屋内から返事はない。
それどころか、部屋は暗く電気もついていない。
疑問を感じながら靴を脱ぎ部屋に入ると、
キッチンにはオブジェのように組み上げられた姉と両親の死体があった。

数年後、とある高層ビルの一室。
10人の男女が卓を囲み座っている。
【時計卿】スタン・ドレック 若々しく凛々しい青年。
【鮫喰らい】海原守定 タトゥーまみれの屈強な男。
【ドライバー】摩天楼 マントを被っている性別不明。 
【縄】アルフレッド・レッド スーツ姿の女性。エロい。
【緑壁】フラン・スニーカー 傷だらけの老人。
【デッドハウス】①(マルイチ)   ガスマスクの大男。
【コンプレイターズ】RV   人形を抱えた暗そうな女。
【影武者】ブラック 犬の着ぐるみ。
【腐腑斧】サムライソード 気弱そうなサラリーマン。 
【星見守】髑 アイドル衣装の女。
スタン「それでは、10人長による魔術議会をここに始める」
窓を背にした上座に座るスタンが立ち上がり、重々しく宣言した。
他の9人はそれぞれ徽章を机の上に置く。
フラン「それにしてもこんな外から丸見えの建物、落ち着きませんなぁ。」
スタン「すまない【緑壁】。我が社のカンファレンスルームで1番広く豪華な部屋を用意したのだ。だが、【影武者】と【星見守】、【デッドハウス】の三名で鉄壁の魔術防壁と探知魔術をかけている。セキュリティに関しては安心してくれたまえ。」
①「我ノ魔術ワ虫ノ1匹モ通サヌ。安心シタマエ。ゴ老体。」
髑「そうだよおじいちゃん。てかこんないい部屋用意してもらっといて文句とか老害乙ww」
ブラック「ぷくく…!」
フラン「生意気なガキどもめ。」
アルフレッド「もういいから、始めましょうよ。雑談しに来たんじゃないんでしょう。」
スタン「そうだね【縄】、みんなもいいかな。まずは魔術協会の動きだが…【腐腑斧】」
サムライソード「え!?あ、えっと…!はい、すみません!協会からの追手ですが、今月は今のところ13名、わたしと海原様で迎撃に成功しました!おそらく全員が学院の生徒かと思われます…」
微笑むスタン。
海原「小便臭ぇガキどもが追手とか舐められたもんだぜ。もっと骨のあるやつはこないもんか。」
スタン「油断はいけないよ【鮫喰らい】学生位なら大したことないが、教授位に出張られると流石に厄介だ。5人も集まれば私たち1人には比肩し得る。可能な範囲で戦闘行為は避けるんだ。」
舌打ちをする海原。
摩天楼「そもそも俺たちは協会の追手ごときを相手取ってる暇はねぇ。」
RV「わ…わた…わたしたちには…すう…崇高な…も…目的が…あ…あ…あります…」
スタン「その通りだ【ドライバー】【コンプレイターズ】。私たちには魔術協会の者達にはできない大切な目的がある。」
スタンが立ち上がる。
スタン「私たちは自らの魔術を高みへと導き、その頂点に至るのだ。そのために」
スタン「私たちは1人でも多くの非魔術師を殺さなければならない。」
スタン「非魔術師の血は下賎だが術の糧になる。魔術を用いて非魔術師を殺すことは魔術の頂への一歩となるのだ。魔術教会の者は非魔術師を殺すことを禁じた。恐るべき愚行だ。魔術を使えぬものに生きる価値などないというのに。さぁみんな教えてくれ。今月君たちは何人の非魔術師を殺した?」
海原「8人。全員俺の腹の中だぜ。」
摩天楼「13人だぜ。ひひ。死体は…まぁ見つけようがねぇだろうな」
アルフレッド「7人です。新婚の夫婦3組と幼い子供が1人ですわ。」
フラン「24人じゃ。運良くまだ生きているものもいるかもしれんが…どの道、虫に食われていつかは死ぬじゃろう。」
①「11名。全テ灰ダ。」
RV「に…29です…この子が…学校ごっこをしたがったもので…」
ブラック「ぷくく…!18人だよ…!みんな突然死って報道されたよ…!ぷくく…!」
サムライソード「…すみません。6人です。どの子もいい声で泣くものですから…興が乗って遊んでしまいました…!すみません!」
髑「あたし21にーん!全員イケメンだったけど今は溶かして混ぜ混ぜして化粧水にしちゃった!」
スタン「皆さん。とても素晴らしい!!私の115名と合わせると合計で252名もの価値なき命を魔術の贄に変えた!これは魔術界において偉大な一歩です!しかも、そんなにも大量の命を奪われておいて!ただの!1人も!魔術師による行為だとは知り得ていない!!何と下等な!何と低劣な!」
魔術師たちが下劣な笑い声を上げる。
スタン「さぁまだまだ殺しましょう!私たちの王道の為に!魔術世界の未来のために!」

言い終わる瞬間にスタンの背後の窓が派手に割れる。
飛び込んできた泡(あぶく)。
口に咥えたナイフを右手に持ち替えると、素早く振り抜きスタンの首を飛ばした。
卓の中央に無表情なスタンの首が転がり、受け身を取った泡が卓の中央に着地し、スタンの首を踏みつけた。動揺する魔術師たち。
泡「邪魔するぜ。魔術師ども。」
ひひ、と笑いながらナイフを器用にくるくる回す。

泡「いーち、にーい、さーん」
1人ずつ指差しながら泡が数を数える。
泡「あれ?9人しかいねぇじゃん。どうなってんだよロゼのやつ!おい、あんた今日は1人欠席か?」
急に声をかけられて海原が我に帰る。
海原「今お前が殺しただろうが!!」
海原が激昂しながら泡に殴りかかる。元々大きかった身体が数倍に膨れ上がっている。
泡「ああ、そうだわ。忘れてたぜ。」
拳をくるくるとしなやかに避けると泡は海原の喉をナイフで撫でるように切る。
血が噴き出し、力なく海原が倒れる。その血で魔術師たちの動揺が解けた。

摩天楼がマントから右腕を出す。そこには魔法陣のようなものが描かれており、光を放つ。
泡はもう一本ナイフを抜きながら素早いステップで摩天楼に近づくと、根元から切り落とすと、そのままぶつ切りにした。悲鳴をあげる摩天楼の腹をマントの上から何度も刺す。

アルフレッドが両手を前に出すのと同時に、泡がそこから飛び退く。摩天楼の死体がプレスされたように潰れる。舌打ちをするアルフレッドだったが、すでにその両目には泡が投げたナイフが刺さっており視界は閉じていた。卓を蹴ってアルフレッドに急接近した泡が両目のナイフを切り下ろしながら引き抜く。

フランの服の隙間から大量の虫が溢れ出し、泡に襲い掛かるが、次の瞬間には虫たちは全て細切れにされ、泡はフランの後ろに立っている。少し遅れて、フランの体から一眼で致死量とわかる量の血が噴き出し倒れる。

①の上半身が発火し、腕から炎の鞭が無数に現れる。しかし泡の姿はすでにない。見回すと①の肩に乗っている泡に気がついた。頭を何度も刺され譫言を発しながら①が倒れる。①の炎が部屋に燃え移る。

RVが抱いている人形が巨大化し異形となって飛びかかると同時に、逆サイドからブラックの着ぐるみの口から黒い手が伸びる。泡は双方を最低限の動きで交わすとブラックの脚を掴みそのまま跳ぶ。すれ違い様RVの腹をナイフで裂くと内臓が飛び散る。合わせて人形も崩れ落ちる。
ブラックを①が出した炎の上に踏みつけて、着ぐるみが火だるまになる。

サムライソード「こいつ…!魔術師狩りだぁ…!」
サムライソードが抜いた太刀を放り捨て、部屋の入り口まで逃げようとするが、飛んできた球体が後頭部に当たりその場に崩れ落ちる。意識を失いかけながら飛んできた球体を見ると、それはスタンの生首だった。
悲鳴をあげる声をかき消すように頭頂部から地面にナイフが刺さる。サムライソードの黒目がぐりんと瞼の上に消える。

一瞬の出来事に息を荒げながら部屋の隅にへたり込む髑。
ナイフを抜いた泡がゆっくり歩きながら、髑へと近づいていく。
髑「ねぇ!お願い!許して!何でもするから!あ、えっちなことでもいいよ!ね?お願い!」
無言で近づいた泡が髑の前にしゃがみ込む。
泡「ねぇちゃん、ちょっと聞きたいことあんだけど。」
髑「へ?」
泡「ねぇちゃんたちの中に、“身体を刻んでくっつける魔術”を使う奴っていた?」
ふるふると弱々しく首を振る髑。
泡「じゃあそういう魔術師に心当たりある?」
ふるふると再び首を振る髑。
はぁ〜と大袈裟にため息をついた泡。
泡「そっかぁ残念。」
言いながら髑の腹にナイフを突き立てる。
弱々しく血を吐くとそのまま力なく倒れ込んだ。
泡「さーてと。」
立ち上がる泡。その身体には返り血の一滴もついていない。
ナイフを鞘に収める。死体の山と炎に囲まれて立つ泡。

場所変わって煙を上げる高層ビルが背後に見える道。
手にはチェーンのハンバーガーショップの袋。
電話しながら、泡が歩く。
泡「ああ、終わったぜ。」
電話相手はロゼ。
ロゼ「お疲れ様。泡(あぶく)。怪我はないかい?」
泡「あんな雑魚相手に怪我なんかするかよ。」
ロゼ「それはよかった。でも、できるならもう少し静かにやってほしいな。今緊急ニュースで大騒ぎだよ。」
泡「仕方ねぇだろ。連中の中に火ぃ使う奴がいてよ。勝手に燃やしやがったんだよ。どうせ、不審火とかガス事故ってことにできんだろ?」
泡、袋からハンバーガーを取り出し包み紙を開く。
ロゼ「それでも、火事になると、無関係な人に被害が及んじゃうかもしれないだろう。」
泡「ちっ、分かったよ。次は気をつける。」
ハンバーガーを頬張る泡。
ロゼ「うん、早く帰っておいで、ご飯もできてるし、お風呂も沸いてるよ…ってなんか食べてない?晩御飯入らなくなっ…」電話を切る泡。
ハンバーガーを頬張りながら、道を歩く。

『魔術』
『魔力という未知の力を用いて、超常に近い現象を起こす技術』
『それは確かにある』
『平和維持、神秘性の保全、人種差別の危惧など様々な観点から隔離・隠蔽されている』
『しかし、その思想に叛き、魔術を用いて文明社会を脅かす者達も一定数存在する』
『この日本における年間8万人超の行方不明者、1000件近い未解決事件、さらに認知すらされないそれらの大多数は魔術師による犯行だとされているのだ』
『魔術を知らない者たちの法制で裁くことができない彼らを』
『魔術の秘匿という魔術界最大の禁忌を犯した彼らを』
『必殺という形で刑を執行する者たちがいる』
『これは』
『魔術師専門の殺し屋たちの戦いの物語である。』
タイトル『ミスティック・キラー・ドールズ』(仮)

○タイトルは完全に仮です。略してミスド。
○1話目の展開として魔術というものを基本的なモノとして描きカウンターとして殺し屋を描くことで懸念されていた2段階挟まった設定という部分をクリアできているかと思います。
○構成としては9割ハッタリ、1割設定説明ということでとにかく小難しいことを考えなくても読める漫画ですという印象が読者に付けばと考えました。
○魔術師たちはさくっと考えたものなので、差し替えも可能です。一応今後の設定として「魔術師たちは自身の出世よりも自身の魔術の繁栄に重きを置いている」→「継承者を何人も用意する」→「その中で出来の悪いものをあえて表に出させてスケープゴートにする」→「今回の10人は全員それ」ということで、もっとまともな敵への引きにする予定です。



#2
息を切らす泡。ゴシゴシという音が響く。
『魔術』
『魔力という未知の力を用いて、超常に近い現象を起こす技術』
『社会から隔離・隠蔽されながらも』
『現代にも脈々と受け継がれていた』
『それらを用いた文明社会には裁けぬ罪を』
『必殺の刑を以って裁く者たちがいる。』
『これは魔術師専門の殺し屋の物語!!』
タイトル『ミスティック・キラー・ドールズ』
カメラが引く、銭湯の風呂場をデッキブラシで磨く泡。
泡「この汚れ全然落ちないんだけどォ!!」

風呂場の入り口の扉が開き、Tシャツ短パン姿のボサボサ髪の男が入ってくる。
男「泡、もういいかな、もうお湯溜めちゃいたいんだけど。」
泡「ちょっと待ってろロゼ!ここの汚れが気になる!」
ため息をつくロゼ。
ロゼ「わかったよ」
ロゼが右手を前に出す。
ロゼ「水(ヴィーシュ)、渦(ボルカ)」
ロゼの右手がほのかに光ると、空気中から水が集まり、渦を作る。
それが泡が磨いていた汚れにふれ汚れを弾き飛ばした。
愕然とする泡。
泡「けーっ!魔術なんかで楽しやがって!そんなもんなくても綺麗になったつーの!」
ロゼ「はいはい、今日は人手が少ないんだ。君が起こした火事の後処理でね。だから、開店の準備を急いでくれ。」
泡「俺が起こしたんじゃねぇっての。」
ブーと膨れる泡。

『鶯湯』
『明治時代に開業した由緒正しき街銭湯。』
『平日からの朝風呂営業。週ごとに変わる薬湯。流行りのサウナも完備しており、ご近所さんから銭湯愛好家まで幅広く愛される憩いの場である。』
『しかし、不況の煽りを受け、5年前に惜しまれながら閉店した。』
『その跡地を銭湯好きの外国人が買い取り、リノベーションして昨年営業を再開した。』
『というのが設定(表の顔)である』

『本来の姿は』
『魔術協会直属 秘匿守護隊(オブスキュラス)日本支部本拠地だった。』

【泡(あぶく)秘匿守護隊 戦闘員 非魔術師】
【ロゼ・レメディウス・エルフォード 秘匿守護隊 支部長 魔術師】

番台に座る泡、客の近所のおじさんと話している。
『秘匿守護隊とは』
『魔術の総本山 魔術協会直属の私設部隊。魔術の秘匿を在り方とした教会に背き、非魔術師を糧とすることを選んだ魔術師達を狩ることを生業とした。魔術師専門の殺し屋集団である。』
泡「おっちゃん!ほれ!サウナの鍵忘れてんぞ!」
おじさん「おお、すまんね」
ほのぼのしたやりとり。

泡「にしても、表の顔が銭湯って…俗っぽすぎねぇ?」
手元にあるチョコバーの包み紙を破る泡。
ロゼ「いいんだよ。それくらいの方が非魔術師の世界に溶け込めるだろ。人も出入りするから魔術の痕跡も見つけやすいし。あと僕お風呂好きだし。」
泡「最後のが本音だよな?」
ロゼ「まぁねー。」
頬杖をつきながらため息をつく泡。
ロゼ「なんだい機嫌が悪いねぇ。」
双方無言。

番台の横、ロビーにあるテレビ、昨日のタワービルの会議室からの火災のニュースが流れている。
原因はガス爆発とのこと。
テレビをみている客たちが怖いねーと話している。

間を嫌ったロゼが口を開く。
ロゼ「君のご家族を殺した魔術師は恐ろしく狡猾で強い魔術師だ。」
ロゼ「間違ってもあんな目立つ場所で痕跡バレバレな防衛魔術を垂れ流しながら集まるような奴らじゃないっていうのは突入前に言っただろう。」
泡「わかってるっての。父親みてぇな言い方すんな気色悪い。」
がんとショックを受けるロゼ。
泡「にしてもよ。俺がここに来てもう8年だぜ?100人近い魔術師を殺してきたが足跡すら見えやしねぇ。流石にダレるぜ。そいつを殺すために強くなったってーのに。」
ロゼ「何せ痕跡が少ない。君の家に踏み込んだ時には魔術の痕跡どころか指紋や監視カメラの映像まであらゆる証拠が完全に消されていたからね。唯一残っていたのは…」
そこでロゼが言葉を切る。
泡「母さん、父ちゃん、ねーちゃんと愛犬の死体。それも死体は一つだけ。バラバラに千切られて殺されたみんなはツギハギにつなぎ合わされて一つにされていた。」
申し訳なさそうな顔をするロゼ。
泡「変なところで気を使うなよ。あんたは俺の雇い主で俺はただの殺し屋なんだからよ。」
何か言おうとしたロゼを遮るように
緊急ニュースが入る。
『渋谷の交差点で急に女性の体が発火する事件が起こりました。周囲に不審な物や人はなく、原因を探っております。』
テレビには救急車やごった返す人の様子が映っている。

ロゼ「これは…」
泡「不審火…魔術師か?」
ロゼ「十中八九ね。ちょっと待ってくれ。探知してみよう。」
ロゼが番台の下から大きなスクロールを取り出す。

泡「オーケー。俺は渋谷に向かっとくからなんかわかったら教えてくれ。」
ロゼ「はいよ。」
泡、外に飛び出すと、大きくジャンプして、塀の上、他と物や電柱の出っ張りを利用して器用に高いマンションの上に躍り出る。
遠くにかすかに渋谷の建物が見える。
泡「ひひ、普通に走れば30分ってとこだが」
泡「直線なら半分くらいか…!?」
建物から飛び降りると隣の建物に衝撃を殺しながら着地するそのままパルクールよろしく器用に建物の上を駆けていく。

ロゼサイド。
ロゼ「おじいちゃんたちちょっとごめんよ」
休憩室の大きな机の上にスクロールを広げる。そこには何も書かれていない。
ロゼ『示(シアル)座標35.658517×139.70133399999997 名称“渋谷” 。範囲指定、座標軸より2キロメートル』
ロゼがスクロールに指をかざしながら唱えるとスクロール上に渋谷の立体地図が現れた。
ロゼ『探(サリア)火の魔術師、その魔術の痕跡』
指を動かしながらろざが追加で唱えると、地図上の宮益坂の入り口あたりに赤い炎のようなものが現れた。そしてそこから足跡のように炎の跡が伸びる。
痕跡がとあるビルの屋上で止まる。
その瞬間。ロゼのポケットでスマホが震える。
通話ボタンを押すと相手は泡。息を切らしている。
泡「オラ、着いたぞ!犯人見つけたかよ!」
ロゼ「グットタイミングだよ泡。ちょうど見つけた。ヒカリエの横の5階建てのビルの上、火事の様子を見てる人間が居るはずだ。そいつが今回の犯人だよ。すぐ迎えそうかい?」
泡「おうよ!見えたぜ!ちょっと飛び降りればすぐだな。」
ロゼ「?飛び降り…?ちょっと君今どこに…」
言いかけたところで電話が切れた。
ため息をつくロゼ。

泡、ヒカリエ(46階)の屋上に立っている。ビルの縁にワイヤー付きのフックを引っ掛けると周囲の人間の目に止まらない動きで、空中に身を投げ出した。
ほぼ垂直に落下する泡。建物まで十数メートルと迫ったところで、ワイヤーが伸縮しバンジージャンプのようになる。跳ね上がったところで泡がワイヤーを切り離しくるくる回転しビルの上に着地する。
突然の物音にビルの上にいた女が振り返る。何事もなかったように服についた埃を払いながら泡が立ち上がる。
泡「よう、魔術師。あんたがアレの犯人かい?」
泡が笑みを浮かべながらナイフを抜く。
女「…何を言っているの?私はここから火事の様子を見てただけ」
泡ため息をつきながらやれやれと言った仕草。
泡「そうかい。じゃああんたから漏れてるそのくっさいくっさい魔術の痕跡はなんだい?」
女が舌打ちをする。そのまま冷酷な表情へと変わる。
女「何?貴方、追手?無駄なお芝居させないでよ」
泡、蔑むように笑う。
泡「まぁ俺には魔術の痕跡とか見えないんだけどな?こんな雑なやり口に引っかかるとか。あんた、さては頭悪いだろ。」
女が明らかにイラついた顔をする。
泡「まぁ追手ってのはそうだよ。正解だ。おめでとう。正確には殺し屋だけど。」
泡がナイフを抜く。
女が歪んだ笑みを浮かべる。
女「あなたが何者か知らないけど、そんなおもちゃでどうするつもりなのかしら?」
女が正面に手をかざす。
女「どうせあなたも魔術協会の学生か何かでしょう?お生憎様ね。そんなの何人も何人も灰にしてきたのよ。」
女の周囲に無数の火の玉が浮かび上がる。
女「私は火の魔術師【デットハウス】①(マルイチ)様の一番弟子よ。残念だったわね。」
完全に臨戦体制となった女。
泡「……誰それ?ごめん、俺、真人間だから魔術師の事情知らないわ。」
女が手を振るうと、火の玉数個が泡目掛けて高速で飛ぶ。泡の周囲が火と煙に包まれる。
笑いだす女。
女「あなた、魔術師ですらないの?何それ!?そんなのただの餌じゃない!何しに来たかと思ったら、わざわざ私の魔術を強化するために出てきてくれたのね。ありがとう殺し屋さん!!」
火の玉全てが泡の立っていた所へと飛び込む。
泡の立っていたところが火柱となる。

泡「ガタガタうるせえんだよ。」
女の背後に無傷の泡がナイフを振りかぶった状態で現れる。
振り返ろうとした女の右腕が切り裂かれ宙に舞う。
女の悲鳴が上がると同時に左手も切られて血飛沫が上がる。
女がその場に倒れ込む。痛みと困惑で表情を歪めながら、呼吸を荒げる。その首筋に泡がナイフを突きつける。
女が泡の顔を見る。同時に女が「ひっ」と短い悲鳴をあげる。
泡「魔術師以外の人間が餌とかよ。お前らのそういう発想、反吐が出んだよ。」
泡が先程まで見せることがなかった。怒りに満ちた表情で言った。
泡「あんたみたいな三下どうせ何も知らないだろ。聞くまでもねぇや。死んでくれ。」
女の目に涙が滲む。
血飛沫が上がり女が絶命する。

鶯湯の入り口。
オロオロと所在なさげに歩き回るロゼ。
戸が開き、無傷の泡が現れた。帰宅した泡。

ロゼ「泡〜〜〜〜!!心配したよ大丈夫だったかい!!?」
泡、不機嫌そうに駆け寄って触れようとしたロゼの手を払う。
泡「はっ!あの程度のやつ相手に心配されるこたぁねぇよ。」
ロゼ「そっちじゃなくて。飛び降りるって言ってたから。戦闘に関しては誰よりも君のことを信頼してるからね。」
泡「ああ、たったの40階程度のバンジーだ。ワイヤーもあるし問題ねぇよ。」
ロゼ(なんで生きてんだろこの子…)
泡「目の前で誰か死ぬよりマシだ。」
フンと鼻息を吐く泡。
ロゼ「そうかい。」
ロゼが微笑む。
ロゼ「泡」
名を呼ばれ泡が振り向く。
ロゼ「僕は君の雇い主で、君はただの殺し屋かもしれないけどね。」
ロゼ「ここは君の“寄る辺”だからね。」
泡、ポリポリと後頭部をかく。
泡「おう。ここに来た日に聞いたよ。」
表情を隠すように泡が振り向く。
ロゼ「泡」
再びロゼが泡の名を呼ぶ。
泡「なんだよ。」
ロゼ「おかえり」
泡すこし間を置いて
泡「おう。ただいま」
『これは』
『魔術師専門の殺し屋の戦いの物語である。』

○いい話っぽくしたかったのですが、無理矢理感が出てしまったようにも思う。セリフの足し引きでなんとかなるか?
○復讐ものだけど、日常感を大事にしつつ。キャラクターのモノローグをあまり入れず、後々の感情としてしっかり書きたい。


【アイデアメモ】
・操られた少女
・動物変身術
・警察組織と対立。
・他の秘匿隊と対立。
・自殺に見せかけた。
・普通の地域でありえない死因。密室で銃に撃ち抜かれて、とか都会で獣に食われてとか。
・アリバイ崩し。
・違う場所で複数の人体発火。朝食に発火の魔法がかけられたものを同時に食わされた。


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