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【徒然なる儘に】ロック・ロッカー・ギタリスト

五年前くらいだろうか、わたしは初めて自分のギターを買った。フェルナンデスの、ストラトバーガンディ。
わたしはこのギターに、自分の一番好きな漢字の『義』という名をつけた。
シルバーピンクの義ちゃんだ。

どうして今まで自分のギターを持たずにいたのか不思議なくらいに、わたしの人生はロッカーとギタリストたちとの出逢いの連続だった。

わたしは邦ロックしか愛せないというロックバカだ。ファッションや生き様も小学生の頃から既になんとなくロックだった。

そういう人生を送っていると、たまにロックの神さまが、素敵な出逢いをくれる。
出逢いの形は様々だったけど、大抵の場合は初めて出逢ったときはその相手がロックが好きなことは知らないものだ。しかし、なんだか自然と出逢ってしまう。真面目な話、これは引力だと思っている。

そして、出逢った相手がロッカーだと知ると、まず喜びのあまりお互いしばし有頂天な気分になる。自分が好きなものを語りたい、ロックについて熱く語ってみたいと願っていても、相手がいないという人たちもたくさんいる。ロッカーは、元来孤高の人たちだ。純粋にロックというジャンルのみをこよなく愛するような人たちは、実はわりと少ない。

そうして話をし始めて、お互いに似たようなバンドが好きなことが分かると、もはやわたしなどは勝手に運命を感じたりする。そんな思い込みの激しいわたしのような人間のことを、ロックバカという。

例えばある人との会話(初期)

彼「好きなバンドとかある?」
私「ナンバーガールとかブランキージェットシティとか」
「えっ、オレ、ナンバガとかブランキーが好きな女の子初めて見たよ!!」

この時点で彼はわたしにかなり好意を抱いてくれている。わたしにはよーく分かる。しかし、たったこれだけの何かの一致で相手そのものに好意を抱くようなことは、彼だって普通はあり得ないことだとは思う。ただし、ロッカーにとって好きなバンドというものは、大袈裟に言うならば今までの人生そのものであり、或いはその人となりだったりするのだ。
好みの合うロッカー同士は、そうやって通常よりも遥かに速いスピードで、交流を深めていくものだ。

ちなみに先程挙げた二つのバンドは、メジャーではあるけれど、一般的には知名度が割と低いマニアックバンドと言えた。ファンはたしかに男性が多く、わたし自身も女性のファンに遭遇したことがない。絶叫や叫び声など当たり前のかなり激しい演奏をするバンドだし、歌詞も硬派だ。つまり、男らしくてカッコいい、男が惚れるようなロックバンドだった。彼が初めて見たよと驚いたのは、そんなわたしの女性にしては好みが男らし過ぎるところだった。

ちなみに、もしも誰かに「どんな音楽聴くの?」と訊かれて「ナンバガとかブランキーとかかな」とか言ってしまうと、普通はその人との会話はたぶんそこでほぼ終わるだろう。もはや一般教養から逸脱し過ぎている。それがマニアックな人間の性なのだ。
しかし、逆にそこで感動したり感激するような奇特な人たちもいる。それがロッカーという生き物だ。

特に女性、女の子のロッカーは重宝されるらしい。まず、絶対数が少ない。一般的には、主にポップを好む女の子が多いようなイメージの中で、ガンとして自己主張するような希少価値のある女性のロッカーは、男性にとっては自分のことを分かってくれかもしれない存在としてかなり期待されているのだ。
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そういう意味でわたし自身の
過去を辿ると、今まで恋愛関係になった人は、

初恋の人はドラマー
次の人はギタリスト
次の人は元ベーシスト
次の人は元プロのギタリスト
次の人はヴォーカリスト
最後の人は元セミプロのベーシスト
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初めはお互いがロッカーであることすら全く知らない状態での出逢いから、たまたまロックが好きという要素もあって恋愛関係に至る。わたしにとってロッカーとは必須条件ではないのだが、過去お付き合いした人たちは、全員がバンド経験者で少なくとも全員がギターを弾ける人ばかりだった。
わたしはきっと、ギターとご縁があるに違いない。
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ギターの義ちゃんを買ったときに誰とも交際していなかったわたしは、こんなことならあらかじめ誰かに習っておけば良かったと痛感した。
全員がギターの先生だったんだから。
本当に、わたしのギターが一向に上手くならないのは何故だろう?

ちょっと元カレさんの話

あっちゃんが元プロのギタリストだったのを知ったのは付き合ってからずいぶん後で、これには相当驚いた。ただ、あっちゃんは自分が選んだ仕事に専念するためにギターを捨てた人で、そのことは知っていた。いつか、彼のギターを聴くのが夢だったな。

くまちゃんもセミプロのベーシストで食べていけてたんだけど、結婚の際にご両親にその職を辞め硬い職につくことを条件にされたためにベーシストを辞めたそうだ。

そんなそのくまちゃんの一言
「ベースやってるし、ギターくらいは簡単に弾けるよ」
「ギターくらいは簡単に弾ける」言ってみたいよ!

わたしがまた人生にふざけていた頃(10代)
いつか、元カレさんたちで脳内バンドが作れないかなぁ?みたいな不謹慎なことを考えていた。

ヴォーカリスト、ギタリスト、ベーシスト、ドラマー

まさか現実となるとは思わなかった。
だいたいバンドマンなんかとそこら辺でそんなに出逢うものかな?今でも不思議に思う。


この話、ロッカーあるあるなんだけど…


あいみょんの「君はロックを聴かない」あるでしょ?

あの曲を聴いて、うわー、あったあった!と思った。ただし、聴かされる側だし「わたしはロックしか聴かない」

「この曲を聴いてくれ!」

わたしも何度もそういう道場破り的なシチュエーションに置かれてきた。内心ドキドキだ。わたしは思ったことを口にする。リアクションも実に素直だ。

元がバンドマンである彼らは、大抵洋ロックに詳しく、邦ロック専門のわたしには、聴く前からおそらく相手が望むリアクションは取れないと分かっている。そのときの相手の心境は、あいみょんの曲にまさに描かれていると思う。緊張と期待をしている。

結果から言うと、数々のロッカーたちが、わたしの微妙なリアクションに落胆していったと思う。毎回、本当に申し訳ないと思っていた。しかし良いと思えないものを好きだとは言えない。それに、じゃあ今度、君の好きな曲も聴かせてよ。と、前向きな姿勢を見せてくれる優しい人たちもたくさんいた。

しかし、この晩だけは様子が違った…という話。

あるとき、「僕の大好きな曲を聴いてください!!」という、かなり強い意気込みでまたわたしに挑んできた、知り合いの男性が現れた。深夜だ。
わたしはこんな真夜中に何を聴かされるのか、嫌な予感しかしなかった。

真夜中の静けさの中、流れてきたのは、
ひたすら低い唸り声ばかり続く…これは、曲?

「デスメタル」

わたしはそのとき、産まれて初めてデスメタルとご対面したのだ。しかし、真夜中にあの低い唸り声は恐怖でしかなかったし、本当に良さが分からない。

これが、わたしが今までで最高にリアクションに困った瞬間だった。

そのときに、自分がどんなリアクションで、どんな発言をしたのかは全く覚えていない。
そのくらい動揺してたのかもしれない。
しかし、わたしの反応を見た相手が、あまりにも落ち込んでいるように見えたので、彼のデスメタル愛は、きっと相当深いものなんだろうと思った。
そして、そのことに対して尊敬の念を抱いたものの
何のフォローも出来ないまま、その場は終わった。


ロッカーな男子は、とかく好みの女子に自分の好きなロックを聴かせたがるものだ。
これは普遍的な気持ちなんだと思う。
そんなロッカーと付き合う際には理解しようとする気持ちがあるだけでいいと思う。


何年経っても未だに義ちゃんが少しも弾けないわたしは、たぶんギタリストには向いていないみたい。

だけど、わたしはギターという楽器が本当に大好きだ。振り返ってみても、わたしの人生は、ロックとギターなしにはあり得なかった。ただの趣味などではなく、ロックはわたしの魂の一部なのだと思う。

ロック・ロッカー・ギタリスト
これぞ、我が人生の全てなのだ




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