好きな男が揃い踏みするという甘い考え
キャリアの終盤になって初めて大阪を離れ、ヴェルディに移籍したふたちゃんが、今度はさらに北上して栃木SCでやることになった。新しい環境に飛び込むことを極端に苦手としていたはずが、人は変わるものだ。
イーストトーキョー住人にとって(新幹線に乗れば)それほど早起きをせずとも行ける宇都宮は、移動に限れば小旅行気分もある。ということで出かけた。宇都宮駅に着いた頃にスタメンが発表された。
メンバーにいない。サブにもいない。メンバー表に名前がない。
おーい…
落胆に溺れながら、なぜこの日に試合を観にきたかを思い出す。そう、対戦相手はアルビレックス新潟、母校出身で昨年度最も驚いたと同時に最高に嬉しかったプロ契約を果たした戸嶋選手がいるではないか。
リーグ戦の出場にいまだ立ち会えず、横浜FC戦ではピッチサイドで第四審と出番を待っている間に負傷したと思われた味方がまさかの復活を遂げ、監督に肩を抱かれベンチに戻っていった。ただルヴァン杯ではフル出場を果たしてそこそこ評価されているので、そろそろ交代枠でくる。くるはずだ。
いや早よ出してくれ。
頼む。
サブメンバーの戸嶋選手は、いつも通り黙々と楽しそうにアップをしていた。予想に反し劣勢のアルビレックス、3つの交代枠は前線で3枚を使いきり、結局この試合にも出番はなかった。
帰りの宇都宮駅、新幹線の改札を入ろうとして前を見ると、見覚えのある後ろ姿がスーツ姿で颯爽と歩いていた。追いかけるつもりはなかったが、結局ホームの待合室も一緒で、続々と入ってくる他の選手と特に話すこともなくイヤホンもせず一人の世界で過ごしていた。また、虎視眈々と何かを狙っているのだろう。彼のギフトが発動される日も近いという妙な確信を覚え、到着から波乱に満ちた宇都宮小旅行は終わった。
(彼のギフトについての私見)
二川孝広(37)
戸嶋祥郎(22)
20何年か観てきた大好きな選手と、4年間しか知らないけれどその努力と成長曲線を尊敬する若者。2人が同じピッチに、例えアップだけでも同じタイミングで立っている姿が見られたら、私の2018年は終了していい。
ただ2018年はまだ続いていて、もう一度チャンスがくるかはわからない。本来出逢わない2人かもしれないし、そこに私が居合わせるなんてことは叶えたいとはいえ単なる妄想だ。
好きな男の揃い踏み。お願いしますサッカーの神様。
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