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新しい皮膚

「有期雇用、での採用です。」
2年前の初夏、私は期待と絶望を抱えていた。

一度は諦めていた、夢があった。
「神主になる」というもの。

神社の家に生まれたわけでもなく、根っからの神社好きでもない自分。
なぜ神主を目指すのかと聞かれたら、
「目に見えない気持ちを扱うあり方に、神社という場所と人と空間は残していきたい」
と思ったからである。

私にとって神様というものが、あるかないかは特別問題ではない。どっちでもいいのでは、とすら思ってる。

安産祈願や七五三、結婚式、厄払い。
お祭り。

そういったものを行うときは、絶対的な「1人でできることの有限性」に触れられる様な
一種の仕組みができているような気がして、
それに参ってしまったのだ。
もとは美術を専攻し、現代美術作家としてかけだしていたが、その必然性に疑問が出ていた時だった。

女性でも神主になれることを知ってから、神主になる方法を調べた。
どうやら勤め先の神社と、その推薦が必要で
その推薦を持って神社庁開催の合宿に参加しないと神主の資格がもてない。
祝詞(のりと)という、お寺でいうお経みたいなものの神社版が、資格がないとやっちゃいけないそうなのだ。
神主の資格が欲しい。お祭りをやりたい。


そこで一度、関東の神社に勤めてみた。

神社も会社と同じであるが、個人経営の中でもクセが強めだった。
上が言うことは絶対の縮図。
尚且つ神社に生まれてきた時からありがたがられて育った大将は、ずっと地元、ずっと大将である。
お金の管理も手作業が多い分、横領疑惑の職員の監視を任されるなど(なんじゃそらと今でも思う)
何より自分には「上の人に気の触らないよう上手くやる」という文化をこれまで知らずに過ごして生きてきた。(つまり、社会を知らない人間であった。)
1日仕事して一体なにに気を回していたのかわからなくなり、耐えられず2年で辞めてしまった。

そんな身の上話を話した九州の神社に、たまたま拾われた。
「あなたのような人を、求めてます。」
やったー!まじで!と喜んだのも束の間だった。

「有期雇用」
そっかーと思いつつも、このとき何故か私は、募集要項には正社員とあったけど、皆さん段階を経てそうなるのかと思い込んでしまった。
それが違うことを知ったのはそう遅くなかった。


「あなただけが有期雇用です。」

関東から遠く離れた九州へ引越し、一度諦めた夢を追いかけてきた矢先での出来事。
にこにこ顔で鼻をふんふんしていた所に、にこにこ顔で平手打ちされたような衝撃。

「給料も仕事内容も待遇も正社員と同じです。有期雇用は2年までで、3年目から正社員です。」

「ちなみに、理由は…。」

「こちらの選考が他の人と違うやり方で採用したので、そうなりました。」

そっかぁ。で、この時終わらせてしまったことも間違いだったのかもしれない。
お察しの通り、正社員になる「3年目」に契約を切られてしまった。


遅刻もなく(いつもギリギリめではあったが)
2人の退職者の仕事の分まで引き継ぎ(全員で4人しかいないのに離職率の高さがエグいが)
私専用の新しいMacBookを渡され、
年間目標も達成できた矢先、の出来事。

「来年の更新は、ありません。」

「、え?」

「ただ、すぐ辞めてもらうのも大変かと思うので、更新なしの上で期限付きであと1年ここで働くか、あと2ヶ月で退職するか、明日か明後日にでも聞かせてください。」

これが去年の12/28の出来事。
おいおい、これから正月で1番の繁忙期だぜ?メンタルえっぐー!
その日の帰り道、運転しながらひとり車に話しかけてたのはよく覚えてる。

「帰り道がこんなに悲しく見える日なんてあるんだね…。」
無言で走ってくれる愛車のアルトに話しかけ、
自宅アパートの駐車場で運転席からしばらく月を眺めていた。
この描写が全体的に可哀想だ。(笑)

その後アルバイトの巫女ちゃんたちとわちゃわちゃ楽しく働きながら
同僚に驚かれながら退職した、今年の2月。

次の仕事で、関東に戻ることにした。
新しい仕事は、主に公園の管理の仕事で
敷地内の神社の管理もお願いしたいとあり
「神主の資格も応援します」と面接の時に言ってくださった。
それが後押しにもなってここに来た。


さぁ、これから、どうなるか。
「神主の資格をとらせてあげる」という匂いに、私はいつまで踊らされるのだろう?

そこでふと、神主の資格に自分が「執着」しているのではないか、疑ってみたいと思う。

全てに疑いを持ち、
曇りなきまなこで見定めるのだ…!
夢と執着は、きっと違う。
探せ自分

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