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不妊治療と仕事/てまねきの記録2

退職とステップアップの決意


4回目の人工授精。前日に施術の予定が立った。
明日の仕事休まないと!
もう18時だし、休むなら上司に連絡するなら早く電話しないと…
病院の駐車場で、私は焦って会社に電話をかけた。

「急ですいませんが、明日通院になりました、午前休にさせてください」と上司に伝えた。
上司も私が度々通院と言うので「どうしたの、大丈夫?」と聞いてくれた。
悪い病気かと心配してくれていたのだと思うし、ありがたい気遣いだった。
でもその時の私は事情を説明するのも、病気を心配されるのも嫌で、
「いえ!なんでもないんですけど!明日はすいませんが通院させてください!」と押し切って電話を切った。
自分があまりにちんぷんかんぷんなことを言ったので、電話を切ってから笑った。(課長ごめんね)
治療と仕事を行ったり来たりしているうちに、自分がふたつに裂けてしまっているような、だんだん支離滅裂になっているような気がした。

そうやって強行突破した4回目の治療も呆気なく失敗して、私は退職を決意した。
高度不妊治療(体外受精)にステップアップしたら、通院頻度がもっと上がる。
この段階で就業と通院の折り合いをつけるのに大きなストレスを感じているなら、仕事をしながらステップアップは私には無理だった。

夫と今後の治療のこと、かかりそうなお金のことを話し合って、会社に辞意を伝えた。

フルタイムの仕事と治療の両立は無理なのか

当時、社内の特殊な仕事を1人でしていた。
「君はこれからだ!がんばりたまえ」と言ってもらっていたタイミングで、とても辞めにくい立場だったので、退職への理解を得るために初めて上司に治療のことを打ち明けた。

私は辞めるために伝えたのだけど、治療と仕事を両立したいという気持ちで打ち明けていたら、環境を整えてくれていたかもしれない。
そう思える会社だった。
私が踏ん張って両立の方向に動いていれば、どんどん入社してきていた若いスタッフが同じ状況に陥った時に、不妊治療休暇が使えるようになっていたかもしれない。
当時の私は自分のことで精一杯だったので、そこまでのファイトはなかったけれど。

後任の採用活動から始めなければいけないので、私の引き継ぎ期間は1年に設定された。
あまりに長かったけれど、その間は治療はしないと決めた。
一番若い1年間を持て余す心苦しさはあれど、治療のことを考えなくていい清々しさが大きくて、久しぶりにのびのび暮らせた期間な気がする。
そしてもうすぐ28歳という夏に5年勤めた会社を退職した。

転院

仕事を辞めた私は、早速高度不妊治療が可能な病院へ転院した。
その転院先で、最後の悪あがきなのか、何故かまた人工授精を2回受けている。
人工授精と体外受精では費用がの桁が違うので、やっぱり人工授精で成功すればラッキーくらいの気持ちだったが、敢えなく撃沈。
私の人工授精歴は6戦全敗で幕を閉じた。
病院や体外受精については次回触れたい。

治療と両立できる働き方

一方生活面では仕事を辞めて、ぽっかり空いた時間を持て余していた。
不妊治療はフルタイムの仕事と兼ねるには大変だけど、仕事をしないで治療のみになると時間は余り、私の場合は余計なことを考える隙間ができてしまう。
雇用保険の職業訓練でも受けようか考えたが、講習の頻度や時間帯によっては治療の際に休みを申し入れなければいけないので、前職の二の舞だと諦めた。



退職後1ヶ月経たないうちに、私はもうハローワークの求人を眺めるようになっていた。
正社員は難しいけれど、パートタイムで治療と両立できるような働き方はないだろうか。

私は目星をつけた2社の面接を受けた。
その際、一番ネックになるだろうと思ったのは「不妊治療中であること」だった。
急な遅刻や欠勤があること。
もし早い段階で治療が上手くいった場合は、入社後すぐに妊婦になることだってありえる。(私にとってはそれが喜ばしいことだけど…!)
私を雇うデメリットを伝えておかなければいけないので、面接で不妊治療中であることを伝えた。

そして2週間後、私は新しい職場に初出勤していた。
ここが私の今の職場でもある。
ここでは、与えられた仕事をこなせるのであれば自分で出退勤時間や休みを自由に決めることができた。
その上パートタイムでありながら、月固定給で、上のように遅刻早退欠勤しても給料が減らない。
そんな勤務体系は不妊治療との両立にもってこいで、その後子育てが始まってからも子どもに寄り添った働き方ができて、とても感謝している。

ここからの体外受精には高額のお金がかかる。
たとえパートタイムであっても、収入があるのとないのとでは気持ち的にも大違い。
それに働いている間は、「今回こそは妊娠できるかな」と悶々としなくて済む。
私にとってはこの形で治療と仕事を両立させるのがベストだったと今は思う。

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