はじまり-AIH(人工授精)とは- /てまねきの記録1
治療への踏み切り
私は23歳で結婚し、不妊治療を始めたのは25歳の時だった。
加齢によって妊娠できる確率は下がっていくのだけど、一般的なイメージでは25歳はまだ不妊が問題視される年齢ではないかもしれない。
でも、私は初潮も早かったし、なんだか自分の体は実年齢よりもだいぶ上をいっているような気がしていた。
だから、「ちょっと早いけど行ってみよう」という気持ちで不妊治療に足を踏み出したのだった。(実際、早すぎるということは全然なかったよ!)
病院選び
その当時、正社員フルタイムで働いていたので、病院に通うとしたら仕事が終わってから。
「不妊治療」で検索して、退勤後に向かっても間に合う診療時間で、職場から通いやすい場所にあるK産婦人科に決めた。
当時の会社は7時半〜16時という少し早めの時間帯の勤務だったので可能だったけれど、よくある17時や18時まで会社だと通うのも大変だな?と思っていた。
K産婦人科では、一般不妊治療と呼ばれる不妊検査や人工授精が可能で、それ以上の治療になると専門の病院へ転院になる。
私はここで人工授精を受けることにした。
人工授精とは
人工授精というのは、洗浄した精子を直接子宮の中に入れる方法で、精子くんがある程度選抜されるのと泳ぐ距離がショートカットされる以外は自然な授精と変わらない。
生理が終わった頃から通院が始まって、基礎体温表+尿検査+エコーによる卵胞や子宮内膜の状態から、先生が排卵日を予測し、妊娠しやすいであろうタイミングで施術。
先生のテンションは、排卵日前日に施術できれば満点、当日でも可、翌日だとうーん、やる?どうする?…という感じだった。
この排卵日予測というのが難しい。
排卵日の1週間前くらいから、1日置き、今日も明日も、という頻度で通院して、卵胞の育ち具合をエコーで見る。
日に日に大きくなる卵胞が、あるタイミングで萎んで(中の卵が排出されて)見えなくなる。
萎んだところを確認して初めて排卵タイミングがわかる→データとして蓄積して、その後の治療に生かす。
でも、卵胞様のきまぐれで、いつもよりちょっと早めに排卵してみたりされるので、ばっちりタイミングを合わせるのは先生でもとても難しそうだった。
仕事の調整
そんな手探りな感じなので、施術の日が決まるのは前々日か前日(当然夕方)。
K産婦人科では人工授精の施術は朝イチ8時に来てね、ということになっていたので、施術日が平日の場合は仕事を休むか遅刻するしかない。
私は会社に治療のことは話していなかったので、前々日に予定がわかった日には、翌日出社してから「すいませんが、明日急に通院しないといけなくなって…」と理由はぼかして半休をとっていた。
急な休みを申し入れるのが、この時期の治療の一番の気苦労だった。
でも休めなければ、これまでの頻回の通院も全て無駄になる。そう思って、もうどう思われてもいいや、とたかを括ることにした。
人工授精の成果
私は年齢的には早めに治療を始めていたので、正直「何回か人工授精を受ければ授かれる」と思っていた。
でも残念なことに失敗が重なって、気持ちが落ちた。
頻回の通院が大変なのもあったし、途中で仕事が多忙になり、1ヶ月や2ヶ月治療を見送るときもあった。
K産婦人科は「産婦人科」なので、もちろん待合室にはお腹の大きな妊婦さん。
最初は「そりゃ当たり前」と思ってたけど、こちらが治療の回数を重ねる毎に、そんな環境もキツくなってきた。
ちょっと足が遠のいてはまたふらっと戻るを繰り返した。
なぜうまくいかないのか、原因の究明も必要なのだけど、専門の病院ではないのであまり難しい検査はできない。
いつまでもダラダラ人工授精を繰り返すだけではきっと無理だと気付いたのは治療を始めて一年弱、妊娠に至らない人工授精を3回終えた頃だった。