「マシュー・ボーンの赤い靴」感想[ネタバレあり]
昨日は渋谷に「マシューボーンの赤い靴」”Matthew Bourne's The Red Shoes"を見に行って来ました。
マシュー・ボーンの面白さの1つとして、クラシックバレエの古典作品の新しい解釈が挙げられますが、今回は1948年の映画「赤い靴」とアンデルセン童話の「赤い靴」が基になっているとのこと。私は映画「赤い靴」についてはバレエ漫画「アラベスク」で触れられていることくらいしか知らず。童話は昔のアニメなどでよく見ていましたね~。
今回は女性が主人公で、作曲家とプロデューサー(アダム・クーパー!)が一人の女性をめぐって三角関係を描くのかと思いきや実はプロデューサーは違うものを愛していたようです。劇中劇という構成で、劇の中と現実が同じものになります。劇では彼女は最後、教会に入った彼に抱かれて、靴から解放されて死にます。けれども、現実ではキャリアを自分で選んだように思わせて実は踊らされていて、周りからのプレッシャーと内面の軋轢に悩みます。赤い靴という束縛に苦しんだ彼女は最後、汽車にひかれて死んでしまいます。作曲家は彼女を抱いて靴を脱がせるが、プロデューサーは赤い靴を抱いて悲しむ。彼女はどちらから、一体何を愛されていたのだろうか。
赤い靴はキャリアの象徴として使われ、それはもちろんトウシューズの形をしています。ハイヒールじゃないんですよ(オホホ)。紐をほどいて踊るシーン、脱がせるシーン、などトウシューズの使い方で新しい解釈が見られたかも。トウシューズはバレエの基本ですが、靴そのものに焦点が当てられることはないですよね。こんなにもトウシューズが活躍する話があるのでしょうか(恐らくあります。どうも頭にトウシューズを載せている作品があるらしいので今度見たいです)。
アダム・クーパーは白鳥役で大変有名。主役でも脇役でもない、象徴的な役として存在感を見せつけますね。登場のシーンで背中を向けて立ちますが、それが全てを物語っているほど、立っているだけですごい俳優でありダンサー。彼の背中、腕の運び、目の動き、表情どれを取ってもそうあるべくして表現されているが決して作り物ではなく、自然とそうなっている。その場で即興的に作り出しているようにも見える。味わい深い踊りとでもいうのでしょうか。彼の踊りもさることながらマシュー・ボーンの舞踊団は、クラシックバレエの型を綺麗に先に延ばして立体的にしたような振付で、舞台をとにかく広く使います。今回トウシューズで踊る作品を初めて見たような気がしますが、トウシューズは横に広く動くのには向いていない靴ですね笑 動きがスピーディーで躍動感があるところがとても現代的です。
作品展開にはイギリス式ジョークもチラホラ。着物を着流しガウンのように着てリハーサルをするプリンシパル(ちょっとおネエ)。短パンのもっこり部分からタバコを取り出し、臀部からライターを取り出す髭ダンサーに、サドラーズウェルズホールの観客たちはゲラゲラ。下ネタ大好きイギリス人ですが、どうも下ネタは国際的なネタとしても使えるのかもしれませんね笑
それにしてもBunkamuraルシネマは開始10分前に開場とのこと。普段はそんなにお客さんが来ないのかもしれませんが、今回は満席。長蛇の列と密でした。