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熊川哲也/渡辺レイ『Fruits de la passion 』を見て

素晴らしいものを見たので、感想を!

バレエ作品を見る時、私たちはダンサーを見ればいいの?それとも音楽を聴けばいいの?という状態に陥る時がある。

両方!というのがこの作品の答えだ。

作品は7:50ほどの長さ。長年連れ添った一組の夫婦が、クラシックコンサートでラヴェル作曲の『道化師の朝の歌』を聴くと、二人に変化が起こり・・・

「それは現実の出来事なのか、それとも無意識の表象なのか。古典バレエでは見られないウイットやユーモアが生む不条理な世界が、我々を無意識の世界に駆り出し、危険な興奮ともいえる感情を呼び起こす。」(Youtube概要欄より引用)

という主題の作品である。

椅子に座ったダンサー二人が、始めは個々の踊りから、その後次第に互いをリフトし絡み合うように踊る。熊川哲也の華麗な跳躍と渡辺レイのしなやかな造形美を見つめ、あれはタンゴの動きかな?などと想像しながら見ている内にダンサーはヒートアップ、観客の我々もヒートアップ。

と、思いきやダンサーは突如椅子に座り、演奏は終了し、二人は拍手をする。

なんと、ダンサーはあくまでも聴き手だったのである!

さて、ここで作品を見ていた我々は「観客」であり「聴衆」でなかったことに気が付く。私たちは演奏をしっかり聴いただろうか。いや、明らかに踊りに集中していた。音はただ印象でしか残っていない。音楽は「消えた」のである。

ダンサー二人が賞賛する演奏をしっかり聴かねばともう一度映像の頭に戻る。

そうするとまた違った世界が見えてくるのだ。

世界の熊川さまを、自分だけの空間で何度でも眺められる時間を。

是非あなたにも。

映像は7/18(土)まで視聴可能。