【一般向け】パーキンソン病について
はじめに
こんにちは、ばくふうんです。
今回は一般(患者さん、ご家族さん)向けの内容となります。
病気になると、外来あるいは病棟で、必ず医師による病状説明がなされます。
しかし、神経疾患の説明内容は、初めて聞く内容が非常に多く、理解するのに時間がかかったり、その場ではなんとなく分かったつもりになっても、結局これからどうしていけば良いのか分からなくなってしまったりといったことが多いと思います。インターネットで病気について調べてみても、怖いことばかり書いてあって不安が募るだけということもあります。
そこで、ここでは私が実際に患者さんやご家族さんに説明している内容を紹介し、病気への理解の一助としていただければと思います。
ただし、あくまでも一般的な内容となりますので、個々の病状の詳しい説明は、主治医の先生にお尋ねください。
パーキンソン病とは
パーキンソン病とは、長い年月をかけて脳にゴミのような物質が溜まっていき、そのせいで脳の働きが一部障害されてしまう病気です。
脳の働きが障害されてしまった結果、脳の中のドパミンという物質が不足してしまいます。このドパミンというのは、車でいうところのアクセル・ブレーキの役割をしている物質で、これが不足してしまうと急発進・急停止が難しくなってしまいます。その結果、とっさに動くことができず「体が固まる」「動きがゆっくりになる」「歩きにくい」「こけやすい」といった症状が出たり、とっさに止まることができず「歩き始めると止まれなくなる」といった症状が出たり、アクセルとブレーキが交互に押されてしまった状態になると「手足がふるえる」といった症状が出たりしてしまいます。
「なぜゴミがたまってしまうのか」「どうすればゴミを取り除けるのか」がいまだ解明されておらず、現在の医療では「治す病気」ではなく「つきあっていくタイプの病気」です。ゴミは溜まっていく一方なので、症状は年単位でゆっくりと進行していくことが予想されます。
治療について
先に述べた通り、「なぜゴミがたまってしまうのか」「どうすればゴミを取り除けるのか」が分かっていない病気なので、根本的な治療法というのは現在のところはありません。
ただし、脳の中で不足しているドパミンを薬という形で外から補充してあげることで、症状を和らげることが可能です。
薬については、外来などで定期的に症状を確認しながら、個々の患者さんの状態に合わせ、必要に応じて量を調整していきます。
今後について
繰り返しにはなりますが、パーキンソン病はゆっくりと進行していく病気です。薬での治療で症状が軽くなっても、何年か経つと薬の効きが悪くなることがあります。
もちろん、薬を増量することで症状が軽くなることはありますが、最終的には病状に応じて生活環境の方を体の状態に合わせる必要が出てくることが多いです。
つまり、医療だけでなく、周囲の方々によるサポート体制、いわゆる介護体制を整えていくことが非常に重要となります。
日本には、介護の必要な方に、状態に応じて様々なサービスを提供する「介護保険」という制度があります。まずは、(今すぐ必要な状態でないとしても)早めに介護保険の申請をしておくことをお勧めします。
また、パーキンソン病は国の難病(特定疾患)に指定されており、重症度1〜5のうち3以上の患者さんであれば、難病申請していただくことで、医療費の補助を受けることができます。 ※重症度については主治医の先生にご確認ください。
介護保険について
なぜ早めの申請をお勧めするのかというと、介護保険の認定を行うのは市役所などの行政が担当なのですが、申請してから実際に認定が下りるまでに2〜3ヶ月程度かかることがほとんどだからです。つまり、いざヘルパーなどのサービスを使いたいと思っても、介護保険の等級を持っていなければ、そこから2〜3ヶ月待たなければならなくなるのです。これを、前もって申請をしておけば、ひとまず今お持ちの等級で利用可能なサービスを足がかりに、適宜等級の見直しをして使えるサービスを拡充していく、という動きが可能となるのです。
パーキンソン病を発症される方は、多くがご高齢で介護保険の適応(65歳以上)となる方がほとんどですが、中には若くして発症される方もおられます。その場合も、「パーキンソン病」という病名であれば40〜64歳の方でも介護保険の申請が可能です。
介護保険を申請するには、市役所などお近くの役所で必要書類を受け取る必要があります。その書類の中に、「主治医意見書」という医師が書く書類がありますので、それを病院に提出いただき、主治医に記載してもらいます。基本的にはかかりつけの先生か、パーキンソン病を診断した先生にお願いすることになります。
認定された等級(要支援1、要介護3など)に応じて使えるサービスの種類や数が異なります。実際にどのようなサービスを使っていくかは、担当の方(ケアマネージャー)と相談されるのが一番スムーズです。
よくある質問
Q. 薬はずっと飲み続けないといけませんか?
A. 飲み続ける必要があります。薬はあくまでも不足しているドパミンを補充する薬ですので、やめてしまうとすぐにドパミン不足に逆戻りしてしまいます。また、パーキンソン病の薬を突然やめてしまうと、深刻な副作用が出ることがありますので、ご自身の判断で勝手に中止することは絶対にしないでください。
Q. 薬の副作用はどんなものがありますか?
A. 薬の種類によりますが、一番よく使われるレボドパ製剤(ドパコール、メネシット、ネオドパストン、マドパーなど)であればお腹の症状(吐き気、食欲低下など)が出る方がおられます。パーキンソン病の薬は多くの種類があるため、個々の薬の副作用については、主治医にご確認ください。
Q. 命に関わる病気ですか?/余命はどのくらいですか?
A. パーキンソン病そのもので亡くなる、つまりパーキンソン病のせいで心臓や呼吸が止まってしまう方はほとんどおられません。ただ、パーキンソン病が進行すると転倒しやすくなってしまいますので、転倒→足や腰の骨折→寝たきり、というパターンはあり得ます。また、パーキンソン病の進行とともに飲み込みづらさが出てくる方もおられ、誤嚥→肺炎となり命に関わる場合もあります。つまり、脳そのものの影響で亡くなることはないが、動きづらいことをきっかけに別の病気になって命に関わることはあるので、転倒しないように、あるいは誤嚥しないように対策をしていくことが重要です。
Q. 生活の中で気をつけるべきことはありますか?
A. パーキンソン病だからといって食事や運動に何か制限をかけるということはありません。上でも述べましたが、転倒には十分気をつける必要があるので、こけてしまいそうになる、あるいは何度かこけたことのある方は、屋内では壁や手すりを持って移動する、屋外では杖や手押し車などで支える、といった対策を取っておくことをお勧めします。
おわりに
入院中であれば個室でしっかり時間を取って病状説明をしてもらう機会もあるでしょうが、外来だとささっと説明されて薬を出されて終わりとなってしまうこともあると思います。
よろしければ、この記事の内容を参考にしていただきつつ、分かりにくい点・疑問に思う点を外来で主治医の先生に聞いていただくとスムーズかもしれません。
パーキンソン病の患者さんやご家族さんに少しでも有益だと感じていただけるのであれば、著者冥利に尽きます。