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【研修医・専攻医向け】パーキンソン病治療薬の使い分け②<非ドパミン系薬剤>
はじめに
こんにちは、ばくふうんです。
前回はパーキンソン病治療薬のうち、ドパミン系薬剤について解説いたしました。
今回は、非ドパミン系薬剤についてまとめていきたいと思います。
前回の記事はこちら↓
非ドパミン系
①抗コリン薬:トリヘキシフェニジル(アーテン®)、ピペリデン(アキネトン®)
<強み>
・振戦に有効
<弱み>
・前立腺肥大における尿閉誘発のリスク(禁忌!)
・閉塞隅角緑内障における急性緑内障発作誘発のリスク(誘発!)
・口渇、便秘
・幻覚、妄想、せん妄、認知症の悪化
経験的に振戦への有効性が知られています。
しかし、
(1)現在ではパーキンソン病患者ではアセチルコリンの減少も高度である
ことが判明している
(2)抗コリン作用による副作用(認知機能障害、せん妄など)のため
高齢者や認知機能低下患者では使用を控えるべき
という点から、新規で処方する機会は少ないです。
②アマンタジン(シンメトレル®)
<強み>
・dyskinesia改善の可能性
<弱み>
・腎機能障害患者では低用量でも血中濃度が異常高値を示す場合がある
・副作用:中枢症状(めまい、不眠など)、消化器症状(悪心・嘔吐)、下腿浮腫、網状皮斑
ドパミン神経終末からのドパミン放出作用やドパミン再取り込み抑制作用により運動症状を改善します。
L-dopa誘発性ジスキネジアに対して有効で、比較的大量投与(200〜300 mg/日)により、8ヶ月〜3年程度はジスキネジア抑制効果が得られるとされます。
ただし、有効例は5割程度で、長期使用(1年以上)により改善率は低下するともされます。
腎機能低下例・高齢者では中毒症状(意識障害、精神症状、痙攣、ミオクローヌスなど)が出現することもあり、低用量(1回50 mg以下、1日150 mg以下)から開始します。
副作用等の観点から、新規で処方する機会は少ないですが、ジスキネジアのコントロールに難渋する例に考慮します。
③ゾニサミド(トレリーフ®)
<強み>
・振戦に有効
・dyskinesiaや幻覚のような副作用が少ない
<弱み>
・副作用:眠気、口渇、嘔気、幻覚など(頻度は少ない)
本来はてんかんに対する抗発作薬なのですが、より少量で用いることでMAO-B阻害やドパミン放出促進作用などの機序により抗パーキンソン病作用を示すとされます。
添付文書上は「L-dopa含有製剤と他の抗パーキンソン薬を投与しても十分に改善しない場合」に用いるとされています。進行期にL-dopa製剤併用下で、25 mg/日でオフ期の運動症状全般を改善、50 mg/日でオフ時間を短縮します。
この薬剤はL-dopa非反応性の振戦への効果が期待できるため、他剤を使用してもウェアリングオフや振戦が残る場合に良い選択肢となります。また、アマンタジンと比較して副作用の頻度も少なく、25〜50 mg/日であれば、ジスキネジアや精神症状(幻覚・妄想)は出現しにくいため、比較的処方しやすい薬剤となっております。
④ドロキシドパ(ドプス®)
<強み>
・すくみ足の改善
<弱み>
・悪心、嘔吐、頭痛、血圧上昇
ノルアドレナリンの前駆体で、橋上部背側にある青斑核(姿勢制御に関与)のノルアドレナリン低下を補います。
運動症状全般、特に「オン時のすくみ足」の改善に期待でき、600 mg/日以上の使用により、20%の症例で運動症状の中等度改善があるとされます。
ただし、約半数では無効であるため、漫然と使用しないように注意が必要です。
⑤アデノシン受容体拮抗薬:イストラデフィリン(ノウリアスト®)
<強み>
・オフ症状の軽減、オフ時間の短縮
<弱み>
・副作用:悪心、めまい、dyskinesia増悪
アデノシンA2A受容体拮抗薬で、ドパミン代謝やドパミン受容体刺激を介さない非ドパミン系の機序により、好パーキンソン病効果を発揮するという一風変わった薬剤です。
ドパミンの減少により相対的に生じた「運動抑制性GABA神経細胞の過剰興奮」を抑制する=「運動機能が過剰に抑制された状態」を抑制する=運動機能を改善させる、という機序を持ちます。
進行期にL-dopa製剤との併用で、オフ時の症状改善効果が示されています。
効果発現までに2〜8週間かかることがあるので、効果判定の時期には注意が必要です(早急に無効と判断しない)。
すくみ足や姿勢異常(首下がり、体幹前屈)に有効との意見もありますが、エビデンスはありません。
おわりに
どれもこれもクセのある薬剤ばかりですが、それぞれに強みがありますので、使い所を見極めながら処方していくことになります。
具体的な処方の考え方については、③<薬剤選択>でお示ししていきます。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
実際の薬剤選択の指針についてはこちら↓