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【一般向け】その頭痛、受診すべき?

はじめに

こんにちは、ばくふうんです。
今回は一般の方向けの内容となります。
脳神経内科を受診するきっかけとなる症状のひとつに頭痛があります。

頭痛というのは想像以上に奥が深く、非常に細かく分類されています。例えば、一口に「片頭痛」と言っても、「前兆のない片頭痛」「典型的前兆を伴う片頭痛」「脳幹性前兆を伴う片頭痛」「片麻痺性片頭痛」「網膜片頭痛」「慢性片頭痛」のように様々なタイプがあるのです(一般の方が覚える必要はありませんが)。

そんな頭痛ですが、普段から頭痛持ちで鎮痛薬を飲みながら付き合っている方もおられれば、ある日突然頭痛が始まりなかなか治まらない方もおられます。インターネットで調べると、必ずと言って良いほど「頭痛は脳出血やくも膜下出血の可能性があるので、すぐに病院を受診してください」といった内容を目にして不安になる方も多いと思います。
「脳出血が起こってはいないだろうか?」「このくらいなら我慢できるし様子を見るべきだろうか?」「病院に行ったら何か良い薬を出してもらえるのだろうか?」など、頭痛に関する疑問に実際に診療をする立場からお答えしていければと考えております。

まずは、世の中にはどのような頭痛が存在するのか、どのような特徴があるのかから整理していきましょう。

見逃してはならない(命にかかわる)頭痛

①くも膜下出血

  • 多くは脳動脈瘤の破裂によって起こります。

  • 突然の激しい頭痛が特徴で、雷鳴頭痛とも呼ばれます。突然発症するため、「20時頃、テレビを見ている最中に急に頭を殴られたような痛みが始まった」などと、発症当時の状況を詳しく覚えていることも珍しくありません。痛みの強さも、これまでに経験したことのないほど強いと表現されることも多いです。

  • 放っておくと命に関わるため、くも膜下出血と診断したら、即入院で当日、遅くても翌日の緊急治療となります。

②脳出血

  • 多くは高血圧を原因として起こります。

  • くも膜下出血は厳密には脳の外側での出血なのですが、脳出血は文字通り、脳の中での出血です。出血の場所次第で、頭痛以外の症状(片側の手足の麻痺、しゃべりにくさなど)が出現する場合があります。

  • 脳出血と診断された場合も、やはり緊急入院となります。ただし、手術が必要かどうかは出血量によって変わり、出血が少なければ様子観察し、出血が多ければ手術で溜まった血を抜きに行きます。

③椎骨動脈解離

  • 重い荷物を持つなどしていきんだ時や、首を急に大きく動かしてしまった時などに、首の後ろ側を走る椎骨動脈という血管が裂けてしまうことで痛みが生じます。

  • 「何をしたら突然後頚部が痛くなった」と当時の状況を説明できることが多いです。

  • 椎骨動脈解離そのものは様子観察で良いことが多いのですが、二次災害として脳梗塞を発症してしまうことがあるので、診断されれば原則入院で注意深く様子を見ることになります。

④髄膜炎・脳炎

  • 細菌やウイルスが頭の中に侵入し、脳の表面や脳の中で炎症を起こす病気です。

  • 感染症なので、頭痛以外に発熱していることも多いです。はじめは風邪や帯状疱疹など別の症状から始まり、運悪く病原体が頭の中に侵入してしまって発症することもあります。

  • 髄膜炎・脳炎と診断された場合も、原則は入院となります。細菌が原因なら抗生剤治療を行いますし、ウイルスが原因の場合、一部のウイルスには抗ウイルス薬を用います。

よくあるが命にはかかわらない頭痛

①片頭痛

  • 実は片頭痛が起こるメカニズムは未だ解明されておらず、血管の収縮・拡張が原因となる説、セロトニンという物質が関わるという説、神経と血管の炎症を原因とする説などがあります。

  • 片頭痛の特徴としては、「拍動性(ズキンズキンと脈打つような痛み)」「片側性(左右のどちらか一方が痛む)」「持続性(一度始まると数時間から数日続くことがある)」があります。また、頭痛時に吐き気を伴うことも多く、光や音に過敏になるじっとうずくまってしまう(のたうち回ることはない)、といった特徴も出現することがあります。

  • 頭痛が起こる前触れとして、「視界にキラキラしたもの/ギザギザしたものが見える(閃輝暗点と言います)」が見える方もおられます。ただし、見えない方も多くおられます。

  • 治療として、一般の鎮痛薬(ロキソニン、カロナールなど)で治まるならそれで良いのですが、治まらない場合は片頭痛専用の頭痛薬(トリプタン)を用います。

②緊張型頭痛

  • 首や肩の凝り、つまり筋肉の緊張が原因となって起こる頭痛です。

  • 普段から肩が凝りやすい方、デスクワークの仕事で同じ姿勢ばかり取ってしまう方などでよく見られます。

  • 「頭全体を締め付けられるような痛み」と表現されることが多いですが、人によって痛みの感じ方は個人差が大きく、特に決まった特徴はありません。

  • 痛みに対しては原則として鎮痛薬(ロキソニン、カロナールなど)しか選択肢はありません。筋肉の緊張が根本の原因であるため、首や肩周りのストレッチ・マッサージでほぐしてあげることが予防に繋がります

③三叉神経痛

  • 顔の表面(場合によっては口の中なども)に「電気ショックのような」「ズキンと」「針を刺すような」などと表現される痛みが走ります。

  • 痛み自体はほんの一瞬のこともあれば、数秒から数分続く場合もあります。

  • 三叉神経痛に対してはカルバマゼピン(テグレトール)と呼ばれる薬が非常に効果的であることが知られています。

  • 原因として、頭の中で三叉神経という神経に血管が接触していることがあり、その場合は根治術として手術で神経と血管の接触を剥がすという治療をすることがあります。

④後頭神経痛

  • あまり有名ではないですが、日常診療ではよく出会います。

  • 左右どちらか片方の後頭部が痛みます。「ズキッと痛む」「ピリッとする」など感じ方は人それぞれです。

  • 後頭部の特定の部位を押すと痛みが強くなることがあります。

  • 後頭部の表面を走る後頭神経という神経が過敏となって起こる痛みですが、一般的な鎮痛薬(ロキソニン、カロナール)以外の選択肢はなく、基本的には自然に良くなります。

病気と治療のおおよその目安

まだまだ頭痛の種類はたくさんあるのですが、話がややこしくなるだけですので、よく出会うもの・欠かせないものに絞ってまとめさせていただきました。
ここからは、各々の特徴を踏まえて、どのような症状があればどの頭痛らしいのか、対応としてはどうすべきなのかを考えていきましょう。

①症状が頭痛「だけ」の場合

  • 「突然発症」の場合、具体的には「何時頃に何をしていたら急に痛くなった」「ぐっすり寝ていたのに急に頭が痛くなって目が覚めた」など、明らかに頭痛が起きる前と後がはっきりする場合、くも膜下出血、脳出血、椎骨動脈解離など血管が破れた・裂けた痛みの可能性があります。すぐに病院を受診してください

  • 「少しずつ痛みが出てきた」場合や「時々痛みが出る」場合、「数日間痛みが続いている」場合などは、緊急ではないことが多く、先に述べた片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経痛、後頭神経痛などの命にはかかわらない頭痛の可能性を考えます。焦らず、まずはロキソニン、カロナール、なければ市販の鎮痛薬などで様子を見てみましょう。数日経っても改善がない場合は、外来で相談いただくことも可能です。

②症状が頭痛「以外もある」場合

  • 頭痛以外の症状もある場合、基本的には病院受診をお勧めします。

  • 発熱を伴う場合、髄膜炎・脳炎も考える必要があります。もちろん、例えばインフルエンザなどでも高熱に伴い頭痛が生じることがあり、一概に皆が髄膜炎・脳炎というわけではありませんので、実際に診察する中で判断していくことになります。

  • 周りから見て普段よりもぼんやりしている、受け答えがおぼつかないなど意識状態の変化がみられる場合、くも膜下出血や脳出血、髄膜炎・脳炎の可能性があります。すぐに受診することをお勧めします。

  • 片側の手足の麻痺、しゃべりにくいなど、普段と明らかに異なる症状がみられる場合、脳出血や脳梗塞などの可能性が高いです。こちらもすぐに受診が必要です。

③鎮痛薬が効かない場合

  • ロキソニン、カロナール、市販の鎮痛薬で効かない場合、片頭痛や三叉神経痛など一部の頭痛では、専用の処方をすることで効き目がみられる場合があります。

  • ただし、最終的に一般の鎮痛薬で対処するしかないケースもあります。頭痛に対する薬はロキソニンかカロナールしかないのが実際のところで、それ以外の処方を希望される場合は、漢方薬(五苓散や呉茱萸湯)くらいしか選択肢がありません。

まとめ

長々と述べてきましたが、結局のところ頭痛の診療は「脳や周囲の血管に異常があるかないか」に尽きます。脳に異常があれば緊急入院ですし、逆に脳さえ無事なら痛みを和らげながら様子見するしかありません。
一部の頭痛は、それ専用の処方をすることでより効果的な場合がありますので、鎮痛薬が効きにくい場合も、一度相談してみても良いかもしれません。
「突然発症」「頭痛以外の症状がある」この2点を受診の目安にしていただくと良いと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


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