ニンゲンのふり
近頃はうまくできていると思っていたのに。
いつも会う仲間といつも通りに過ごし、さあ解散というときになって「あれ? なんかわたし疎外されてる?」と思う。キッカケはささいなこと。
あいさつしたのに返してくれなかったとか、となりで一緒にエレベーターを待ってた仲間が決局一緒に乗らなかったとか、そんなこと。思い過ごしじゃないかと言われればそれまでだけど。
こんな風に思ってしまうともうダメで、もうあの人達に会うのはやめようかというところまで思いつめてしまう。
でも、そういう「疎外されてる感じ」って結局気のせいってことが多いんだよね。たまたまなの。後日会って話せばわかるんだけど、気にしいなわたしはそれまでの時間がどうにも苦しい。
思うのは「わたし何かやったかな?」ということ。たぶん、相手が覚えてもいないようなささいなことを、わたしは勝手に重大なこととしてとらえている。ふたを開ければわたしはなにもやらかしてはいなくて、だから、相手も普通に接してくれる。
そういうとき、わたしはほっとしつつも、「ニンゲンの世界わからない」と思う。いや、わたしもニンゲンなんだけど、どうもニンゲンとしてうまく立ち回れない。なにが正解なのかわからないのだ。
まるで、他の惑星からやってきて、姿形だけニンゲンに似せた生命体みたい。そしてその事がバレちゃいけないと常にオドオドしながら必死でニンゲンに溶け込もうとしているかのよう。
アホみたいだけど、自分がそもそもニンゲンではない何かだという妄想は自分を救ってくれるときもある。
疎外されてると感じたとき思い詰めるよりかは「わたしはニンゲンのふりがうまくいってない。よくあることだ」と諦めた方がラクになる。
明日もわたしは遠い星から見つけて恋い焦がれた「ニンゲン社会」に溶け込むため作り笑いと他愛もない会話のスキルを磨く。
はやくニンゲンになりたい。