私とワンダースワン① バッファーズエボリューションについて
皆さんはワンダースワンについてどのような意見をお持ちでしょうか。
友達が持ってた、ゲームボーイに敗北したい携帯ゲーム機、デジモンで知ってる、ワンピースで知ってる、ぐんぺい、起動音がかっこいい、知らん。
そのぐらいでしょうか?
しかし私はワンダースワンを最高に素晴らしいゲームだと今でも思っている(思い込んでいる)
1999年の冬、私はゲームボーイを持っていない少年だった。
当然家にはゲームボーイはあったが、兄の持ち物で私は触る事すら許されていなかった。
ゲームボーイカラーが発売されてポケモンの金銀も発売されていたのに、クラスの大半が持っていたのに、私の手元には何もなかった。
そこで私はクリスマスプレゼントにポケモンの金・銀とゲームボーイカラーをねだった。しかしサンタが私に寄越したのは。
ワンダースワン(クリアブラック)とバッファーズエボリューションだった。
私は泣いた、泣いてサンタに怒った。
バッファーズエボリューション!?
聞いた事も見たことも無いソフトで、当時たぶん「ロックマン&フォルテ」はすでに発売されていたはずなのに、何故親はこれを?
(後々聞いたところ本体とソフトがいわゆる抱き合わせで6,000円だったそう)
サイクロンマグナムをお願いした時はサラーのゴールデンビーダマンだったサンタだ、もう信じないつもりだったのにまた裏切られた。
そんなに貧乏な家庭ではないが、親はとにかくこの手の商品に興味が無く、一緒に買いに行かないと100%違うものを持ってくるのだった。
泣き疲れたので私はワンダースワンに電池とカセットを入れてバッファーズエボリューションを起動した。
キュイーン! 起動音は初代がナンバーワンだ。
このゲームはいわばレースゲームで様々なアイテムを駆使してゴールまでのタイムを縮めるというとてもシンプルなゲームである。
トリ、ライオン、サイのサイボーグを走らせ、敵を避けたり踏んだりしてとにかくゴールを目指すという内容。キャラごとに性能が違い、動きの速さや耐久値が異なる。
クソゲーだって?
そんな事は無い、私はとにかくハマった。
このゲームは優秀だった。
シンプルな操作性とアイテムを駆使して解決するパズル要素まで組み込まれている、しかも規定のタイム以内にクリアするとデモプレイが流れて隠しアイテムのパワードスーツの欠片の場所まで教えてくれる親切設計。
しかもワンダースワンは恐ろしいほど電池の持ちが良い。単三電池1本で30時間近くプレイできる。私は文字通り遊び倒した。
だがそれが仇となった。
当時のゲーム機には光源がなく屋内の明るい場所でしかプレイ出来ないため手を目元に近づけるのではなく、画面を光に対して水平にして首を落として前のめりにして遊ぶ。
当然姿勢は猫背になり首がメチャクチャ痛くなり、プレイが出来なくなる。実質的に「ゲームは1日1時間を守らざるを得なかった」そして視力は落ちていった。
それでも私はワンダースワンを手放せなかった。
自分だけのゲームを手に入れたという事と誰もやっていない特別なゲームが手に入ったという多幸感からプレイをし続けた、狭い団地に生まれ育ち襖1枚分のプライバシーしかない空間から解放された気分になった、私は初めての誰からも干渉されない時間を堪能していた。
魚が安全地帯を求めてより狭く暗い場所へと身を進めて行くように、皆が遊んでいるゲームボーイから逸れていった。しかし辿り着いたその先は罠で誰も居ないくただ落ち着く温かい沼だった。
前人未踏のワンダースワン沼。
そこは悲しい精神性と歪んだ愛情が絡み合いそしていつでも逃れる事が出来る場所。愚かしくものめり込めばのめり込むほど新しい発見があり世間からだんだんとずれていく。
私のしょうもない人格形成の一端にワンダースワンが組み込まれているのは間違いない。
もっと語りたい事はありますが、本日はここまで。
次回『そのワンダースワンは俺のだ! 事件』を予定しております。
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