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人に甘えるという話

私は元来、人に甘えるのが苦手だった。
共働き家庭に生まれた私は、物心がついた頃には両親と夕飯を共にする事が少なく、伴って会話の機会も少なかった。
常日頃幼少の自分の面倒を見てくれるのは祖父母で、「生まれてきて申し訳ない」とは思わなかったけれど、自分がいるからみんなが頑張ってるんだな、という気持ちがずっと何処かにあった。
そのせいか、遠慮しがちでワガママを言えない子どもらしくない子どもだった。
勿論、両親からの愛情表現は人一倍受けていたと思うけれど、それでも幼少期から思春期頃まで、話したい時に安心して話せる両親がそばにいなかったというのは、大人が思うよりずっと心細かったのだと今は思う。誰かに頼ることが苦手な人間になっていった。

学校での私も優等生で、頼られる存在だった。
「〇〇君が好きなんだけどどうしたらいいと思う?」「この問題がわからないんだけどどうやって解くの?」と相談や質問をしてくる同級生に対して答えることで優越感を感じるとともに、わからない時やできない時に素直に周りにヘルプを出せる同級生に対して羨ましいと言う感情もあった。


私は高校1年の終わり、彼氏ができた。
告白は私からした。
好きだと思って、私と一緒にいて欲しいと思ったから。
その時の私にはそれ以上でもそれ以下でもなくて、好きな人が彼氏であることが本当に幸せだった。

それから半年以上経った時。
どうやら別のクラスの女の子が私の彼氏のことが好きらしい、と噂で聞いた。
当時の私は「彼氏がいる」ってこと自体が小っ恥ずかしくて彼氏の存在をヒタヒタに隠していた為、その女の子も当然知らずに好きになって周りに言っていたんだと思う。その子にはなんの罪もない。
けれど私の中でなんだかモヤっとして、私は付き合ってるからそんな心配要らない、でも本当に取られたらどうしよう、が頭の中でグルグルしていて、幾日も解決しないままデートの日がやってきた。

デートは楽しくて、幸せそのものだった。
一緒に食べた胡麻団子もメロンパンも美味しかったし、一緒に乗ったジェットコースターは人並み以上に叫んでいた。
でも心のどっかで「モヤモヤモヤモヤ…」ってしている自分がいて、それに対してもまた「モヤモヤモヤモヤ…」ってなっている自分がいて。
「これが嫉妬っていうのか、感情にラベリングするってこういうことなのね〜」って、妙に客観的な感想を抱きながら、1日中外にいた疲れと、嫉妬心からくる疲れとで、私が帰りの電車内で黙り込んでしまった時、「どうしたの?」って聞いてくれた彼氏。

人に頼るのが恥ずかしくて、つらくて、甘えるってどうするんだろう、何が正解なんだろう、またこれで嫌われたらどうしようって思った。
けど、私がぽつりぽつりと語った嫉妬心を、彼氏は寛大な心で認めてくれた。
高2の彼には私の発言の全てはわかってなかったかもしれないし、私だって今思えばどうってことないことだけど、でも私に芽生えた小さな嫉妬心を彼氏が承認してくれたことが嬉しかった。
握った手はとってもあったかかった。


それ以来、甘えるってすごくあたたかいことで、悪いことじゃないんだって思えるようになった。
日本人が1回は聞いたことがある「人という字は〜」ってやつだって、今だったらよく理解できる。

私は家族に甘えるのが苦手で、彼氏にはキッカケがあって甘えられるようになったけれど、それは私がたまたまそういうパターンだっただけで、別にそれはどういう関係性の人に甘えて頼ったっていいと思う。
彼氏に本音を話して甘えられるようになった後、俯瞰的になって気がついたとき、私の周りには私が困った時に手を貸して甘えさせてくれる友達がたくさんいた。
頼れる友達がたくさんいた。

自分の弱いところ甘いところを見せるのは怖かったけれど、見せて仕舞えば案外みんな何事もないように受け入れてくれたように思う。
自分が思っている以上に、イイ意味で友達は自分に対して深く考えていないのかもしれない。愛は深いけれど。
自分だって、友達が頼って甘えてきたらなんだか信頼されているようで嬉しいなって思うし、逆も然りなのかしら。

人間つらい時いくらでもあるし、ひとりの思考能力だけじゃ解決できないこともある。誰かに話すことで思考がまとまったり、モヤモヤがスッキリに変わることもある。

だから自分は大好きな彼氏や友達が困っていたら、手を差し伸べて、出来る限りの支えになってあげられる人間になりたいなぁって思う。「人という字は〜」ってやつです。

甘えるって難しいし、怖い。
けど、今困ってるなら、今つらいなら、一歩だけ踏み出したら、何か変わるかもって思うんだよね。どうかね。


【ひとこと】
高2で甘えを知った私は、大4の今も彼氏に甘やかされブクブクと太っています。
厳しさも大事ですね。
バランスの良い食生活と彼氏の摂取を。


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