私の読書遍歴③ 確立期
推理小説を知ったあとの私はしばらく、講談社文庫の下僕のようなものだった。
綾辻行人さんの「館シリーズ」、島田荘司さんの「御手洗清シリーズ」を瞬く間に読みあさり、有栖川有栖さん、法月倫太郎さんの推理小説にも手を出した。
そのほかに当時はまって読んでいたシリーズがあって、それが篠田真由美さんの「建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ」だ。
綾辻行人さんの「十角館の殺人」を私に薦めてくれた中学の恩師がこのシリーズも激推ししていて、当時、新刊が出るたびに貸してくれた。
ふと気になってAmazonで調べてみたら、「建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ」の全15冊合本版があって驚いた。
シリーズ後半のお話はたぶん読んでいないはずなので、いい機会だから休みの日に一気読みしたい。
また、この時期の読書でとても印象的なエピソードがある。
それはひと月の間に、衝撃的な作品に3つも出会ったことだ。
乱読している時期というのは、好みの作品に立て続けに出会うことは本当に稀だ。
10冊読んで1冊気に入れば良いというスタンスでいたあの頃に、立て続けに衝撃作に行き当たったのだから、盆と正月がいっぺんに来たようなものだ。
いずれもそれまでに読んだことのなかった作家の本で、読んでみて作品の持つパワーに圧倒された。しばらくはこの三作の余韻でお腹いっぱいだった。
それはそれとして、相変わらず純文学も好きで、宮本輝さんの本もかなり読んだ。宮本輝さんの本は、美しく繊細な雰囲気の物語と、ひどく世俗的で時に痛々しい物語の両極があったように思う。私が読んだ中で、前者の最高峰が「錦繍」だと思う。
また、当時の大河ドラマが新選組をテーマにしていたこともあり、幕末物にも目覚めた。
司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」を読んだ後、人から薦められて北方謙三さんの「黒龍の棺」、「草莽枯行く」を読んだ。
そしてその北方謙三さん推しの人に他にも薦められたのが、「三国志シリーズ」だ。
あまりに膨大すぎるため軽はずみに触れてはいけないジャンル、開けてはならないパンドラの箱こと、中国歴史小説に手を出してしまったことが、この時期のハイライトだと思う。