おすすめ本No.1 『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』川上和人
私の読書遍歴をどのように解釈したのかは知らないが、ある日突然Amazonが「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」という本をおすすめしてきた。
Amazonよ突然どうしたと面食らったものの、不遜なタイトルに好奇心を撃ち抜かれ、まったく知らない研究者のエッセイを読んでみることにした。
そしてこの本との出会いが、大袈裟ではなく、私の読書遍歴を変えたのだった。
私は鳥類学者を肉眼で見たことがない。
本書のまえがきによると、鳥類学者は日本の人口10万人あたり1人しかいないのだという。一説では、「人が人生で何らかの接点を持つ相手は3万人」だというから、鳥類学者にお目にかかったことがないのも無理はないし、そんな希少な鳥類学者の著書(それもエッセイ)を読む機会だって、滅多にあるものではない。
本書では、鳥類学者のフィールドワーク(研究者自身が現地に赴き調査をすること)における悲喜こもごも、鳥類をはじめとした動物たち、そしてそれを取り巻く自然環境の様子が語られている。
著者は本書の中で、「生態系は群像劇だ」と語っていたが、著者自身もその群像劇の登場人物の一人として、大いに活躍している。
島での夜間調査中に、著者の耳の奥に蛾が入りこんでしまい、そのまま朝を迎えたエピソードは必読だ(己の耳の中の蛾に「世界はこんなに広いのになぜその軌道を選んだ」と嘆く著者に心の底から同情した)。
本書にはこのエピソード以外にも、フィールドワークの楽しさと大変さがこれでもかと詰め込まれている。またそれらが、論理的なのにウィットに富みまくっているという、人たらしの権化のような文章で綴られているのだから、面白くないわけがない。
鳥類学者を志している人には必ず読んでほしい本であることは間違いないし、そうでない人にもおすすめできる。
まず、本書を読むと雑談力が爆上がりする。鳥類だけでなく、生物全般の雑学が豊富で、ネズミは人類史上最初のストーカーだということを私は本書で学んだ。
「鳥は用事がなければ飛ばない」というのも、シンプルだが目から鱗だった(当然と言えば当然だろうが、なんとなく鳥は飛んでいる状態がデフォルトモードだという先入観があった)
また、スナック菓子のカールが好きな人にも本書をぜひおすすめめしたい。
著者のカール愛が詰まった本なので、カール好きの方はいたるところで共感の嵐だと思う。カールにそこまで萌えのない私ですらカールを食べたい気分になったほどだ。
とにもかくにもこの本のように、存在すら知らなかった面白い本がKindle Unlimitedの大海原には漂っているのだと知ったことは、私にとって大きな収穫だった。(当時この本はKindle Unlimitedの対象となっていた。現在は対象外となっているようだ)
Kindle Unlimitedでは、普段読まないようなジャンルの本を積極的に読んでみることをおすすめする。
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