
まいの挑戦記⑥バイトのお話し
私が居酒屋のバイトを始めたのは、
単純に時給が良かったからだった。
オープニングスタッフ募集で、
普通のバイトより少しだけ高かったし、
みんなスタートラインが同じだから
人間関係も楽そうだなって思った。
実際、最初はすごくいい環境だった。
バイト仲間はみんな仲が良くて、
シフトがかぶると仕事中にこっそり笑い合ったり、
終わったあとに少し話したりすることもあった。
店の雰囲気も悪くなくて、
「バイトってこんな感じなら全然続けられるな」って思ってた。
店長も最初の頃は気さくな人だった。
忙しいときはピリピリしてることもあったけど、
それでも冗談を言ったり、「お疲れ!」って
軽く肩を叩いてくれたりして、
怖い人ではなかった。
でも、それはある日を境に、
一気に変わってしまった。
あの日、私はやらかした。
バイトは昼からだった。
でも、朝から勉強していて、
「少しだけ横になろう」と思ったのが間違いだった。
気づいたときには、
スマホの画面に
バイト開始時刻を過ぎた時間が表示されていた。
一瞬、頭が真っ白になった。
「やばい!!」
急いで店に連絡を入れ、
「すみません!寝坊しました!すぐ行きます!」
と謝りながら飛び起きた。
店長は電話の向こうで
「…わかった、急いで」と静かに言った。
その日はとにかく急いで店に向かって、
何度も謝った。
店長は「気をつけてね」と言ったけど、
その言葉にはどこか冷たいものが混じっていた。
「まあ、一度くらいの遅刻なら…」と
自分を落ち着かせたけど、それが甘かった。
この日を境に、
店長の態度はガラリと変わってしまった。
それまでは気さくに話してくれていた店長が、
明らかに冷たくなった。
最初は気のせいかなと思ってた。
でも、ミスをすると
前よりもきつく怒られるようになったし、
何をやってもイライラした様子だった。
「もっとテキパキ動けないの?」
「お前、本当に使えないな」
前だったら軽い注意で済んでいたことでも、
ため息をつかれたり、
強い口調で怒られるようになった。
最初は「遅刻したから仕方ない」と思ってたけど、
どんどんエスカレートしていって、
どんなに頑張っても何をやってもダメ出しされる状態になった。
それでも、バイト仲間は変わらず接してくれたし、
簡単に辞めるわけにもいかないから耐えていた。
でも、次の日、決定的な出来事が起こった。
忙しい時間帯、
私はオーダーを聞き間違えてしまった。
すぐに気づいて謝ったけど、
店長は険しい顔で私を睨みつけた。
「お前さ、何考えてんの?」
「そんなこともできねぇの?」
そして、小さくつぶやくように言った。
「死ね、無能」
その言葉を聞いた瞬間、
心臓がギュッと縮まるような感覚がした。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
周りのバイト仲間も、
一瞬固まったような雰囲気になった。
でも、誰も何も言わなかった。
私はただ、「あ、もう無理だ」と思った。
次の日から、バイトに行くのが怖くなった。
でも、無断欠勤はしたくなかったから、
「体調が悪い」とだけ連絡を入れた。
すると、店長から返ってきたのはたった一言。
「もう来なくていいよ」
そのメッセージを見たとき、
ほっとしたような、
でも、どこか惨めな気持ちになった。
結局、私はこのバイトを続けられなかったんだ。
バイトを辞めたことで、
また生活費の不安が出てきた。
どうやってやりくりすればいいのか、
新しいバイトを探さなきゃいけないのか。
でも、それよりも何よりも、今はただ怖かった。
また新しい環境に行って、
もし同じことが起こったら?
私は、これからどうすればいいんだろう――。
今日も読んでくれてありがとう🥺
良かったらこのnoteに「スキ」(♡のボタン)を
押してくれるとモチベーションになります🔥
これからも応援してね!✨