初めての連作~「COMCOP」
「七つの海」の次に描いたのは「COMCOP」です。
元々怖い話が好きだったので幽霊ものにしました。私にしては頑張って少年誌を意識してバトルも取り入れたお話になっています。
すでに存在する様々な霊界探偵ものと、少し差別化するために主人公は公務員にしました。「幽霊課」というものが存在する架空の国の刑事です。
元々シャーロックホームズが大好きだったので、舞台のイメージはロンドンっぽさを意識しています(画力の問題であんまり伝わらないかもしれませんが…)、それと映画「バットマン」のゴッサムシティの重厚な雰囲気がカッコよくて大好きだったので、影響を受けています(これまた画力の問題で全く活かせてないかもしれませんが…)
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この作品は最高に難航しました。新人の分際で危うく締切やぶりをする一歩手前でした(当時の編集部の皆さま、その節は本当に、本当にご迷惑をおかけしました…)
その事もあり、この漫画の事を思い出すと今でも胸が苦しくなります。
サボってたわけでもなく、「七つの海」同様に、寝ずに頑張ったのですが、とにかくお話がまとまらず、最後までネームを直しながら作業していた記憶があります。
この漫画ではじめて、「カンヅメ」というものを経験しました。それまでは、かろうじて地元で作業を終わらせていたのですが、この作品はいよいよ間に合わないおそれがあったので、東京に飛び集英社の会議室で数日作業をして、なんとか間に合いました。
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今読み返すと、それほど難しいお話でもないのに、なぜそんなに苦労したのか、いまひとつ思い出せません。
思い当たる節があるとしたら、主人公のコム刑事が、いまひとつおとなしいというか、ひかえめすぎる性格のキャラで、動かしづらかったせいかもしれません。
これは、なぜそうしてしまったのかはよく覚えていません。普通ドラマの刑事ものといえば、ハードボイルド系な主人公が多いので、あえて当たりの柔らかい、優しめのキャラにすることで、かえって目立つかもしれないとの目算があったのかもしれませんが……
これらは後から考えた理屈であって、気づいた時にはこの主人公はこういう性格で、これは作者である自分でもどうしょうもなかった、と言うしかないのが正直なところです。
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この作品を描いた時は、続きを描く構想は全くなかったのですが、「さて、次のネームは」という話になった時、思いのほかスムーズに、続編が浮かんできました。
幸い、「COMCOP」のアンケートが悪くなかった事もあり、次に「COMCOP2」を描くことになりました。
私はそれまで、短編以外の漫画を描いた事がなく、続き物は初めてでした。それでも「COMCOP2」は、比較的苦しまずに描く事ができました。
「2」では、前作で赤ん坊だった息子が成長して、準主人公として物語に参加していますが、そのアイディアは良かったのではないかと思います。
(お父さんの外見があまり変わってませんが、老けにくいタイプという事でどうかご容赦ください…!)
私は子供の目線で、物語を描く方が向いていたのかもしれないと、その時気づきました。人生経験が少ない自分が、背伸びせずに描けるのは、幼い者の視点なのかもしれないな、などと思いました。
息子との掛け合いができるようになったおかげで、コム刑事の弱点(かなりの親バカ)という面や、過去の出来事等も見せる事ができて、良かったと思います。
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今「COMCOP」のシリーズを読み返してみて思うことは、私なりにジャンプっぽいヒーローを描こうとした割には、結局「自分がカッコイイと思うヒーロー」しか描けなかったのだな、ということです。
私がカッコイイと思うヒーローの一人に、「刑事コロンボ」が居ます。
彼は抜群に頭が切れるんですが、その賢さをひけらかしたりしません。その風采の上がらない外見から、頻繁に犯人から見下されたりもするのですが、いつも穏やかで低姿勢。
そして、彼らのトリックを暴いた後も、犯人に対して勝ち誇ることもしません。
仕事に誇りを持っている男が、粛々とその任務を遂行するカッコよさ。誰に手柄をひけらかさなくても、自分の成し遂げたことの勲章は、彼の心にあるのです。
そんな「格好つけないカッコよさ」を、描きたかったのかなと今は思います。
加えて、悲しい過去があったとしても、辛い気持ちは自分だけの胸に秘めて、他人にどこまでも優しくできる人。
そんな人こそが、私にとってはヒーローで、私はそれを描こうとしていたのかなと思います。