再生航空燃料とは
全日本空輸(ANA)は4日から航空貨物の荷主企業に、再生航空燃料(SAF)を使って減らした二酸化炭素(CO2)の削減量を割り当てるサービスを始める。国内の航空会社では初めての取り組み。
航空貨物の利用が多い電子部品や医療、生鮮品分野の荷主企業の活用を見込む。世界的な脱炭素の流れを受けて自社の直接排出だけでなく、「スコープ3」と呼ばれる取引先などの供給網全体の排出量の削減まで投資家から求められていることに対応。SAFは従来のジェット燃料に比べてCO2の排出量を8割減らせる。
再生航空燃料とは
廃食油やサトウキビなどのバイオマス燃料、廃プラスチックなどから生産される燃料で、持続可能な航空燃料を表す「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字からSAFと呼ばれる。原材料の生産から製造、燃焼までの工程で、ケロシンなど既存のジェット燃料に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を8割減らすことができる。
現在の需要に対して生産量は0.03%とごく僅か。生産の大半をフィンランドの石油精製大手ネステなど海外勢が占め、国内では生産量はほぼゼロ。
経済産業省は日本の空港で国際線に給油する燃料の1割をSAFにすることを石油元売りに義務付ける方針。
SAFの国産化に向けた課題とは
最も大きな課題が「安定的な原料の調達」。
SAFは古着や家庭ゴミ、それに使用済みの食用油といったさまざまな原料からつくることができる。
団体に参加している京都市の燃料メーカー「レボインターナショナル」では、全国の飲食店などおよそ2万5000か所から引き取った廃油などを原料にSAFを作ることを目指している。
SAFの研究を行っている運輸総合研究所の試算では、国内にある使用済み食用油や家庭ごみなどをすべて生産に利用できれば、国内での航空機燃料のほぼ全量をSAFに置き換えられるとしている。
ところが、すでに本格的に生産を始めている海外の企業などが、使用済み食用油を高値で買い取るケースが増えていて、ここでも「争奪戦」が始まりそうな気配。
SAFは今のままでは従来の燃料の2倍から10倍のコストがかかるとされていて、メーカーが量産に踏み切るには、技術革新などによる大幅なコスト削減が不可欠となっている。
SAFの国産化が進まなければ、物流が滞り、一人ひとりの経済生活にも影響が出かねない。今回の団体のような取り組みを通じてSAFの重要性を広く知ってもらい、多くの原料をSAFに振り向けられる社会をオールジャパンで実現していく必要がある。
国産SAFの実現は、航空業界の脱炭素だけでなく、日本のエネルギー業界の変革につながる可能性もあるだけに、今後も注目していきたい。
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