知らない世界を観て今を感じる「DUNE 砂の惑星」「関心領域」「フジヤマコットントン」*2024年5月に観た映画
普段接する機会がない人と会うと
その人の佇まいから話から振る舞いまで
すべてが新鮮で興味深い…ですね
映画の体験って、それに近くて
今月観た映画をあらためて振り返ると「何でもアリ感」満載
最新作あり、過去の優れた作品あり、ドキュメンタリーあり
日本の京都市の狭い範囲で行ったり来たりしているワタシ
そやけどいろんな人や出来事に出会い
実はそれは世界につながる標(しるし)みたいなもん
無関係に思える事から「は!」っとしたり
自分の何かに大きなヒントとなったり
過去への認識が変わったり…となるから不思議
今月は以下の映画を観ました(すべて映画館)
フジヤマコットントン(日)
悪は存在しない(日)
DUNE 砂の惑星(米)
アリア(日)
DUNE 砂の惑星 PART2 (米)
パリ、テキサス(西独・仏)
ハーメルン(日)
無名(中)
ミセス・クルナスvs ジョージ・W・ブッシュ(独)
関心領域(米、英、ポーランド)
リンダリンダリンダ(日)
フジヤマコットントン
なんで、この映画を知ったんだっけ?
・・・忘れたけど、風薫る5月最初の1本
「仕事」って何やろ?
最後にカメラの得意な彼が聞いてた
そやけど、彼 答えがわからんから聞いてたん ちゃうねん
彼は彼の答えがあって
目の前の人はどうなんやろ?って聞いたのよ
ハンディがある人たちの「みらいファーム」
うまく言葉にできはらへん
・・・それもワタシらと一緒
目の前に起こる事にショックを受けたり
なかなか立ち直れなかったりする・・・それも同じ
彼らをそのままに受け入れられないワタシたち
それって、自分を自分がなかなか受け入れられへん
事に通じてませんか
富士山がいつも彼らを見守っていて
彼らも「みらいファーム」に来たくて
スタッフはいつも彼らを彼らのまま受け入れて
そのままに
受け入れてもらいたんやん?
そやけど、自分は他者をそのままに受け入れてへんやん
そーいう事思った
うん
悪は存在しない
大注目の濱口亮介監督最新作
平日夕方の割に半分近く座席が埋まる
皆さん、ひとりで観に来られたよう
冒頭の音楽の奇妙な感じ…違和感
音楽と映像をセッションのように作った映画らしい
最後があまりに唐突でエンドロールも短く
客電が点いても呆然
あの瞬間からずうっとずうっと「どういうことなん?」と
頭のどこかで考え続けていた
「バランス」や!
彼らが花を見つけた瞬間、保たれていたバランスを
高橋が動いたから巧はああしたんや
高橋は彼自身が「バランスが取れてない人」
黛は状況を見て考えて軌道修正できる「バランスが取れる人」
巧はもっと大きな視点でバランスを見て捉えてる人
(自分のバランスはもちろんのこと)
人間のエゴ そこで暮らす人と儲けようとする人
そこで暮らす鹿と鹿を撃つ人
いろんな含みがあって物語は分厚い
巧の言葉ひとつひとつが伏線になっていて
なんと皮肉なこと…
落とし穴の存在を知っていて落ちてしまう、みたいな
巧役の人、めっちゃ良かったなー
セリフ棒読み、あれ”敢えて”やろうし
調べてみたらスタッフとして参加したらしい…
あのうどん屋さん夫婦は濱口ワールドにしっくりきてる
濱口監督の「ハッピーアワー」に出てはった俳優さんや
なんか再会したみたいで嬉しかった
高橋のムッとしたり、うまく立ち回ろうとする感じから
婚活してるとか、対住民に本音をポロリとこぼしたり
実に複雑なワタシらと同じ人間そのものやった
なんとなく、その辺りが「悪は存在しない」やろか
ラストのアレが「誰が悪いわけでもない」感じ
例の計画があの町に持ち上がった時点で
物語は始まっていた気がする
DUNE 砂の惑星
PART2が出来たことでなのかな?
出町座で1と2を同時上映
「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ君が主役
SFファンタジーって言うのかな?
物語を映像化するって、文章から舞台や民族や文化を作ってゆくから
ものすごいエネルギーが必要やろうね
そのエネルギーがさらに膨らんで大迫力で観る側に迫る
無国籍感、過酷な環境、不思議な力
そやけどやっぱり争いがあるのが残念やな
一体、ポールは何に呼ばれていて、どうなってゆくのか
謎めいていて、それがまたティモシーの雰囲気に合ってるのよね
出町座の地下、音響設備が抜群らしいのやけど
そこで”大音量クセツヨ上映”だけに振動が伝わるほどの
音楽や音、エンドロールなど文字が音で揺れていた!
これほど壮大な物語が2時間ちょっとで終わるはずはなく
PART2ありきやったんでしょう
スタッフもすごいけど俳優さんもみんな不思議な魅力を持つ人ばかりで
不思議な設定に見事に溶け込んでいる
アリア
坪川拓史監督特集にて
全然知らん監督作やのになんで観ようと思ったのか
予告編が美しくて なんて言うのか
自然に観る方向へ導かれたような・・・
で、ちょっとさっきのリンクを見て監督さんに興味が湧いて
舞台挨拶付きのを観た
冒頭から美しく、何やらよく知ってる?ような(知らんのに)
世界に「こっちこっち」と引き込まれてゆく
ピアノの調律シーン、表情がない男
ちょっと変わった友達やその知り合い
ワタシの記憶の中なん?ってくらい、しっくりくる世界
あんな人形を動かす仕掛け、初めて見たなー
途中からロードムービーへ
北海道や東北の大自然とすうっと入ってくる音や音楽
彼は彼女と出会った事だけじゃなくて
すべての出会いと体験からじわじわ心の傷が直っていったんやね
「ありがとう」って言えたね
亡き妻の願いが叶えられなくても
その願いを叶えたいと辿った体験は、きっと亡き妻が見てはったやろな
もうええよ、って彼女言うてはるやろうで
ミッキー・カーチスや大物感ありありの若松孝二監督
正司歌江さん・・・キャスト、すごい
上映後の監督の登場、飄々とした話の上手なひと
あの監督さんに出会って映画がますます静かに輝く
DUNE 砂の惑星 PART2
大音響と怪しげなムード、もりもり ムンムン
からだやアタマに響く音響がすげーーー
ティモシーがど迫力な声を出す
アトレイデス家の息子として、そして不思議な力を携えたリーダーとして
線の細いティモシーが命がけのアクションを魅せる
彼の母がまた不思議なひとで
なんか変な方向に行った?息子と道を分かつたようで
彼の見るあの夢はパート3なん?
チェニとの関係は公然なのか
ふたりは自然に寝室を共にする(と、言っても砂漠にテント生活)
そやけど、皇帝?の座につく彼は公的な妻を娶ると堂々発言
(皇帝、ってところで 納得させられる)
チェニの口惜しそうな怒りの表情
ラストも彼女の・・・
パート3を予感させた終わり(やんな?)
いやー、フローレンス・ビューが出てきて「若草物語」展開
レア・セドゥは母と同じ不思議な力を持つひと
なんかこれから始まるストーリーの伏線止まりのものがいくつも
それにしても砂虫に乗る迫力満点シーン
あれ、気持ち良いやろなー命がけやけど
フレメンの人々の凄さや知恵を感じる
一体、この物語はどうおさまるのん?
気が遠くなるようなスケール
パリ、テキサス
ヴィム・ヴェンダース監督の「PARFECT DAYS」が大ヒット
「パリ、テキサス」の話もいろんなところに出てくる
午前十時の映画祭にて
あんな荒野を装備もなく歩いて移動するってクレイジー
言葉を発しない、表情も動かないトラビス
彼の目的も背景も何もわからず淡々と物語は進む
音楽がめっちゃ良くて
あとで見たらあのギターはライ・クーダーやって
ずっとインストで世界観のひとつにどっしり存在感
トラビスがジェーンを見つけて
話だけで彼女の心を動かし、無理な説得でなく
ハンターに会わせる展開は良かったけど
なんで?トラビスがその後とった行動は不明
…ハンターに残した言葉に嘘はないのやろけど無責任ちゃうかな
愛し過ぎるとクレイジーになってしまう人間
自分が怖いって、それも自分のひとつの側面ですべてちゃうのにな
無常感と言うのか「PARFECT DAYS」に流れる同じものがあった
ちゃんと生きてるんやけど流れてゆく人の生き方と言うか
人生という長い目で見た時に到達する境地なんかな
ハーメルン
坪川拓史監督特集にて 2本目
あんな校長先生がいるのなら会いに行ってしまいそう
確かに懐かしい場所に誰もいないって
寂しいかもなー
袖振り橋を2両編成の列車が通過するあの雪の日のシーン
大きなイチョウの木が黄葉して金色の絨毯が周りにできたシーン
木造の校舎、木の机と椅子
校長先生役の坂本長利さんの94歳!の例えようのない
温かいお人柄が伝わるいいお顔
同じく、って言うのが申し訳なくなる先生役の風見章子さんの
夢見るような表情と鶴を折る姿
もう、うつくしいもの満載
倍賞千恵子さんの歌や佇まいも素晴らしくて
「アリア」の時の舞台挨拶で監督が
脚本はこの俳優さんと決めて書くと仰っていたけど
その気持ちが実によく分かるキャスティング
廃校になった母校が取り壊される
かつて若くて元気だった先生が老いて亡くなる
その背景に戦争の影がある・・・切ない現実は消す事ができひん
あの映画館の工藤さんも偏屈な頑固ジジイの内面が感じられて
ご年配の俳優陣の活躍が光る映画
ワタシもおばあちゃんまで生きられたら
あんないい顔していたいなー
無名
第二次世界大戦中、いくつもの勢力争い混乱の中国
「サタデー・フィクション」と被るスパイものやけど
テイストが全然違って、スタイリッシュでぞわぞわ怖い
一体、この人らは何者?
場面が行ったり来たり
これどういう意味がある?というエピソードも同じ
当時、侵略中の大きな顔をした日本兵もたくさん出てきて
中国の人がどんな目にあったか、どんなに中国の人が日本を恨んでいたか
その憎しみから復讐をコツコツやってたり
日本人に仕えながら実は…という人がいたり
同じ組織にいるからと言って一枚板ではないワケさ
トニー・レオン…歳を重ねて、落ち着きと信頼
一体何者なのか、得体の知れないところや
残酷さに動じないところも
ワン・イーボーが恐ろしく際立ってた
あのきれいな顔でものすごい殺気を漂わせ容赦ない暴力や殺人
目が、目が怖かったよ
そやけど、つーっと流れる涙がきれいなのよね
冷酷な人が、泣くのよね
あの血のように赤いたっぷりのソース 蓋付食器の中で
バタバタする海老、ソースを飛び散らせるシーン
それをバリバリ食べる彼・・・(こえーよ)
正直、複雑な話はわからんが
やっぱりさ、武力や暴力で争う事は無意味で
そこで命を落とす事はただただ虚しい
日本人俳優さんがたくさん出てた
日本人を演じる若干スムーズじゃない日本語を話す俳優さんもいた
いろんな人が世界で活躍してる
そして、やっぱり中国映画もレベル高い
スタントなしのアクションだったとか
先月の韓国映画「犯罪都市」もど迫力やったけど
こちらも凄かったよ・・・
同じアジアの人たちやのに日本のアクションとちがう
何がちがうって迫力?キレ?うーんイマイチ言えてる気がしない
公式サイトにメイキング映像があって
緻密に組み立てる感じ見ておくれやす
ミセス・クルナス vs ジョージ・W・ブッシュ
おかんの愛って、鬱陶しい
それでいて振り切れへんし、時々恋しい
ミセス・クルナスがいいひんかったら彼はまだグアンタナモかも
まさかジョージ・ブッシュとの対決になるとは…
スケールが大きい…
けど、要はそこやってのが明白ね
国のトップで大きく変わる体制や考え方
困難が多すぎて、おおらかで明るいミセス・クルナスが挫けそうになる
お涙頂戴でなく、ドキュメンタリーのように時間を重ねる
ドイツに住むトルコ人家族 クルナス一家
ドイツ人弁護士ベルンハルト
実話を元にされてるけど、実に”今”を感じさせる設定よね
なんの罪も無い人が最低最悪のグアンタナモに5年…
「暗闇が美しい」と言った彼
家に帰れた後も、大変やったやろなぁ・・・
昔のハリウッド映画みたいに「スッキリ!」な終わり方じゃなく
え?な感じやけど、これぞリアル
関心領域
映画とは少しズレるが
ナチスを扱った映画はめっちゃたくさんある
なのに、まだこうして撮られて公開される
少し前にいつものミニシアターで本編前の予告編を見ていて
枯葉剤の影響でつながって生まれた双子の男性のドキュメンタリー
戦争をテーマに作品を作り続けるアーチストの映画
・・・過去から逃げ切ろうとする日本と
今もこんな爪痕を残しているあれは何だったのかと
問い続ける他国や世界中の人々(もちろん日本にもいる)
戦争は過去のこと、ちゃう
で、この映画なんやけど
冒頭から真っ暗なスクリーンに何の音かわからないのが続く
なんかイヤな感じが漂う
近くの川辺のピクニック、ジープに乗ったドイツ兵
大きな庭のお家の家族、塀の向こうに見える建物
いつも夜中でも何か音がしている 遠い音で悲鳴?銃?犬が吠えてる
説明になるようなセリフはない
気持ちわるいのは、ここの奥さんが歯磨き粉の中からダイヤを見つけて
それから中を探すようにしていると、奥様たちとのお喋りで
ニコニコしながら喋っていたり
汚いもののような扱いをしているくせに
彼らから取り上げた衣類や口紅を身につけたり
ガス室の計画を旅行の話でもするように夫婦で平然と話していた事
不思議な程、何人もの使用人がいて一様に無表情で・・・
この状況でよくまぁ・・・とワタシは思うけど
当時の多くのドイツ人はこんなものやったんやろな
幼い娘に絵本を読んでやるシーンの前に
まるでお話のように違うタッチで少女が何かしているシーンがあった
わからんかったんやけど、あぁして塀の向こうの人に
〇〇を渡していたんやろなー
あんな子どもが・・・(公式サイトを見ると12歳だったとか)
こんなふうに、あれはこういう事かも?と
引っかかったものを思い返すとわかるような仕掛け
人は見たいようにしか見ない、と言う
これだけ情報が豊富な時代、見えないように操作もされ選択もできる
「関心領域」すごいタイトルやと思う
リンダリンダリンダ
4人の女の子たちをぎゅっとしたくなった・・・
あぁ、こんな高校生時代を過ごしたかったナ・・・
山下敦弘監督の新作公開に合わせて、過去作の上映
なんか記憶の隅に引っかかっていて観に行ったん
ぺ・ドゥナ…是枝監督作品で知った韓国の女優さん
めっちゃキュート
等身大って感じやけどやっぱり表現力あるある!
細部までリアルにこだわる監督さんなのか
今時の女子高生、それぞれの暮らしや恋
懐かしい学校のあの感じ
華々しい事など何もなかった高校時代やけど
彼女たち4人がまるでワタシの同級生のように感じる
ミュージシャンが出てる感めっちゃあって
歌、うますぎる! なんでそんなギター弾けんねん!
(ワタシは知らん人やったけど、歌や演奏にプロを感じる)
ぺ・ドゥナも声量たっぷりのボーカル
そしてブルーハーツのヒロトの兄弟 甲本雅弘が先生役で(なんと!)
←そしてうまい!
香椎由宇や松山ケンイチなど
いやいや、ゴーカメンバーですです
きゅんきゅんして彼女たちが愛しくて
あぁ、やっぱ若い頃にしかできひん体験ってある!
無理!と思っても飛び込め
恥をかこうが失敗しようが
飛び込まなつかめへんダイヤモンドがある
孫さんは飛び込んだで
ワタシも彼らと一緒に飛び跳ねて歌いたくなった♡
リンダリンダリンダ Wikipedia
リンダリンダリンダ 予告編
この1ヶ月、こころの赴くままに観た映画
こうしてまとめようとすると我ながら
「どうすんねん」と突っ込みたくなる(笑)
この混沌として脈絡ないラインナップ
これって世界を象徴してへん?
世界はもっともっと大きくていろんな人や存在や事象があって
その世界の一部のちっちゃいところで
誰かや何かを否定したり排除するような考え方があって
つくづく、否定や排除より
受け入れられなくても、公に否定はせずに「共に生きる」方法を
みんなで考えた方がええんちゃうやろか
そうしたところで何も不都合は起きひんと思うねんけどなー