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裏切る・裏切られる「サタデー・フィクション」「HUNT」「リアリティ」*2023年11月に観た映画

今月はなんでか知らんけど
人の心の”闇”や社会の”闇”を描いた映画が多かった

「裏切る」ってネガティヴなニュアンスの言葉やけど
時にはそれが自分にとって大切な抵抗かもしれん


  • インファナル・アフェア(香港)

  • インファナル・アフェアⅡ(香港)

  • 栗の森のものがたり(スロヴェニア・伊)

  • インファナル・アフェアⅢ(香港)

  • 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?(仏・独)

  • サタデー・フィクション(中)

  • バーナデット ママは行方不明(米)

  • HUNT (韓)

  • リアリティ(米)



インファナル・アフェア


香港が中国に返還される激動期の闇社会と警察
3部作が4Kで公開
男性率高し、の客席

20年くらい前の作品やけど
ちょっと時代遅れ感が出そうなものやのに
ただストーリーを流すんじゃない手法がむしろ新鮮やった

潜入捜査の難しさや捜査員が精神的に参ってしまう話を
小説で読んだ事がある

確かに命がけになるから、普通の神経では参ってしまう
しかも警察の援助の薄さったら・・・

裏切り合い、一体誰が味方で誰が敵なのか
その恐怖を見ているワタシにも味あわせる
なるほどファンが多い訳や

インファナル・アフェア3部作 公式サイト




インファナル・アフェアⅡ


3部作なので先へと話は進むの?
主役はひとり○〇〇けど・・・
と、思いきや見事な裏切りの始まり

役者さんたちも大したもの
時間の経過がよくわかる外見の変化

この時の裏側では的な物語の厚みを増す構成で
あー、なるほどねと
ますます観客を沼に引っ張り込む

それにしてもサムの奥さんの強さったら半端ない
中国の女性は強い(世界どこでもきっとそうやろけど)
甘さのかけらもない、そこがたまらん魅力なん わかるわ

スパイって、スパイだけに徹してられず
表の顔も持つ訳やから強い不安と緊張で崩壊するの、わかる
悪を裏切っているのと、一応の正義を裏切ってるのん
どっちがしんどいやろ?

インファナル・アフェア3部作 公式サイト



栗の森のものがたり


ヨーロッパの陰影と言うのかな
映像がとてもきれい
光と影の中に、生きてゆく哀しみが漂う

男たちの賭けのシーン
ジャンケンでもなさそうやけど
迫力があって頭の働きが早よないと理解できひん感じ

第二次世界大戦後のまだ混乱期を脱していない街
その質素な暮らしぶり
素朴な人々

棺を埋めるようなサイズの穴に目一杯栗を埋める
…アレは何を意味しているんやろ?
戦争で亡くなった人たち?

スロヴァキアの映画って、初めて観たんちゃうかな
静けさを魅せるってすごいな

栗の森のものがたり 公式サイト




インファナル・アフェアⅢ


無表情のエリート ヨンが不気味で
ラウとの丁々発止にヒヤヒヤ

ヨンやシェンとヤンが関わっていたエピソードで
なぜ殺し合いにならず友情が生まれたのかが
わからんかった

どこまでが彼らの妄想でどこまでがホンマのことか
コレ、3作とも言えることやけど

ラウとリーが手を繋いでいたのも???

ラスト近く、あの角度で撃って体だけが不自由になったのは不自然
脳に障害がないって不自然

でも、やっぱり斬新な構成かつ魅力的な登場人物
トニー・レオンとアンディ・ラウ(ワタシはトニー派!)の華やかさ
”ヤクザもの”やのにスタイリッシュ

インファナル・アフェア3部作 公式サイト(前記と同じ)



私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?


話題の作品でイザベル・ユペール絶賛の声に
ちょっといつもとちがう気持ちで観に行った

原題は「La Syndicaliste」(労働組合活動家)
事実に基づく物語で脚本はモーリーン自身に何度もチェックを受けて
彼女が納得ゆく形での映画化だったらしい

原子力発電会社の労働組合の役員…
冒頭はハンガリーの原発で作業員は女性ばかり…
彼女らは解雇されると言う・・・

そんな始まりから、5万人の社員たちの雇用や労働条件を守ろうと
日々働くモーリーン
年頃の娘に反発されたり、優しい夫や友達・・・フツーの彼女の暮らし

そこからがハラハラ、苦いものが胸から全身に広がってゆく展開
ワタシ、伊藤詩織さんを思わずにいられへんかった
なんで被害者がこんな目に遭わなあかんの!?

あまりの理不尽さに息が苦しくなり目が眩む
それでも家族は彼女を見捨てない、たとえ彼女が絶望しても

いやーーー、寄せられたコメントと顔ぶれをご覧あれ
最後に記された「結局こうなりました」は彼女たちが主張していた通り
政界や経済界が絡む闇の怖さとそれでもたくましく生きる人間の
明らかにちがう対比

最近読んだブレイディみかこ氏著「R・E・S・P ・C・T」を
あらためて胸に刻む
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? 公式サイト



サタデー・フィクション


色もなく音楽もなく…でもロウ・イエ監督
コン・リー、オダギリジョー、中島歩?
他にも白人の主要キャスト(期待度高いユニークなキャスティング)

なんか気になって、絶対観ようと思ってた

「ブラインド・マッサージ」の監督で
”リアル”やけど撮り方がきれいでハッとさせるシーンがある

太平洋戦争直前の上海
緊張感高まる時代と場所
”租界”の意味を知らずにいた・・・

石を投げたらスパイに当たる…ぐらいスパイだらけ
ストーリーはさほど複雑ではないものの
なかなかニクイつくりになっていた

コン・リーさん 相変わらずきれいで謎めいていて
何やらワケありっぽくって
劇中劇と合わせて、どこまでがお芝居かホンマかわからん

劇場やホテル、カメラが役者についてまわり
観客は迷路に入る

はー、そうでございますかと脱帽の展開
安定感抜群の主要キャスト
中島歩、頑張ってる!

観賞後、舞台挨拶の映像を見て
あ、そうなんやとわかった事もいくつか

中島歩の声や話し方、醸し出す雰囲気が
以前から印象に残る人やなと思っていたけど
彼はこれから、さらに羽ばたくかもよ

サタデー・フィクション 公式サイト




バーナデット ママは行方不明


ケイト・ブランシェットって聞いたら、やっぱり気になる
だって「TAR」凄かったし
アレって、男性でやろうにも適役の人って思い浮かばへん

本来持っているものを出せるって
まわりの環境や人間関係の存在は絶対必要や
異才・天才って、そこはすごくても他は絶望的だったりするらしいから

順調だったバーナデットが自分の良さを活かせなくなる
彼女は女性
結婚、妊娠、出産がそこに関わるなら
やっぱりさ、パートナーの理解や力が必要よな

さすがバーナデットの娘ビーの賢さ、個性の現れ
14歳らしいとんがり度と超越したしっかりしたモノの見方

パーフェクトを求めるな!
男性にはそこまで求めへんやん
社交的で仕事できて家事までできる…って求めへんやん

女性にはすべてパーフェクトこそが素晴らしい的に持ち上げる
そんなん、あり得ん

人間不信、とーぜんやろ
うまくやれへんというより、彼女にとって今の環境どーなん?
そこに夫が娘の指摘で気づいてゆく

いやーーー、痛快

ビーとバーナデットがドライブ中
「Time After Time」を熱唱するシーンがええなーーー
シアトルって雨が多いの???

南極の氷河をカヌーで巡る
・・・言葉をなくす眺め!ワタシも見たい…(けど擬似体験したよ)

ケイトをはじめ役者さん、素晴らしかった
ビー役の彼女、素晴らしかった
(14歳みたいなビミョーな時期って難しいと思う)
夫、娘、バーナデットのハグのシーンの美しいこと!
(氷河に負けてへんし)

バーナデット ママは行方不明 公式サイト



HUNT


いやーーー、スパイものの波が来てる?
「サタデー・フィクション」に続き、これもKCIA時代の複雑なスパイもの

韓国の民主化が始まっている
デモの学生を捕まえてえげつない拷問
でっち上げてスパイの大物に仕立て上げる…

こういう韓国の負の歴史や闇をガンガン描く韓国映画界
大統領が代わり、またそこにも変化があると聞くが・・・

あの女の子とパクは親子ちゃうの?
何であの女の子、ひどい暴力を受けてるのにけろりとしてるの?
パクとキムの間も酷い因縁があるみたいやし…

凄まじい銃撃戦、カーアクション、容赦ない拷問シーン
お互いを監視させる部長
内部のスパイ

北と南の関係、民主化を望む勢力との攻防
話が進むスピードがどんどん加速して
イマイチ理解が追いつかへんけど、まーいいか!

チョン・ウソン氏は「私の頭の中の消しゴム」の彼?
ずいぶん年月が経ったのか
役者さんだからなのか

どこかで見た役者さん達がたくさん出てる!
HUNTは「狩り」という意味で
フィクションではあるが
あの当時の韓国を痛烈に批判している内容やと思った

HUNT 公式サイト



リアリティ


オフィスのシーンから車内、家に帰ってきた感じ
窓をノックする音が強くて、何かが起こる合図のよう

FBIだと言いながら、なぜすぐに身分証を出さへんのやろ
令状があると何度も言うわりに
だいぶ経って家に入ってから見せるのも、心理的圧迫を与える為?

冤罪モノかと思った
無実の人を陥れる様子を映画にしたのかと…

本当にあった事件の音声を一言一句書き起こしたモノ
と最初に断りが入る
劇中、本物?が流れたり、彼女の写真が映される

「リアリティ」とは彼女の名前
この事件の事、全然知らんかった
こんな若い女性が国家安全保障局(NSA)で国家機密に関わってるなんて
映画や小説としか思えへん・・・

マッチョな男達がゾロゾロ現れて
家に入り私物をすべて調べスマホも取り上げられ
時に妙に近づいたりしてプレッシャーをかける様子は
彼女、怖かったやろな

”第二のスノーデン”・・・スノーデンの名前は知ってたけど
ラストに彼女の言葉が紹介されていた
「私は米国民にも仕えていると宣言していた」だったかな?

国としては都合の悪い事やけど
彼女は公務員として国民の利益のために動いた
4年も服役したと言う・・・
(ま、公式サイト読んでくだされ)

リアリティ 公式サイト




「裏切る」を言い換えれば
抵抗する、反旗を翻す、寝返る、反逆…
どことなく不穏な気配が漂う

大事な居場所を人を裏切る辛さ
裏切ってるつもりが相手も裏切ってたりして
もう何がなんだかわからない、ってのもあったな

違う角度から見ると
間違っていると捉える何らかの意思表示だったりする

これは自分の生活の安定より大切だとわかっていても
黙って何もしないではいられない
でも犠牲になっている…狭間で苦しむのが人間なんやと思う

「HUNT」の2人の主人公は
自分達の仕事が狂っている事をわかっていたと思う
でも…それぞれの理由があった

自分なりの矜恃を持つ
今の状況で最善を選ぶ
時を待つ

「リアリティ」の彼女は自分なりの正解を
苦しみながら掴み取り、だから堂々としていて強いのやわ

「モーリーン・カーニー」もなかなか骨太で
ここでも女性が酷い目に遭いながら
それでもまた立ち上がって、できることをしようとする姿は
「あんたはどうなん?」と聞かれているようやった



















自分がええなぁ、おもしろいなと思うもので人とつながり、楽しく働けたらなぁ。