株式会社の起源とゴーイングコンサーンの話
知人のFBタイムラインで質問があったので、簡単に書き留めておきます。
1600年ごろ、「東インド会社」というものがヨーロッパで登場します。
東インド会社は航海を通じて世界各地との貿易や植民地開拓を行うことを目的とした会社で、イギリス東インド会社、オランダ東インド会社、スウェーデン東インド会社、デンマーク東インド会社、フランス東インド会社…などなど、いくつか種類があります。
それらのうち、オランダ東インド会社は世界初の株式会社と言われています。
ちなみに、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでも似た名前の会社が登場しているので、見たことのある方なら「あ~、あいつらか」と気づくことでしょうが、あれは東インド会社をモデルにした「東インド貿易会社」です。さらに言えば、そもそも東インド会社はカリブ海には進出していませんでした。
全体損益計算
これら東インド会社の多くは、いわゆる当座企業と呼ばれるものでした。
お金を集めて、
航海に行って、
色々なものを買って来て、
それを売って
出資者にそのお金を分配する。
この場合、この1つの航海を完結させるごとに、損益を計算して分配額を決定する必要があります。このような計算の方法を「全体損益計算」と言います。1つの航海で完結するビジネスは損益計算の単位としてとても分かりやすく、出資した人にとってもまさに明瞭会計と言える仕組みだと思います。
期間損益計算とゴーイング・コンサーン
しかし、現在の企業が行っているビジネスは、このように容易に切り分けができるものではありません。毎日毎日、ビジネスを継続しているので、「航海の終わり」がいつ来るか分からないわけです。
…いやむしろ「終わりが来る」なんてほとんどの企業は考えていません。いつまでも成長を続け、いつまでも利益を上げ続け、いつまでも社会に貢献し続けるのが企業の使命だからです。
というわけなので、1年に1回決算日を決めて、その期間の分だけ損益を計算しましょうというルールになった。これを「期間損益計算」と言います。
そして、この期間損益計算には、先ほど書いた「終わりが来るなんてほとんどの企業は考えていない」という前提条件が、とても大事になってきます。
この前提条件のことを、日本語で「継続企業の前提」、英語で「ゴーイング・コンサーン」と言います。
現在の企業会計では、このゴーイング・コンサーンを前提としたルールがたくさんあります。例えば「減価償却」もそうです。建物を建てるのにかかった費用をを何十年も先まで繰り延べて計上できるのは、その建物を建てた会社がその建物を使い続ける間、倒産しないという前提があるから。
ちなみに、もし万が一会社の経営が傾いて、もしかしたら「航海の終わり」が近いかもしれない、と判断したら、「うちの会社は継続企業の前提に疑義があります(=倒産する可能性がちょっと高いです)」といったことを決算書に追記することが求められています。