代官山蔦屋を「おいしい観察。」
先月からこっそり始めたフィールドワークプロジェクト「おいしい観察。」。諸々準備が整ったらちゃんとオープンしようと思っている、そんなβ版な期間ですが、今回は代官山蔦屋でフィールドワークをしてみた。個人的にはまあまあ良く来る場所ではありつつも、客観的に空間として観察したことはなかったので、いろいろと発見があったなあと。振り返りメモ的に書いてみる。
「時間軸」を提案に使うための本
まず見てみたのが、代官山蔦屋の「編集方針」について知るための、「特集コーナー」の中身について。本屋であって本屋でないくらい、本以外のモノコトが売っているのがあそこの特徴なので、いろいろと引きで見てみたら、すごい手間暇かかっとるなあと。
・スターウォーズ×立体造形
・ヨシタケシンスケさん棚
・父の日にはこの映画をどーぞ棚
・「光」カンヌ映画祭記念
・ビートルズ「サージェントペッパー」発売50周年記念特集
・スティング特集で、スティングが作ったワインも売ってる
・Switch表紙と連動して、坂本龍一のアルバム棚
・旅の道具棚
・デンマークの暮らし特集
・365日のパン。バルミューダのトースターまで売っておる
・ウルトラライトをめぐる旅の本棚
…
などなど。並べてみると面白い。で、いろいろ考えてみたんですが、ひとつの大きな特徴は「時間軸」。それぞれは、タイトルだけみると新しそうなライフスタイル提案なのだけど、人って案外、本当に新しいだけの提案にそんなに乗っかるほど、アグレッシブじゃないのよね。長続きしなさそうとか、本だけ買って満足しそうとか、頭のどっかで三日坊主抑止装置が働くのだと思う。その時に「時間軸」をうまく見せることで、「たまたま蔦屋がぽっと出しの提案をしているだけ」なのではなく、「歴史的に裏打ちされたライフスタイルの進化版なのよ」っていう見せ方を上手に作っているように思う。旅のITグッズの隣に深夜特急をおくみたいな。新しいコト提案の根拠に「本」を使っている感じ。本を売りたいというより、本を確からしさにして、コトを売りたい。本は根拠として機能している感じ。本を隣に置くことによって、新しい提案は、「本質感」を帯びる。あの空間の、なんともいえない「それっぽさ」はこの編集方針によってできている気がした。
でもみんな「CREA」と「美的」を読む。
しかししかし、結局のところ、あの空間の中で人々は何を読んでいるのか。高価なアートブックをみんなが読んでるわけはないのだけど、いろいろ見ていると流派はこんな感じなのではないかなと。
・雑誌大量一気読みタイプ
・本は無視で黙々と作業タイプ(試験/資格勉強派も含む)
・目的型情報収集タイプ(ハワイ旅行を前にハワイ本を読みまくる的な)
・ルーティンタイプ(多分、毎週決まった時間にビジネス書をザッピング)
・ごくまれに「大判写真集をこってり読む」タイプ
とまあこんな感じ。そして一番目の「雑誌タイプ」が最多で、彼ら彼女らは結局、どこの本屋にも売っているような本を読んでいる。CREAで美的で、BRUTUSな感じなわけです。あのエリアに、普通の本屋がそもそもないので、あのおしゃれ本屋をたまたま「最寄りの本屋」としてふつうに使っている人ももちろんいるとは思う。それを差し引いたとしても、結局人は、そんな突飛な情報をいつでも欲しているわけではないってことだなと。ある意味、日本で一番、ふつうの雑誌を、それっぽいスタイルに盛って読める場所なのかもしれないなんて、いじわるな見方で思ったりしました。
もうついでにいうと、滞在時間と本の購買率は反比例する気がした。買う人は、さっとやってきて、席に座らずに、面白そうな本をぱっととり、セルフレジに向かう。不思議なもので、長くいる人って、要するに用事がほかにない、時間が豊かな人なわけで、お金で解決する必要が少ない人ともいえるんだよなあ。小説まるごと読もうとしている人もいたわけで、やっぱり、あそこは人に「有意義な時間を過ごす」感覚をもたらす場所なんだなと思ったわけです。
そういえば昔、こんなことを書いたなあと思いだした笑
まるで悪口みたいに読める文章かもしれませんが、僕はあそこは結局、便利なので好きです。ただ、使い道をうまくすれば、ものすごいポテンシャルがある空間だなと思うのだけど(Anjinの雑誌のバックナンバーとか、ものすごい資料価値だと思う)、それは多くの「ふつうの人たちが、スタバに落としているお金」で成り立っているのかもしれないなあなんて思った、そんな観察でした。
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