渾身のサザエさんあるあるが伝わらなかった

今年の3月末あたりから、人と集まることはもちろん、自宅からも極力出ない方が良いみたいな状況になった。日本のどこに住んでいても。

僕が趣味でやっている大喜利は、様々な形式があるものの、人前でホワイトボードに答えを書いて出す”生”大喜利の形が一番多い。反応がダイレクトに返ってくるのは楽しいし、一番性に合っているなと思う。ネット大喜利やラジオの投稿も魅力的だけど。

大喜利は、答える人やそれを見る人がいて初めて成立する。区の会議室やイベント会場などに集まれないので、大喜利が出来ない。でも大喜利はしたい。そんな状態で生み出されたのが、スプレッドシートを使った大喜利である。

一つのExcelを同時に編集できるスプレッドシートを大喜利専用に改造し、Discordというソフトで通話をしながら、お題を出し、それに答える。新しい大喜利の形として界隈に広まった。

スプレッドシート大喜利はオンライン上で行うため、頻繁に大喜利が行われる関東や関西に住んでいなくても参加が可能である。これは非常に大きい利点だ。週に何度か開催されるスプレッドシートを使用した大喜利会に、時間が有り余っているのを良いことに参加しまくっている。

今回は、そのスプレッドシート大喜利に初めて参加した時の話をしようと思う。

僕が初めてスプレッドシートを使ったのはおそらく4月。誰かがシートのテストをしたいと協力者を募集していたので、参加することにした。数十分の短い会だったと記憶している。

使い方の説明が終わり、最初のお題が出される。「アニメ・サザエさんにクレームを入れる人『○○○』」みたいなニュアンスの穴埋めお題だったと思う。

大喜利は、お題に書かれている単語の知識があった方が有利になる場合が多い。「この病院、通いたくない。一体どんなの?」というお題なら病院が一般的にどういう場所なのかという知識がいるし、「この病院、テーマパークみたいだな。一体どんなの?」というお題なら、病院とテーマパークの両方の知識がいる。

今回のお題は、間違いなくサザエさんの知識がいる。設定や作品の特徴、あるあるなど、様々な角度から攻めることが出来る。最初に出したのはこんな回答。

「♪みんなが笑ってる~」「俺は笑ってないぞ!」

ご存じサザエさんのオープニングテーマを使った回答である。そこそこの反応を得た。次に出したのは、作品全体の構造をいじったこんな回答。

3本立てってなんだ!長い1本にしろ!

これもまずまずの反応。「確かにそう」といったガヤが飛ぶ。

この時お題に挑んでいるのは僕一人では無いので、他の参加者もサザエさんの要素を使って答えていくと、いじる場所が段々無くなっていく。残り一答くらいの時間になった際、僕は最後に「この要素はまだ誰も出してないよな」と思いながら、こんな回答を出した。

何回節分の日に鬼の面付けた空き巣に入られたら気が済むんだ!

ウケた。ウケたものの、周りは「そんな話ある!?」といった、サザエさんのそんな回を全く見たことがないといった反応だった。

その瞬間心の中で「えっ、磯野家が節分の日に鬼の面付けた空き巣に入られるのってサザエさんあるあるじゃないの!?さっきの鬼はマスオさんでも波平さんでもないとしたら誰?みたいな展開ってこれまで何回もやってなかったっけ!?嘘でしょ!?」って思った。

実際それで金品を盗まれたり、襲われたりといった被害が出ないだけで、鬼の面を付けた空き巣に入られるシーンは、カツオの夏休みの宿題と肩を並べるほど毎年の恒例行事にはなっていないが、確実にあったはずだ。

ちょっとした会だったので、僕のその回答を覚えている者はもういないだろうが、笑いを取りながら疎外感のようなモヤモヤを感じた瞬間である。

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