藤子・F・不二雄展で感じた違和感

大学4年の夏、地元の美術館で「藤子・F・不二雄展」なるものが開催された。幼い頃からF先生の作品が大好きだった(特にドラえもん)ので、「これは行かなければ!」と思い、チケットを取った。

ブースの中に入ると、F先生の貴重な原画や、漫画のワンシーンを再現したセットなど、見所しかなかった。

とても楽しいひと時を過ごせたのだが、どうにも奇妙すぎて忘れられない光景が一つだけあった。

私が行った「藤子・F・不二雄」は、入ってすぐプロジェクションマッピングを見る順路となっていた。壁などに映像が映し出されるあれだ。

プロジェクションマッピングのコーナーに入ると、そこには白い壁に白い机があるのみ。しかし、いざ映像が始まると、机には色が付き、壁は一面本棚になった。

驚いていると、机の引き出しからドラえもんとのび太が出てきた。二人は吹き出しでこのような会話を交わした。

「ここはどこだろう?」
「きっとF先生の仕事場だ!」

なるほど、確かに机の上には画材道具や原稿が乗っている。すると、原稿からたくさんのキャラクターが飛び出してきた。オバケのQ太郎、パーマン、エスパー魔美・・・自分の知らないキャラもいた。しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンもどこでもドアでやってきて、F先生の生み出したキャラクターが勢ぞろいした。

ここで部屋の壁が倒れ、外の空間になった。外は夜で、大きな満月が輝いていた。ドラえもんたちは、月に向かって競争を始めた。宇宙に向かって飛び始めたのだ。

仕掛けや展開に驚きつつも、私は強烈な違和感を感じた。ドラえもんたちはタケコプターで飛んでいる、オバQはお化けだからそのまま飛べる、パーマンはマント、エスパー魔美は超能力・・・全員何かしらの飛ぶ方法がある。

ただ、唯一飛ぶ手段が無かったのだろうか。キテレツとコロ助だけ、ジャンプで月まで飛んでいた。

キテレツ大百科に、空を飛ぶ発明品は出てこないことを、私は知ったのだった。


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