放課後まほらbo令和三年元旦 「まほらbo」の意義
放課後まほらboでは、子どもたちの「主体的、対話的で、深い学び」を実現するために、放課後の有意義な過ごし方や、「あそびは、最高の学び!」の構造化をすすめ、学習の素地を整えるための「遊びを科学する」ことで、子どものより良い成長を探究します。
■なぜ「放課後まほらbo」なのか
学習指導要領の中心テーマとして「主体的、対話的で、深い学び」が挙げられています。学校の教育テーマを放課後でも共有することの意味はなんでしょうか。遊びに「ねらい」や「目標」があると、それは遊びではないのではと、よく意見をいただきます。遊びの定義からするとそうかもしれません。放課後まほらboが、週に2回を前提にしているというのは、その意味で「遊びの練習日」なのです。どうして遊びに練習が必要なのでしょう。
少子化は、子どもたちから群れて遊ぶ機会を徐々に奪ってきました。コロナ禍は、それに拍車をかけ子どもたちから遊びを奪っています。遊びの引き出しの少ない子どもは、ほぼ、ゲームなどのデジタル機器がないと「ひまァ~」「つまらないィ~」と、ぶらぶらしながら時間の過ごし方を見失っています。まさにデジタル機器は、遊びの危機でもあるのです。
子どもには動物としての身体的な成長過程の遊びと、人間に特有の精神の発達や学習を促す遊びがあります。この二つの遊びのバランスは大変重要だと考えられています。学校の教育課程は教科学習が中心となっていますが、そこでも「主体的、対話的で、深い学び」といわれる資質・能力を高めることが求められています。それは学力とは、教科の知識を獲得するだけではなく、それを考えたり、話し合ったり、新たな課題を見つけたりする学ぶ力を合わせて身に付けることが必要だからです。
日本型教育が最近耳目を集めています。日本の学校では教科学習だけではなく、特別活動という行事、生徒会、給食・掃除、クラブ活動(部活動ではない)、などを通して育まれる力です。集団生活や協働による社会性や倫理観、対話から生まれる創造性、などが着目されているのです。日本型教育の特徴とは、子ども時代に育むことが必要な様々な要素が、学校教育にパッケージされ高い質が保障されているということなのですが、実はその質の高さが弱点でもあるのです。働き方改革が叫ばれるなか限られた時間で、何もかも学校が対応するのは難しいでしょう。またコロナ禍で休校措置が取られた時の様に、いったん学校が機能停止に陥るとダメージは大きくなります。最近では、そのために社会総がかりで教育に関与することが奨励されてもいます。
そこで注目されているのが、放課後の有意義な過ごし方や地域の在り方なのです。子どもが、放課後にどのような人たちと、どのような事を通して、どのように過ごすことが、成長や発達にとって有意義になるのかが問われています。
■「学ぶ意欲とスキルを育てる」意味
子どもの成長にとって学校だけではなく、放課後も有効に活用することが重要になってきているのですが、この「有効」については、それぞれの家庭で価値がわかれると思います。塾へ行って教科学力を補完するのも有効活用だし、水泳やサッカー、ピアノやダンスなどの習い事など、一つの分野に挑戦する時間にするのも有効活用でしょう。これは個人の選択の問題ですが、学校で学ぶ「教科」とは、そもそも、この分野の学習なのですから、放課後の時間を学校と同じ使い方にすることになります。つまり、子どもが成長する時間全体でみれば、塾や習い事に時間を使うことは「教科」に偏ることになると言えるかもしれません。
昔からピアノや絵画、習字や算盤、野球や水泳などはありましたが現代のように教育産業が大きくなく、子どもが沢山いた時代の放課後の風景は、子どもたちの遊びと生活の世界が、夫々の地域にありました。アニメ「ドラえもん」に出てくる空き地は、子どもたちが中心になる生活の世界でしたが、そこでは日々ドラマが繰り広げられ、多様な体験を通した学びの機会と巡り合うことが出来た場なのでした。集まった人数で遊びのルールを工夫する、喧嘩をしたら仲直りをする、勉強も遊びも教え合い助け合う、秘密基地では好きな子の話しや互いの夢を語り合う、とこんな風に仲間だけが知るドラマや秘匿がいっそう互いの関係性を深くし、やる気を出して、何気ない会話からアイデアが生まれて他愛もないことに挑戦し、時には独創的な目標を掲げ、努力を続けることでスキルも高め合っていたのです。
子どもにとって教科学習の時間に縛られない放課後ゴールデンタイムは、成長の爆発を引き起こす最大のチャンスに違いないのです。それではなぜ、そんな貴重な時間を学校の延長の塾や習い事に使ってしまうのでしょうか。もし放課後の時間が、学校で体験できないような成長を促すことを知っていたら、また放課後の過ごし方で学校の学びの効果が今以上に高まることを実感できていたら、それでも学校の延長のように放課後の時間を使うでしょうか。子どもは楽しく成長している実感をもつと、より意欲的になります。その意欲は色々なものごとへの関心やスキルを高めることにつながります。放課後は「学ぶ意欲とスキルを育てる」ために素地を整える貴重な時間帯になります。それは自立し自由になるための将来の選択肢を広げる素地にもなります。
■エビデンスを重視する
子どもが自由に放課後を過ごしながら、必要な力をつけてくれるのなら、こんなにいいことはないと思うのが親心でしょう。塾をすすめるのは子どもの将来を思ってのことで、苦痛を与えるためではないのです。塾で先取り学習をしたことが成績を向上させ、本人の学校での自信になり、楽しく勉強に向きあい、希望の進路にすすめるのを願うのです。多くの塾は、その指導法の効果のエビデンスとして、進学実績を提示します。
しかし、一方では日本の子どもたちの学習意欲の低さを示す調査結果が問題視されています。進学実績は入試の得点を獲得できたという結果ではありますが、それは学びの一つの側面です。入試の得点も取れて、主体的、対話的で、深い理解ができる自立した学習者になれたかどうかという、効果のある指導方法のエビデンスとはいえないのです。意味を理解することを大切にする学習は、真の学力になるので点数も獲得できるでしょう。意味の理解よりも手続きを優先して答えを導き出し、知識量を増やすという学習では、試験の点数は一時的に獲得できるかも知れませんが、求められる学力は測れていないかも知れないのです。テスト結果の点数だけを基準にした進学実績がエビデンスでは、充分とはいえなくなっているのです。現在、そのために入試改革が大きな課題となっています。
しかし、こういった状況をわかっていて、もし他の方法で子どもに力がつくと知っていたらどうでしょう。英国では教育効果が高いと考えられる実証研究の取り組みが公開されています。例えば、能力別クラス編成の効果は低い、それに比べて振り返り活動やフォニックス、社会性情動学習、野外活動学習は効果が高い、など以前にも紹介しました。
放課後まほらboでは、2021年も生活の中での知的冒険遊びを楽しめるプログラムを準備しています。そこでは、学習の基礎と探究を基本にした学び方が身に付くことを大切にしています。そして重要なのは、エビデンスを重視しているということです。研究者や専門家の知見を取り入れながら、子どもの成長を促す最良の指導方法を常に取り入れる努力をしていきます。
2021年もアフタースクール放課後まほらboを、どうぞよろしくお願いいたします。
では。
(みやけ もとゆき/もっちゃん)