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のりたま昔話 マホ太郎~第1話~

~1~

むかし、むかし、あるネット将棋サークルに、のりたまとばくろふぇんがありました。まいにち、ばくろふぇんは24へ雑魚刈りに、のりたまは街へ会員集めに行きました。

ある日、のりたまが街の外れでせっせとビラを配っていると、どこからか、

「まーほまーほぴっぴー まーほぴっぴー」

と奇妙な歌が聞こえてきました。

「これはなんと見事な歌声、きっと素晴らしい会員になるに違いない」

のりたまはそう言いながら、声のする方へ向かうと、そこには見目麗しい一人の女子中学生が。そこでのりたまは、

「未経験歓迎、体験入会3万円、月収100万円以上日払い可」

といいながら手をたたきました。すると女子中学生は、

「これはいいことを聞きましたです!」

といいながら、のりたまの後ろをついて歩くようになりました。


「遅かったね、のりたまさん」

Rを背負って帰ってきたばくろふぇんがのりたまを出迎えると、

「今日は素晴らしい会員を手に入れたんだよ」

とのりたまは嬉しそうにいいました。のりたまの後ろにいる、美少女に気づいたばくろふぇんは驚きます。

「ファッ!?たまげたなあ…。臓器を売るには勿体ないね、闇商人に売ってVtuberにしてもらえば、もっと金になりそうだ」

「すぐに売ることこそ早計だよ。この子は歌がうまくてね、将棋が指せなくても、サークルの客寄せパンダとして働いてくれるだろう」

「ほう、歌はいいね。どれ、そこの子、一つこのばくろふぇんにも聞かせてくれないかい?」

そういってばくろふぇんが、美少女をためつ、すがめつ、眺めていると、

「まーほまーほぴっぴー まーほぴっぴー」

と素晴らしい歌声とともに、少女は踊りだしました。

「なんと、この子は、踊りも出来るのか!」

「ますますいい拾い物をしたようだ。この子の名前は、そうだ、まほまほと歌っているからマホと名付けよう。おいマホ、お前は今日からマホだ」

のりたまが少女にそう名づけると、マホは歌うのをやめ、

「マホ、マホになりました!」

とおもしろそうに笑いました。

~2~

そのころ街では、いつも聞こえていたはずのマホの歌声がぴたりと聞こえなくなったことに、町民が不安をつのらせていました。

「悪いものでも食べて、山で倒れてるのかもしれん」

「いや、きっとあの悪徳サークルの仕業に違いない」

「あの人攫いどもめ、まさかマホ太郎に目をつけるとは…」

しかし、低級にも満たない将棋力の町民たちでは、マホ太郎を救うどころか、マホの居場所を探ることさえ、たいへん危険なことです。

町民たちが困りはてていると、街でトマホーク売りをしている、タップダイスという男が現れてこういいました。

「マホ太郎の歌がなくなれば田畑は荒れ、悪鬼共が山を降りてくる。いずれにせよ、助け出さないという手はない。ここは一つ、りんご畑の夜空を頼ってみるのはどうだろう」

りんご畑の夜空というのは、街から北へ数里ほどの位置にある村に住む農民で、将棋の腕はたつのですが、なにぶん言葉が通じないため、町民たちからは邪険にあつかわれている可哀想な男でした。

「なるほど、たしかにあの男の棋力ならマホ太郎を救えるかもしれん。だが、言葉が通じない相手に物を頼むのは容易ではないぞ?」

タップダイスはしばし思案し、

「街一番の糞ガキであるキッドなら夜空の言葉を理解できる。私も共に行こう。私の三間飛車を見せれば、夜空もそうは警戒しないはずだ」

これを聞いた町民たちは、その手があったか、と大いに喜びました。


さっそくキッドが住む小屋に向かったタップダイスでしたが、なんとそこはもぬけの殻、キッドの姿はどこにもありません。

「これは困ったが、街のことを考えると猶予はない。私一人で夜空のところへ行き、むりにでも連れ出すしかないだろう…」

あてが外れたタップダイスですが、マホ太郎の歌の効力を考えると、あまり時間があるとはいえません。いざとなれば自分ひとりでマホ太郎を助け出すことも考えていましたが、棋力はともかく、相手の数を考えるとどうしても夜空が必要だったのです。

「やれやれ、面倒なことになった…」

そういうと、タップダイスは北の果て、キルデビルヒロサキへと向かうのでした。


つづく


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