山岳フリマ
プロ雀士の瀬川は、かつて「天才」と称えられた男だ。だが今は連敗続きで雀荘を渡り歩く日々。
もう一度、日の目を見たい。その一心で、山奥に人生を変える山小屋があるという噂を頼りに山を登った。
濃霧に包まれ、足元の崖に息を呑む。進むべき道が途切れたかに見えたが、次の一歩で古びた小屋が霧の中から浮かび上がった。
看板には「山岳フリマ」と書かれている。
扉を開けると、石がずらりと並び、「絶対の勝利」「永遠の後悔」といった言葉が刻まれている。
奥で商人が笑う。
「運がほしい」と瀬川は言った。
商人は一つの石を差し出す。「これを持てば全盛期に戻れる。ただし運量と時間を交換する契約だ。」
迷わず石を掴んだ。
下山後、人生は一変し勝利の連続。
しかし、目覚めるたび深まるしわ、膝の痛み、そして溶けるように過ぎる時間に瀬川は気づいた。
ある日、対局中に偶然が重なり、場の流れが完璧に整った。
瀬川は息を呑みハッと気が付く。
「運は引き寄せるだけじゃない。繋げられる。運量を使い契約を出し抜ける」
瀬川は確信した。運を使い、最適な選択を重ねれば、削られる時間を少しずつ押し返せるかもしれない。
どこからか商人の声が囁くように響いた。
「代償を出し抜けると思うなよ。」闇に溶けるその声は、まるで微笑んでいるようだった。
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お題×麻雀。。。早くも限界を感じています(笑
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